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日銀は12日、6月分の企業物価指数を発表した。国内企業物価指数は前月比+0.7%、前年同月比では、+9.2%上昇した。前年の同月の水準を上回ったのは16カ月連続。2020年平均を100とした指数では、6月は113.8という高い水準で、1960年1月の統計開始以来最高となった。

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要因はエネルギー価格の高騰

企業物価指数の上昇の主な原因は、ロシアのウクライナ侵略に伴うエネルギー価格や、それによる原材料費の高騰にある。ガソリン、軽油などの石油・石炭製品は前月比+0.29%の上昇。化学肥料やベンゼンといった化学製品は同+0.18%、都市ガス、事業用電力などの電力・都市ガス・水道は+0.10%の上昇だった。2020年と比べて、特に上昇率が高かったのは木材・木製品で、2020年を100として177.0。石油・石油製品は156.5、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケルといった非鉄金属は152.4だった。

企業物価指数とは、企業間での取引価格の変動を示す指標。商品の価格(消費者物価)の平均的な動きを測定した消費者物価指数と同様に、日銀が毎月集計し発表するもので、日本の経済状況を測る重要な指数だ。企業物価指数と消費者物価指数は、ともにインフレ率の判断に用いられる。

企業物価指数vs.消費者物価指数

とはいえ、企業物価指数と消費者物価指数は、必ずしも一致しない。少し古いデータになるが、2007年12月の企業物価指数は2005年を100として105.4だった。前年同月比で+2.6%上昇した。この時も原油高や原材料の高騰を反映したもので、企業物価指数の上昇は46カ月に渡って続いていた。

企業物価指数の上昇に伴って、消費者物価指数も上昇したかと言えば、この時は違った。企業物価指数と同じく、2005年を100とした消費者物価指数は100.9だった。前年同月比での上昇は+0.8にとどまっている。

企業物価指数が前年同月比で+2.6%上昇しているのに、消費者物価指数は+0.8%の上昇だった。両者の間にある1.8%はどこに行ったか。それは、懸命な企業努力によって1.8%分を吸収したのだ。というより、価格に敏感な消費者に対して、製造コストが上がったからと言って、安易に値上げをしてしまうと、競争相手に負けてしまうとの懸念があったのだろう。なかなか企業は製造コストを価格に転嫁できない状況が長く続いてきた。デフレの一つの原因でもある。

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企業努力も限界、相次ぐ値上げ

しかし、このところ、懸命な企業努力も限界に達しつつあるようだ。帝国データバンクの調査によると、主な食品メーカー105社が今年に入ってから、6000品目の食品の値上げをしたことが分かった。分野別で最も値上げが多かったのは、ハムやカマボコ、即席麺や冷凍食品といった「加工食品」で、値上げ率の平均は12%に上る。

そのほかにも7月からはパンや食用油、小麦粉、ティッシュペーパーなどが値上がりした。8月からは麺類や冷凍食品、かまぼこなどの練り製品の値上げが予定されている。9月からは菓子、輸入ワイン、コーヒー、缶詰、住宅設備などの値上がりが発表されている。10月からは飲料やビール類、調味料、照明家電などが値上がりするという。

消費者が購入するモノの値段が下がるには、ひとまず企業物価指数が落ち着くしかない。しかし、企業物価指数がこのまま高止まりするようだと、商品への価格転嫁が続き、さらなる物価高は避けられそうにない。松野官房長官は5月の定例記者会見で、物価高への対応策を問われ「先月に総合緊急対策を策定し、関連する予備費の使用を閣議決定した。速やかに対策を実行したい」と述べていたが、既に「速やかな実行」はなされたのだろうか。