世の中には、とびきり個性的で高価なモデルから、没個性ながらコストパフォーマンスの高さで評価されるものまで、数え切れないほど多くの車種が存在する。そんななか、しっかり個性があり、なおかつ価格面でも満足できる内容があっても、そこまで有名ではないクルマも意外に多い。この記事では、そうした穴場的モデルにスポットを当てて紹介していこう。
文/長谷川 敦、写真/ダイハツ、トヨタ、ホンダ、スズキ、Newspress USA
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超穴場なお買い得モデル 「ダイハツ アルティス」
2000年、ダイハツから同社のフラグシップモデルとなる4ドアセダンが発売された。「Altitude(高い地位)」という英語から作られた「アルティス」の名を持つそのセダンは、当時ダイハツと提携関係にあったトヨタのカムリがOEM供給されたもので、ベースとなった6代目カムリが代変わりする2001年まで販売。事情が事情だけに仕方ない点はあるが、短命に終わったモデルだ。
2001年には2代目アルティスが登場。今回もカムリのバッジモデルであり、以後アルティスは、現在に至るまでカムリのダイハツ版である点に変わりはない。
現在ダイハツはトヨタの完全子会社となっていて、両社の協力関係はそれ以前よりさらに強化されている。そのためお互いのOEM供給も盛んで、トヨタのパッソ、ルーミー、ピクシスシリーズなどがダイハツ製だ。
そして現行型のアルティスは2017年にデビュー。もちろんカムリのモデルチェンジに合わせた登場であり、現行5代目アルティスは10代目カムリとほとんど同じクルマと言って差し支えない。
だが、アルティスの知名度がカムリに比べてだいぶ低いのも事実だ。実際、この記事でアルティスの存在を知った、あるいは再認識したという人も多いはず。他のダイハツ車ラインナップからやや浮いている感さえあるアルティスだが、実はカムリに比べてお買い得な面がある。
現行アルティスのラインナップはFFとE-Fourの2種で、カムリではGグレードにあたる。ベーシックなFFで比べると、アルティスの価格が405万3000円に対してカムリは379万4000円(いずれも消費税込み)と、カムリのほうが安い。
しかし、アルティスにはカムリでオプション設定になる電動チルト&テレスコピックステアリングやシートヒーターなどが標準装備されていて、これをすべてカムリに装備するとアルティスが数万円お得になるのだ。だが、カムリでは設定可能なコネクテッドシステムなどがアルティスでは装着できず、この点では少し不利と言える。
アルティスの魅力はその希少性にもある。なにしろカムリに対するアルティスの売り上げはわずか0.5%と少ない。これだけを見るとマイナスポイントにも思えるが、今や貴重なセダンでさらにカムリのOEMという希少車なのを個性と考えることもできる。品質はカムリそのものなので折り紙付きで、価格面でも割高感はない。こんなモデルこそが穴場カーと言えるだろう。
ハイブリッドセダンの狙い目か? 「ホンダ アコード」
次に紹介するのは、アルティスのベースモデルであるカムリのライバルとでも言うべき存在。それがホンダ製ロングセラーセダンの「アコード」だ。初代の発売は1976年で、以降はホンダのフラグシップ的存在として君臨し続けている。
そんなアコードも現行モデルで10代目。現在はホンダのタイ工場で製造されたものを日本国内で販売している。この10代目アコードは直噴ターボエンジンモデルもラインナップするが、日本市場ではハイブリッド車のみを展開。2モーターハイブリッドシステムの「e:HEV」が搭載される。
現行アコードの魅力はこのe:HEVにある。シリーズ最高出力こそ公表されていないものの、2リッターガソリンエンジンを主に発電に使用し、ふたつの電動モーターで1560kgの車体を軽々と加速させる動力性能は秀逸。さらにSPORT/NOMAL/COMFORTのモード切り替えも行える。
エクステリアも高級感があり、十分な容量が確保されたラゲッジスペースもセダンモデルならでは。国内での販売価格が税込み465万円というのは少々高めな気もするが、それに見合う内容はあると言える。
今やSUVにその座を奪われた印象もある4ドアセダンだが、乗用車としての魅力はまだまだ健在。そのうえ現行型のアコードなら、好フィーリングかつパワフルな動力系とファインチューニングされた車体、さらにHonda SENSINGなどの安全装備が充実しているなど、購入を検討する価値は十分にある。
ワゴンRの血脈が生きる! 「スズキ ソリオ」
1993年に発売されたスズキの軽トールワゴンが「ワゴンR」。ありそうでなかった軽自動車サイズトールワゴンのワゴンRは、軽自動車に革命を起こしたと言われるほどのインパクトをもたらし、大ヒットモデルに成長した。
そのワゴンRを拡大して1リッターエンジンを搭載したのがワゴンRワイドだが、そこからワゴンRプラス、ワゴンRソリオと車名が変更され、2010年からは「ソリオ」が独立した名称になった。
とはいえソリオがワゴンRの系譜にあるモデルなのは間違いなく、コンパクトで使い勝手の良いトールワゴンというコンセプトは現在まで継承されている。
そんなソリオの現行型は2020年にデビューしている。時代のニーズに合わせて先代よりもボディサイズは拡大されているが、それでも5ナンバーサイズの限界よりは余裕があり、コンパクトな車体を生かした取り回しの良さが特徴になっている。
ワゴンRが登場した時代とは違って、現在のソリオにはライバルも多い。代表格がダイハツのトールとその兄弟車であるトヨタ ルーミーだが、現行型ソリオの販売成績は好調だという。
現在のソリオは拡大されたホイールベースや車幅のおかげで室内空間に余裕ができ、荷物の積載量も増えている。動力系はマイルドハイブリッドとガソリンエンジンの2タイプが用意され、上級グレードのHYBRID MZでも4WD仕様で214万8300円とそこまで高額ではない。ガソリンエンジンの2WDなら約158万円と、お買い得だ。
トール/ルーミーに比べるとやや地味な印象はあるが、ソリオは実に良くできたトールワゴンであり、こちらもまた穴場カーの一台と言える。
わずか4年の命に終わった穴場カー 「スズキ バレーノ」
続いては、スズキが2016~2020年に国内販売を行っていたコンパクトハッチバックの「バレーノ」だ。2015年のジュネーブモーターショーで発表されたコンセプトモデルの「iK-2」の市販バージョンであるバレーノは、全世界で販売するすべての車両をインド工場で製造するという意欲的なモデル。
基本となるプラットフォームは同じスズキのスイフトと共通ながら、全長、全幅ともにスイフトよりひと回り大きくして、反対に全高を下げることによって、一般的な日本のコンパクトカーとは一線を画すローダウンフォルムを実現している。
ただし、コンパクトカーなのに日本国内では3ナンバーとなってしまう車幅がネックになったのもまた事実で、海外での好評ぶり(インドでは1万台/月を超える売れ行きだとか)に対して日本での販売実績は低迷してしまった。
キャビンやラゲッジスペースには余裕があり、パワーもこのクラスでは十分。1リッターターボエンジンは、最高出力111ps、最大トルク16.3kgmを発揮。加速感はテンロク並みだ。
1.2リッターガソリンNA車で141万8000円、1リッターターボの新車価格は161万7840円と、コスト面ではかなりリーズナブルなモデルではあったが、残念ながら2020年で国内市場からの撤退が決定した。
バレーノとはイタリア語で「閃光」を意味する言葉。皮肉なことに、バレーノは国内市場を文字どおり閃光のように駆け抜けていってしまった……。
製造拠点のインドをはじめ、海外での販売は好調のため引き続き製造と販売が行われるものの、日本国内でバレーノを購入するには、中古、あるいはディーラー在庫を探すしかない。つまりバレーノは“穴場だった”モデルなのだ。
ちなみにバレーノの中古車をチェックすると、最近まで現役だったクルマだけあって流通数は意外に多く、100万円以下でもかなり状態の良い個体が入手できそうだ。
これぞ究極の穴場カー 「トヨタ MIRAI」
最後は将来的に穴場カーと呼ばれる存在になりそうなクルマを紹介したい。それがトヨタの水素燃料電池自動車(FCV)の「MIRAI(ミライ)」だ。
MIRAIに関しては今さら紹介するまでもないが、あえて説明しておくと、トヨタが2014年に販売をスタートした世界初の量産型燃料電池自動車で、車体のタンクに搭載した水素と大気中の酸素を反応させて発電を行い、電動モーターを駆動するエコカーだ。
2020年にはフルモデルチェンジされた現行型が登場し、さらなる効率アップを実現。FCVのイメージリーダーとしての役割も果たしている。
現行の2代目は、航続距離が向上し、カタログ値では約750km~約850kmと、東京から大阪までなら充填なしで走行できるほどに進化。以前よりもインフラ不足への不安も軽減されている。
とはいえ、この“水素自動車”の普及にはインフラの充実が必須であり、まだまだ日常の足としてFCVを使うハードルは高い。だが、未来を担う技術のひとつにFCVがあるのもまた事実で、さらなる開発をサポートする先行投資としてのMIRAIは、本当の意味で穴場カーと呼べるはずだ。
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