タイヤのグリップが限界を迎えると滑り始めてしまうわけだが、この時にタイヤ表面から白い煙が噴き出すことになる。ドリフト競技では、マシンの大パワーによってこの状態を人為的に作り出し、白煙とともにマシンを横滑りさせているわけだ。
このタイヤスモークだが、タイヤは黒く、路面も一般的にグレーなのに、なぜ白い煙が上がるのだろうか? 今回はこの白煙の秘密に迫ります。
文/藤田竜太、写真/TOYOTA、Adobe Stock(トップ画像=toa555@Adobe Stock)
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■燃えると黒煙 滑ると白煙 な〜んだ?
ドラッグレースのスタートやドリフト、ブレーキロックや飛行機の着陸シーンで、タイヤから白い煙が出るのを見たことがある人も多いだろう。
見慣れているので、タイヤスモークが白いことに疑問を持たなくなっているかもしれないが、ときどき廃タイヤ置き場などが火事になったニュースを見ると、燃えているタイヤからは黒い煙がモクモクと????
同じタイヤなのにタイヤスモークは白で、燃えているタイヤから出る煙が黒なのはなぜなのか?
火災のときはまさにタイヤそのものが燃えているわけだが、タイヤには不燃成分も混じっているので、煙の中にそうした固形物も混ざることで不完全な燃焼状態が続き、黒い煙が発生する。
一方、ホイールスピンやドリフト、ブレーキロックなどのシチュエーションでは、タイヤがスリップしているだけで、タイヤ自体が燃焼しているわけではない。
タイヤが燃えているわけではないのに煙が出るのは、タイヤの表面のゴム成分や油分が摩擦によって気化しているため。
その気化した成分・油分が酸素と結びついて燃焼し、炭素化合物になるわけだが、これには固形物は含まれていないので、タイヤスモークは白くなる。
簡単にいえば、ものが燃えたときに不完全燃焼や、煙に固形物が混じると、その煙は黒くなり、きれいに燃焼し、気体だけの状態なら基本的に煙は白になるというわけだ。
■タイヤスモークはタイヤトラブルのもと!?
いずれにせよ、タイヤがスリップし、タイヤスモークがでている状態は、タイヤに過負荷がかかっているので、タイヤを傷めることにつながるので要注意。
具体的にいうと、タイヤスモークが出るシチュエーションは、次のようなトラブルにつながりやすい。
●フラットスポット
ブレーキをロックさせてしまうと、タイヤの一部だけが路面と接したまま滑走し、その部分が平らに削れてしまうことがある。それがいわゆるフラットスポット。
フラットスポットができるとその部分だけタイヤの表面が丸ではなくなってしまうので、振動が出るし、ブレーキをかけた際、再びその部分でブレーキがロックしやすくなる……。
ABS付のクルマなら、どんなにブレーキを強く踏みつけても、フラットスポットができることはないので、一度でもブレーキでフラットスポットを作ってしまったことがある人ならばABSのありがたみが骨身に沁みてわかるはずだ。
●ブロック飛び
タイヤの表面にはトレッドパターンを作り出す、溝の部分と凸部分が組み合わせっている。この溝で囲まれた凸の部分、いわゆるブロックの一部がなくなったり欠けたりすることを「ブロック飛び」「ブロック欠け」という。
ドリフトやホイールスピンを繰り返すと、この「ブロック飛び」が起きやすい。
●トレッド剥離
トレッドの剥離もホイールスピンやタイヤの過負荷、空気圧不足などで発生するトラブルとして知られている。トレッド剥離が起きたタイヤは、危険なので即交換。
ブロック飛びやフラットスポットだと、小さなものならそのまま使用し続けることもできるが、基本的にはタイヤ交換が必要になるので、タイヤの寿命を考えればできるだけタイヤスモークは出さない方が望ましい。
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ちなみに通常のタイヤでは、白いタイヤスモークしか出ないが、例外的に赤、青、黄色などのタイヤスモークが出る「カラースモークタイヤ」(クムホが世界ではじめて製品化)などもある。
カラースモークタイヤは、トレッド表面に赤、青、黄がそれぞれ着色されていて、その粉末(固形物)によって着色されたスモークを実現し、イベントなどを盛り上げるのに使われている。
また、クムホではトレッドゴムにアロマオイルを配合しタイヤからラベンダーの香りが漂う「アロマタイヤ」も製品化。特殊配合技術により摩耗しても香りが続くユニークな芳香タイヤとして話題となった。
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