多くのドライバーがお世話になる教習所だが、そこで習う内容はあくまで公道を走るために必要最低限の技術や知識だ。しかし、実際にクルマを運転するようになれば教習所では教えてもらわなかったような、さまざまなトラブルに遭遇するものだ。しかし、ちょっとした対処法さえ知っていれば、パニックにならずにその場をしのぐことができるトラブルは多い。
今回は、パニックになりやすいものの、実は対処法は簡単というトラブルを紹介する。ベテランドライバーでも意外と知らないような対処法もあるはずだ。知っておけば、いざという時に冷静に対応できるはずだ。
文/入江 凱、写真/写真AC
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スマートキーが電池切れ! ドアも開かないし、エンジンもかからない!
クルマのドアの開錠もエンジン始動もいまやスマートキーで行うことがほとんど。もし、出先で電池が切れてしまったら、パニックになってしまう人もいるだろう。そんな時は慌てずにスマートキーをチェックしよう。
スマートキーには物理キーが内蔵されている。このキーを運転席のドアの鍵穴に挿し込めばドアを開錠することができる。その時、盗難防止のためのブザー音が鳴り響く場合があるが、エンジンを始動すれば鳴りやむので焦る必要はない。
エンジンを始動する場合には、ひと昔前に主流だったノブを捻ってエンジンをかけるツイストノブタイプの場合、ノブに物理キーを差し込めるようになっていることが多い。物理キーを差し込んでノブを捻ればスマートキーが電池切れでもエンジンを始動させられる。
プッシュスタート式の場合、ブレーキを踏みながらスタートボタンにスマートキーで触れるとキーが認識され、再度スタートボタンを押すとエンジンが始動できる。ただしこの対処ができるのはスマートキーの電池の残量が完全にゼロになる前の話。ゼロになってしまうとキーを認識できなくなってしまう。
あなたのクルマがパンクした時に使うのはスペアタイヤ? パンク修理キット?
スペアタイヤに交換したことはあってもパンク修理キットを使用したことがない人は多いはずだ。最近のクルマは昔と違いスペアタイヤが搭載されておらず、代わりにパンク修理キットが装備されていることが多い。車種によって積載されている場所やパンク修理キットの使用手順は違うことがあるので、トラブルが起きる前に説明書を見て確認しておくことをお薦めする。
■スペアタイヤ搭載の場合
1.クルマを作業するのに安全な場所(平坦で硬い地面の場所)まで移動し、Pレンジ、パーキングブレーキなどを使用しエンジンを切って停車する(やむをえず傾斜地で作業を行う場合は交換するタイヤの対角線上のタイヤの下り側に輪止めを使用する)
2.車載工具、ジャッキ、スペアタイヤを取り出す
3.ジャッキアップする前にパンクしたタイヤのナットを車載工具で緩めておく
4. ジャッキアップポイントと呼ばれるジャッキを掛けてもいい場所にジャッキを噛ませてクルマを浮かせる
5.緩めたナットを外してパンクしたタイヤを取り外したら、ジャッキが外れた際の事故防止のためにクルマの下に置いておく
6.スペアタイヤを取り付けた後、ナットを締めてジャッキをゆっくりと下ろし、地面にクルマを下ろす
7.脱輪防止に工具を使ってしっかりとナットを締め込む
■パンク修理キットの場合
1.パンク修理キットを取り出す
2.ドアを開けたところに貼ってあるステッカーでタイヤの適正空気圧を確認する
3.コンプレッサーに薬剤をセットする
4.タイヤの空気を入れるバルブにコンプレッサーのホースを接続する
5.コンプレッサーの電源をシガーソケットに接続し、エンジンを始動してコンプレッサーを起動する
6.指定の空気圧まで注入したらコンプレッサーをオフにして薬剤が全体に行き渡るように10分、または5㎞ほど走行したらコンプレッサーの空気圧計で空気が抜けてないか確認する
この時点で空気が抜けてしまっている場合、パンク修理キットでは対応できないレベルのパンクということなので、走行はしないようにしよう。
ライト点けっぱなし駐車でバッテリーが上がってしまった!
駐車場でライトを消し忘れてバッテリーあがりを起こした場合、他のクルマが救援に来てくれるようであれば、赤と黒の2本のブースターケーブルを使って電気を借りるジャンプスタート(ジャンピングスタート)という方法でエンジンを始動することが可能だ。ただしブースターケーブルは標準でクルマに付いているものではないので自分で用意しておく必要がある。
手順としてはまずバッテリーあがりを起こした自車と救援車の2台ともエンジンが切れている状態なのを確認し、ボンネットを開いてバッテリーの位置を確認する。そして、以下の順番でブースターケーブルをつないでいこう。
1.赤いケーブルであがったバッテリー(自車)のプラスと救援に来たクルマのプラスをつなぐ
2.次に、黒いケーブルで救援に来たクルマのマイナスと自車のマイナス(端子ではなくエンジンやフレームなどの金属部)をつなぐ
ケーブルをつないだら救援車のエンジンを始動し、しばらく回転数を少し高めに保つ。通常通りの手順で自車のエンジンを始動できたら、つないだ時とは逆の順番でケーブルを外していく。バッテリー自体は走ることで充電されるのが、そのままディーラーや自宅まではエンジンは切らないようにしよう。
ちなみに、ハイブリッド車には高電圧の駆動用バッテリーとハイブリッドシステムの起動などに使われる12Vの補器バッテリーがあり、補器バッテリーが上がってしまった際にはガソリン車とケーブルでつなぎ救援を受けることができる。
しかし、トヨタ アクアや日産 ノートe-POWERのように救援車として使用しないようにと説明書に記載されているハイブリッド車もある。救援されるガソリン車のエンジン始動時に大電流が流れハイブリッド車側のシステムに悪影響を与える可能性があるという。そのため、ハイブリッド車のユーザーは、救援車となれるかを事前に説明書を見て確認しておこう。
突然ハンドルがびくともしなくなる! ハンドルロック(ステアリングロック)された時は…
ありがちなのに教習所で教えてくれないトラブルのひとつがハンドルロックだ。エンジンをかける前やエンジンを切ってからハンドルを操作してしまい、ハンドルロックがかかって焦った経験のあるドライバーもいるはずだ。特に、免許を取りたてのドライバーが遭遇すると意外とパニックになるトラブルだ。
ハンドルがロックして動かなくなったら、キーを差し込む古いタイプのクルマの場合はキーを回しながら、プッシュボタン式の場合はスタートボタンを押しながらハンドルを左右に回そう。すると、簡単に解除される。
泥や雪でタイヤがスタック(空転)して進めない!
泥道でタイヤが空回りして身動きがとれなくなってしまうのがスタックだ。この場合、タイヤが空転したことでタイヤだけが穴に落ちたような状態になっていることが多い。そんな時は、タイヤの下に土を入れつつ、その周りの土を掘ってなだらかな斜面を作ってみる。穴がかなり深い、または土が柔らかすぎない限り、これで静かにアクセルを踏めば脱出することができる。
これでも脱出できなかった場合はタイヤの真下から進行方向側に木の枝や石、段ボールや布などを噛ませるとグリップしてスタックから脱出できる可能性が高い。汚れたり、傷んでしまうが、フロアマットはグリップ力もあるのでお薦めだ。噛ませた物は脱出の際に後ろに勢いよく飛び出してくる可能性があるので、後ろを押してくれている人がいたりする時は、タイヤの後ろにいないかを確認してからアクセルを踏み込もう。
脱出する際はアクセルを踏み込み過ぎると再び空転してしまう恐れがあるだけでなく、急にグリップした際にクルマが飛び出して危険なので優しくアクセルを操作しよう。
高速道路で走行不能になってしまった!!
ベテランドライバーでも間違いなくパニックになるのが高速道路で走行不能になった場合だ。一番大事なのは自分の身の安全と後続車による多重事故を防ぐこと。そのためにまずはハザードランプを点灯させ、路肩(追い越し車線で停車するのは危険なので、左側の路側帯や非常駐車帯など)に寄せたり、可能な限り広く見通しの良い場所まで自走して停車する必要がある。
その後はクルマの中に残っていると危険なので、後続車の様子を見ながら、すみやかにガードレールの外などに避難する。他のクルマが走行している車線側のドアを開けて外に出るのは危険なので、可能であれば寄せた路肩側から降車しよう。万が一、後続車が追突した際に破片が飛び散ったりする危険があるため、ガードレールの外側に避難した場合も、停車しているクルマの傍ではなく、停車したクルマの後方側、できるだけ車線から離れた位置にいたほうがいい。
また、教習所では習わないが、クルマから離れる際にハンドルを路肩側に切っておこう。万が一、後続車が追突した際に押し出されたクルマが本線上に戻ってしまうのを防ぐためだ。
その後、発炎筒と三角停止表示板それぞれを車両の後方(できれば50m以上後方)に置く。その際も可能であればガードレールの外側などを移動し、発炎筒を使用したり、三角停止表示板を掲げるなど、自分と故障車の存在をアピールしながら安全なタイミングを見計らって設置しよう。
ただし、発炎筒はクルマからガソリンが漏れていた場合は引火したり、トンネルの中では視界が悪くなってしまう危険があるので使用してはダメ。1kmごとに設置されている非常電話を使うか、近くになければ携帯から道路緊急ダイヤル(#9910)か警察(110)に連絡しよう。
忘れがちだが、高速道路で停車する際には三角停止表示板の表示義務がある。ただし、三角停止表示板は標準装備となっていないので自分で購入する必要がある。また、何かあった場合にはすぐに取り出せるよう、荷室などの取り出しやすい位置に入れておくことも大切なポイント。
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