今年3月頃から際立ってきた円安が止まらない。13日の東京外国為替市場で円相場が急落し、一時は1ドル=135円の値を付けた。1ドル=135円台は2002年2月以来、20年4カ月ぶり。
アメリカは大幅利上げ、日本は金融緩和維持
円安ドル高の主な原因は、日米間の金利差にある。過熱するインフレを抑制するためにアメリカは政策金利の引き上げに舵を切っている。アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は5月、上げ幅が通常の倍となる0.5%利上げに22年ぶりに踏み切った。FRBのパウエル議長は、6月、7月に連続してさらに0.5%ずつ利上げする方針を示しており、「インフレが明確に低下するまで利上げを続ける」と表明している。
一方、日本はと言えば、「円安は日本にプラス」として、日銀の黒田東彦総裁はことあるごとに従来の金融緩和路線を継続していくことを強調している。6日に行われた講演会で黒田総裁は、「揺るぎない姿勢で金融緩和を継続していく」と述べていた。日米間の金融政策はしばらくの間、変わらないとなれば、円安ドル高基調はさらに進んでいくとみられる。1998年8月以来の1ドル=140円台の可能性もあるだろう。
円安のメリット・デメリット
円安ドル高には、日本にとって良いことなのか悪いことなのかの答えは専門家の間でも分かれるところだ。
しかし、デメリットがあることは確かだ。たとえば、輸入品に頼る食料品や日用品の値段が上がる。さらに、エネルギーの輸入価格も高騰するため、電気代やガソリン代も上がる。家計への負担は円安になればなるほど増していく。さらに、輸入企業は原材料輸入コストが高まり、利益を圧迫する。
一方で、メリットがあることも事実だ。その代表例が、円換算した時の輸出企業の利益増加だ。トヨタ自動車、三菱商事、三井物産、日立製作所、日本製鉄といった大企業が今年3月期決算で純利益が過去最高を記録した。
国内投資への大幅減税を
問題があるとすれば、その利益が国内投資に回らないことにある。過去最高益を上げるほど絶好調の大企業が、ドルで儲けた利益を円に換えることなくドルのまま、アメリカなど海外で投資されてしまうのだ。
企業の立場に立ってみると、それは当然のことなのかもしれない。低成長が続く日本市場に投資するより、成長著しい国や企業に投資した方が当然、高いリターンを得やすい。
経済の専門家の中には、円安を抑制するために日銀が利上げに踏み切ると、日本経済に壊滅的なダメージを与える可能性があると指摘する人も少なくない。
国内経済的に、利上げという選択肢が取れないのであれば、たとえば国内投資への大幅減税など、好調な輸出企業の利益を国内に還元してもらえるような施策を取ってみてはどうか。国内に投資するためには、一度、ドルを円に換える必要があるため、円安ドル高の為替相場にも多少は影響するかもしれない。