マクラーレン・レーシングのCEOザク・ブラウンは、ダニエル・リカルドとの現契約を途中で解除するつもりはなく、リカルドは2023年末までチームで走ると認め、チームは今もリカルドの能力を信じ、彼がそれを発揮できるよう全力でサポートしていると主張した。
リカルドは2021年、マクラーレンに加入、この際に2023年末までの契約を結んだ。しかしそれ以来、予想外の不調が続いており、今年の5月、ブラウンが『Sky』に対し、リカルドはチームの期待に応えられていないと公に認めたことで、今季末でチームが契約を解除するのではないかという憶測が持ち上がっている。当時ブラウンは、リカルドの契約を早期に条件付きで終了できる契約上の「仕組み」があるともほのめかしていた。
その後、ブラウンは、自分の率直な発言がうわさを加速させたものの、リカルドとの関係は今も良好であり、彼は2023年に残留すると示唆し、自身の姿勢を明確にした。
『Fox Sports Australia』が7月8日に発表した記事のなかで、「リカルドはチームとの契約を最後まで全うするか」という質問に対して、ブラウンは「そうだ」と肯定的な答えを返したと報じられている。
「彼はファイターだし、我々があの発言をした後、彼のリザルトはランド(・ノリス)にかなり近づき、ランドに勝つこともあった。彼を奮い立たせる何かがあったのかもしれない。我々は彼と仕事をするのが好きだし、彼はこのチームを非常に気に入っている。勝つ力があるマシンを用意すれば、彼は優勝できる。そのことを目にしてきた」そうブラウンは述べている。
「彼は、昨年は良いシーズンだったとは感じていなかったようだが、それでも優勝した。だから力はあるのだ。我々はそれを解放する方法を見つけ出し、より快適に走れるマシンを与えなければならない」
■「リカルドを批判したつもりはない」とCEOブラウン
ブラウンは、リカルドに関する率直な発言への批判に反論している。
「我々のチームに以前いた元F1ドライバー(注:ジェンソン・バトン)が、『皆が知っていることだが、彼がそう言ったなんて信じられない!』と言っていた。『皆が知っていることなら、私が言ったって大したことはないだろう?』と私は思ったね。あのことについては、誰かが私に質問をして、私が正直に答えたということ以上の意図はない」
「それが(マクラーレンの)外部で多くの波紋を引き起こしたことは知っているが、ダニエルと私は非常に良好な関係にある。あれから間もなく、我々はロンドンでディナーをともにした。我々はしょっちゅうWhatsAppでやりとりをしている。(リカルドについてのコメントは)誰かが質問をしたので、正直に答えただけだ。その質問にリカルドは同じ答えを返しているし、あるいは返すことだろう。我々は望む状態にはないという答えをだ」
「反対に、もし私が『いや、すべて順調だよ』と言っていたら、『12位で本当に満足しているのですか?』と言われると思う。もちろん私は12位で満足できない。だからあれは正直な答えだったのだ。批判的になるつもりはなかった」
リカルドは昨年イタリアGPで優勝はしたものの、今もチームメイトのノリスと対等のパフォーマンスを見せることができずに苦戦し、徐々に近づこうと努力を重ねている。マクラーレンは引き続き彼をサポートしているとブラウンは言う。
「彼はもう優勝することはできないと、我々が考えているわけではない。我々が懸命な努力をしていないというわけではないのだ。むしろ全く逆だ。彼が我々のために何度も勝利をもたらすことができることは分かっている。我々は信じられないほど懸命に努力をしている。彼の経歴とランドの調子から考えて、彼がランドのすぐ近く──前であれ後ろであれ──の位置にいけると期待しているか、と聞かれれば、期待しているし、彼自身もそうだろう。いずれは目指す位置に辿り着ける」
リカルドは、ブラウンの率直なコメントを、「遠回しの褒め言葉」と受け取ったと語っている。彼がもっと良いパフォーマンスを出せると知った上での発言だったというのだ。
「僕を一番厳しく批判するのは僕自身だ。だから(他の人々の)そういう言葉はあまり気に留めない」と当時リカルドは語っていた。「多少のプレッシャーはいいものだ。僕はそれを個人攻撃とか否定的なこととして受け取ることはない」
7月13日にマクラーレン・レーシングが2021年インディカーチャンピオンのアレックス・パロウを2023年のマクラーレン・レーシングのドライバーラインアップに加えると発表、パロウがマクラーレンで何らかのレース活動を行いながら、旧型F1マシンでのテストの機会を与えられることを明らかにした。マクラーレンは、「マクラーレン・レーシングのすべてのレーシングシリーズに関する全ドライバーラインアップは後日発表する」と述べている。