アメリカはジョージア州ハンプトンに位置するアトランタ・モーター・スピードウェイで開催された2022年NASCARカップシリーズ第19戦『Quaker State 400』は、2020年チャンピオンのチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が熱狂的な大観衆の後押しを受け、歓喜の地元戦初制覇を達成した。ホワイトフラッグからローカル・ヒーローを追走した週末の“伏兵”コリー・ラジョイ(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)は、バックストレッチからルーズとなり、チェッカー目前でウォールに散る結末となった。
昨年の同イベントはカート・ブッシュ(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が勝利を挙げ、再舗装を経た今季3月のレースではウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が優勝を飾っている1.54マイル・オーバルは、7月9日土曜から地域一帯がレインシャワーに見舞われ、最終的に予選セッションがキャンセルされることに。
これにより獲得ポイント数でポールシッターの座を手にしたのがジョージア州ドーソンビル出身のエリオットで、フロントロウにロス・チャスティン(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)、2列目には僚友の現王者カイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)、そして前戦で初優勝を決めたタイラー・レディック(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)と、シボレー艦隊を引き連れ「ホームトラックでの初勝利を目指す」と宣言した。
「是非ともここで勝ちたい。何年にもわたって僕のヒーローたちがそれを成し遂げたのを見て来たし、彼らにとって多くのことを意味するのも知っている。僕にとってもそれは同じなんだ」と、改めての意欲を示したエリオット。
「僕らにとってここはOKなトラックだ。本当に良い走りをしたいし、周囲のみんなにとっては“ちょっと退屈”な展開にできるはずさ。他のスピードウェイと同じように、ちょっとした“トスアップ”でそれは可能になる。僕を含め、誰もがその可能性を持っているんだ」
そう語ったエリオットはレース序盤からチャスティンを引き連れ、力強いペースでトップランを張り続けると、ステージ1、ステージ2と連続で制する仕上がりの良さを見せる。一方で、こちらも星条旗カラーの1号車で良好なペースを披露したチャスティンは、その速さが仇となり両ステージでふたたびビッグワンの引き金になると、中盤直前には9台が絡むクラッシュの起因となってしまう。
さらにトップ10圏内を走行した終盤には“因縁”のデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)にまたもやヒットし、ふたたび11号車のカムリに損傷を負った男は、レース後に「怒りは頂点に達した」とライバルを激しく非難した。
「許容レベルは人によって異なるだろうが、知ってのとおり僕の怒りはピークに達している」と感情を露わにしたハムリン。「ハイラインにいた僕の“グッドルッキング”なコカ・コーラ・カムリは、また奴に左リヤをヒットされ成す術がなかった。完全に『デジャヴ』だよ」
■ラジョイ「これまででもっとも(勝利に)近かった」
決勝260周のうち96周の最多リードラップを刻んだエリオットが首位でホワイトフラッグを迎えると、その背後から引っ張られるようにチャレンジしたのがラジョイで、アウト側にマシンを振って最後のトライを試みた。しかし伏兵は、”ルーズ”となったマシンのコントロールを失ってアウト側のウォールに激突。この日最後となる13回目のコーションを引き起こし、結果的にエリオットの地元勝利を確固たるものにアシストする役目を担ってしまった。
「これまででもっとも(勝利に)近かった。確かに、それは楽しかったよ」と、レース直後ながら吹っ切れた表情を見せたラジョイ。
「最後の瞬間に動き出したが、それはうまくいかなかった。残念ながらドーソンビルでサイレンが鳴っているね(笑)。でもスパイアの仲間たちと僕を助けてくれたすべての人を誇りに思っている」と、エリオットが勝利を挙げるたびに、ファンが大騒ぎとなる地元ダイナー(飲食店)の『ドーソンビル・プール・ルーム』を引き合いに出したラジョイ。
一方、今シーズンの“台風の目”として、今回もある意味でトラブルメーカーとなったチャスティンは、開幕戦デイトナ500ウイナーのオースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を抑え、最終的に2位フィニッシュを成し遂げた。
「最高のクルマを手に入れておきながら、複数回のコーションを招いたのは残念だった。でも、これはスゴいことだよね」と振り返ったチャスティン。
「これほど速いクルマを持って来てくれたトラックハウスのメンバーには脱帽だ。僕らのロードクルーとピットクルーは、すべてのダメージ修理してカムバックを果たすため素晴らしい仕事をした。最後はターン2で9号車(エリオット)のインサイドに“ショット”を持っていたが、コーションとチェッカーが先に来てしまったね」
同じくアトランタで併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第17戦は、無線トラブルを抱えながらもハンドサインで戦い続けたオースティン・ヒル(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)が勝利。
一方、ミドオハイオで開催されたNASCARキャンピオング・ワールド・トラック・シリーズ第15戦は、TV中継での解説者も務める31歳のパーカー・クリガーマン(ヘンダーソン・モータースポーツ/シボレー・シルバラードRST)が、今季3勝のゼイン・スミス(フロントロウ・モータースポーツ/フォードF-150)を下しての大金星を挙げる結末に。
服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズは、16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRD Pro)が21位、チェイス・パーディの61号車タンドラは13位となっている。