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ビール大手4社の2022年上半期(1~6月)におけるビール類販売実績が、10年ぶりに前年の同時期を上回った。3社がプラスとなり、市場全体では3%増となった。3年ぶりに行動制限がない大型連休を迎えたこともあり、飲食店向けの業務用が回復したのが要因とみられる。

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税率一本化視野、商品力アップ

発泡酒や第三のビールを含むビール類の各社の販売数量は、サントリーとサッポロビールがともに3%増。アサヒビールは売上金額ベースで15%増えた。唯一キリンビールだけが4%減となった。

大手4社ではコロナ禍の収束に伴い、22年のビール売り上げで大幅アップを見込んでいた。コロナ禍に伴う家飲み需要が堅調である上、行動制限の解除を見越していたからだ。年々売り上げが減少する状況を覆すべく、各社とも巻き返しを図っている。さらに26年にはビール系飲料の税率が一本化される予定で、ビールは350ml当たり15円以上安くなるため、今のうちからビールの商品力を高めておこうという思惑も、そこにはある。

21年におけるビール類の売り上げが前年比でマイナスだったサッポロは、主力商品の「サッポロ生ビール黒ラベル」をリニューアル。今年は前年比10%超のプラスを目標にしており、ここまでのところ堅調だと言える。また、アサヒは看板商品の「アサヒスーパードライ」を1987年の発売以来、初の全面リニューアル。前年比マイナス4%だった昨年の売り上げを、今年はプラス10%を目指す。

少子化とコロナのWパンチも…

写真:AP/アフロ

唯一、前年比マイナスだったキリンは、ビール好きの間で最近人気のクラフトビールをテコに販売増を目論むが、ここまでのところ上手くいっていない。昨年発売した「スプリングバレー」を早くもリニューアルし、昨年の1.5倍の売り上げを目指す。ビール類全体では前年比6.6%プラスを狙うが、ここから巻き返すことができるか。一方、他社と異なり、業務用のニーズに対応すべく傾注するのがサントリーだ。行動制限の解除に伴い、飲食店が回復基調にあることが販売増に奏功した格好だ。

今回、市場全体では上半期として10年ぶりに前年を上回ったのは事実だ。たが、19年同期比では10%程度のマイナスとなり、コロナ禍前の水準には依然戻っていないのが実情だ。そもそもビール市場はコロナ禍に関係なく、縮小の一途を辿っている。昨年まで17年連続で、市場が縮小しているのだ。

背景としては、まず少子高齢化。単純に人口が減っているのだから、市場が小さくなるのは当たり前。また、年功序列制度が廃止傾向にある中、職場での“ノミュニケーション(就業後の飲み会)”が減ってしまったことも大きい。そして、飲酒における嗜好の変化も、ビール離れに拍車をかける。

昨今はハイボールやレモンサワーなどが人気で、「とりあえずビールで」の時代ではなくなってきている。ビールを取り巻く環境は厳しいが、10年ぶりの販売増をキッカケに反転攻勢となるか。