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 6月11~12日にオールトンパークで争われたBTCCイギリス・ツーリングカー選手権第4戦は、開幕序盤戦のリーダーボードを率いたトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が、自身唯一となる「表彰台を獲得していないサーキット」で躍進。イングラムにとっては今季初、そしてヒョンデとエクセラー8・モータースポーツにとっても初めての予選ポールポジション獲得から、見事な連勝劇を決めている。

 一方、リバースグリッドからステファン・ジェリー(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)が勝利を飾った最終ヒートでは、高速直線区間で発生した多重クラッシュにより、4冠王者コリン・ターキントン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)とイングラムの僚友ダン・ロイド(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8・トレードプライスカーズ.com/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)が救急搬送される事態に。肺を損傷したロイドは、現時点で今季残りのシーズン参戦は難しい状況となってしまった。

 第2戦ブランズハッチ・インディと、第3戦スラクストンで2戦連続の連勝を決めていたジョシュ・クック(リッチエナジーBTCレーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が、ここでも最速タイムを記録して始まったオールトンパークの週末は、続くFP2でもダニエル・ロウボトム(ハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーン/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)がトップに立つなど、ホンダ勢が速さを誇示した。

 しかしその流れを断ち切ったのが開幕勝者のイングラムで、戦績により4.5秒間の使用が許されたハイブリッド・パワーも活用し、復調気配を見せるロリー・ブッチャー(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)や僚友ロイドを退け、2022年の電動化新時代移行後で初のポールシッターとなった。

「クルマはとても良い感触だったよ。セッションの終わりにこうしてピットレーンでシートから降りてお祝いできたのは初めてだね。FP1とFP2の両方で、可能な限り最高の状態にあることを確認するため、多くの努力を投じて作業をこなしたんだ。エクセラー8のみんなとヒョンデにこうして初の記録をもたらせたし、僕自身も初めてのことばかり。今夜はよく眠れそうだ」

 そう語ったイングラムは、明けた日曜レース1でも堂々の走りを披露し、トヨタのブッチャーやロイドを抑えてホールショット。予選4番手ながらスタートで出遅れたアダム・モーガン(カーガッツ・ウィズ・シシリー・モータースポーツ/BMW 330e Mスポーツ)が4周目にゴードン・シェドン(ハルフォーズ・レーシング・ウィズ・カタクリーン/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)との攻防でスピンを喫すると、ここでリードを帳消しにするセーフティカー(SC)が出動する。

 しかしアクション再開後も冷静さを保ったイングラムが、18周を走破して首位フィニッシュ。2位浮上の王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)を抑えて週末最初の勝利を飾り、3位でチェッカーを受けたシェドンは、BMWへの接触で3ポジション降格のペナルティを課され、TGRのブッチャーが今季初の表彰台を得た。

復調気配を見せるロリー・ブッチャー(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGR Sport)は予選でフロントロウを獲得した
トム・イングラム(Bristol Street Motors with Excelr8 TradePriceCars.com/ヒョンデi30 Fastback N Performance)が、レース1で”ライト・トゥ・フラッグ”を達成
レース1で2位表彰台まで挽回した王者アシュリー・サットン(NAPA Racing UK/フォード・フォーカスST)は連続表彰台でランク2位も死守した

■レース3のクラッシュでロイドが病院に搬送

 続くレース2も首位発進のイングラムが優位を崩すことなく連勝を飾り、同じく王者サットンが2位に。そして名門ウエスト・サリー・レーシングの絶対エース、ターキントンが3位のポディウムを獲得すると、迎えた最終ヒート。

 オープニングラップはリバースグリッドによりエイデン・モファット(レーザー・ツールズ・レーシング/インフィニティQ50BTCC)やリッキー・コラード(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)らを従えたジェリーのBMWが隊列を率いると、その背後ではターン1をワイドに周っていたヒョンデのロイドがアクシデントの起因に。

 ヘアピンに深く進入したロイドは、立ち上がりでコラードのアウト側へ出ると、直線ダウンヒルに向けて背後の集団からプッシングを受ける形に。これでマシンコントロールを失ったヒョンデは、スピンモードに陥りながら右サイドのバリアに激しく衝突。そのままバウンドしたマシンはコース上へと戻り、後続の多くのドライバーは回避行動を強いられ散り散りにトラックを外れていく。

 ここで王者サットンやイングラムもダメージを負いつつ、なんとか避けることができたものの、視界を遮られたターキントンがフルラップで激突、グラスエリアを滑走したマイケル・クリース(カーストア・パワー・マックスド・レーシング/ヴォクスホール・アストラBTCC)らも巻き添えとなってしまう。

 SCピリオド中に数台の車両がピットで修復を受けるなか、リスタート後もポジションを守ったジェリーが今季初優勝をマーク。スタート違反で5秒のペナルティを受けたコラードは表彰台を逃し、2位にモファット、3位クックのリザルトとなった。

 一方、大破したヒョンデとBMWの救急現場から、メディカルセンターに搬送されたロイドとターキントンだが、その後にロイドのみ地元の病院に運ばれ精密なスキャン検査の結果、肺にわずかな損傷が発見された。

「胸部から異常な音が聞こえるとの診断を受け、僕はX線検査とCTスキャンを受けたけれど、最終的な診断結果はその程度で済んで非常に幸運だったと感じている」と、自身のSNSを通じて明かしたロイド。

「今はコース上で何が起こったのかについて打ちのめされている。僕自身はクルマを支配下に置いていたが、後方から押し続けられ逃げ出すことは不可能だった。サーキットのすべての医療スタッフと、みんなからのサポートのメッセージに感謝したい」

 一方、全開加速中に突然の“正面衝突”に遭遇したターキントンも、首と胸に痛みを残しつつも、事故当日には自宅に帰ることができた。

「レース3の前までは本当に良い1日だった。予選9番手から4位、3位と挽回していたしね。BMWには非常に競争力があり、この得点は選手権にとってまさに必要なものだ。事故を避ける方法がなく、大きな衝撃でかなり痛いが、数日で元気になると確信しているよ」

 まだエクセラー8からの正式発表はないものの、ロイドは今季残るイベントへの参戦は難しいとの観測が飛ぶなか、続くBTCC第5戦は6月25~26日にクロフトで争われる。

レース3ではダン・ロイド(Bristol Street Motors with Excelr8 TradePriceCars.com/ヒョンデi30 Fastback N Performance)が救急搬送される事態に
波乱の最終ヒートでは、ステファン・ジェリー(Team BMW/BMW 330e M-Sport)が勝利を飾った
王者去りし後に奮闘するエイデン・モファット(Laser Tools Racing/インフィニティQ50BTCC)も、レース3で2位に喰い込んだ