東京電力や中部電力などが出資する発電会社「JERA」が建設を進めてきた、武豊火力発電所(愛知県武豊町)の5号機が14日に完成し、8月5日から営業運転を開始する。今回完成した5号機は、石炭に約17%のバイオマスを混ぜて燃やす発電方式を取り入れており、石炭だけに比べて、年間で90万トンの二酸化炭素が削減できるという。
1基あたりの出力が国内最大級の石炭火力発電で、出力は107万キロワット。原発1基分の発電能力があり、この夏やこの冬に懸念される「電力不足」の解消に大いに期待される。しかし、どうやら朝日新聞はお気に召さないようだ。
朝日の指摘する「別課題」とは?
武豊火力発電所の完成を報じる朝日新聞(15日付朝刊)の記事の見出しは、「電力不足の緩和に期待、最大級の火力発電所が完成 でも別課題が浮上」。他社の報道を見ると、「武豊火力発電所を公開 来月運転開始 JERA」(時事通信)、「石炭に木質バイオマス混ぜて燃焼することでCO2削減 JERA武豊火力発電所公開 愛知」(CBCテレビ)、「武豊火力、8月営業運転 JERA、電力安定供給へ」(産経新聞)「夏の電力安定供給に期待 武豊火力発電所5号機8月に運転開始 240万世帯分の電力」(名古屋テレビ)などといった具合で、ネガティブ面を強調する朝日が“異質”なことがうかがえる。
朝日の言う「別課題」とは、火力発電が「燃料に石炭を使うこと」。燃料が石油だった建て替え前より二酸化炭素の年間排出量が7割ほど増える見込みだと指摘。記事では、「政府は石炭火力を活用しつつ、CO2を出さない燃料の実用化を後押しする。その一つがアンモニアだ」とするものの、アンモニアの「調達先の確保やコストなど」といった課題も挙げている。
さらに、環境NGO「気候ネットワーク」の浅岡美恵代表の「新燃料のような確立していない技術に頼っていると、脱炭素の確実な達成が難しくなる。そこに使うお金を、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの促進に振り向けた方がよい」といったコメントで記事は締められている。
ただ、火力発電に課題があるように、再生可能エネルギーにも課題はある。太陽光発電は太陽が照っている日中にしか発電できないし、気温が高すぎると発電効率が落ちてしまう。風力は風が吹かなければまったく発電できない。
また、いずれも大規模な発電所を作ろうとすれば、平地面積の少ない日本では山を切り開くなどの環境破壊をせざるをえなくなる。毎日新聞も昨年6月に「全国で公害化する太陽光発電 出現した黒い山、田んぼは埋まった」といった見出しの特集記事を出している。
原発もダメ、火力もダメ、何ならいいの?
朝日新聞は、二酸化炭素を排出する火力発電に批判的だが、気候変動を止めるためには、地球全体の二酸化炭素排出を抑制する必要がある。当然だが、日本だけでどうにかできる問題ではない。
確かに、火力発電による二酸化炭素排出量は、石炭を燃料にした場合、天然ガスを燃料にした場合と比べると2倍近くになる。しかし、日本の石炭火力は「超々臨界圧発電方式」という最新の技術で、欧米やアジア諸国に比べ高い発電効率を実現している。
発電事業などを手掛けるJ-POWER(電源開発株式会社)によると、日本の火力発電技術の最高水準性能を二酸化炭素排出量の多いアメリカ、中国、インドに適用した場合、日本の年間二酸化炭素排出量よりはるかに多い、年間で約12億トンもの二酸化炭素の削減効果があると試算されている。この技術を輸出すれば、日本にとっても世界にとっても有益なことばかりではないだろうか。
朝日新聞は、自他ともに認める反原発派で、7月6日にも「参院選 エネルギー政策 脱炭素・脱原発の道を着実に」という見出しの社説を出している。さらに、今回の記事でもわかったように、火力発電も気に食わないらしい。となると、朝日新聞は何を日本の主力電源とすべきと考えているのか。まさか、再生可能エネルギーなのか⁉