KTMS KOBE TOYOPET MOTOR SPORTS
ENEOSスーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook
第2戦 NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース
2022年6月3日(金)〜6月5日(日)
富士スピードウェイ(静岡県)
入場者数:6月3日 4,500人
6月4日 16,900人
6月5日 16,700人
トラブルを乗り越え2連勝!
24時間レースでの雪辱を果たす
FREE PRACTICE
平良響、荒川麟、奥住慈英という新たな陣容で臨んだ2022年のスーパー耐久第1戦では、見事優勝を飾りシーズン開幕を飾ったKTMS。迎える第2戦の舞台は、シリーズ最長となる富士SUPER TEC 24時間レース。獲得できるポイントも大きいが、KTMSにとっては因縁があるレースだ。2021年、このレースから新車のKTMS GR YARISを投入したが、レースをリードし続けていたものの、まさかの火災によりストップ。レースを失い、これが響きシリーズをも失うことになってしまった。
あれから一年。KTMSはその借りを返すべく、富士に挑んだ。勝敗はもちろん狙いたいが、まずは24時間耐久レースをしっかりと走り抜きたい。メカニックたちも新たなスーツを身に纏い、気持ちも新たにレースウイークに臨んだ。
週末の公式な走行に先立ち6月1日(水)のスポーツ走行から参加したKTMSは、晴天となった6月2日(木)午前10時20分からの専有走行1回目で、平良からステアリングを握りコースイン。セットアップを進めていった。ただ、開始から20分が過ぎようかというタイミングでクラッシュ車両があり、ガードレールが破損。長い赤旗中断となってしまった。
再開後は荒川、奥住と交代しながら専有走行を締めくくり、荒川がマークした1分55秒023でST-2クラスのトップにつけた。
午後2時50分からスタートした専有走行2回目では、平良は4周だけ走り、あとは奥住と荒川の習熟に努め、平良がマークした1分53秒746というタイムでここもトップ。夜間走行でもトップタイムをマークし、順調に初日の専有走行を終えた。
QUALIFY
富士24時間の走行2日目は、6月3日(金)に公式予選が行われるのみ。24時間レースということもあり予選順位はさほど重要ではないが、それでもなるべく前からスタートするべく、KTMS GR YARISは午後0時15分からスタートしたAドライバー予選に臨んでいった。
まずAドライバー予選に臨んだ平良は、3周目に1分53秒844というタイムをマーク。ST-2クラスのトップにつける。しかしライバルたちとのタイム差はほとんどなく、Bドライバー予選では荒川が1分53秒451をマークするものの、合算ではST-2クラスの3番手という結果となった。
悪い結果ではなく、大事なのは長丁場の決勝レース。Cドライバー予選では突然の強雨もあったが、奥住が2分07秒035をマークしクラストップにつけ、決勝を見すえた作業を進めていきつつ、レースに備えることになった。
RACE
迎えた6月4日(土)の決勝日。16,900人ものファンが詰めかけるなか、午後3時にいよいよ決勝レースのスタートが切られた。長い24時間レースの始まりだ。今回、たった3人でレースに挑むKTMS GR YARISは荒川、奥住、平良の順でドライブ。3時間ずつを走るスケジュールを組んだ。
そんななか1周目、スタートドライバーを務めた荒川がポジションを落としている。コカ・コーラ・コーナーでコースオフしたためだ。幸いにもダメージはなく、前を行く集団を追っていく。24時間レースらしく淡々と走っていった荒川は、まずは開始から1時間23分で一度ピットへ。ふたたびコースに入っていく。
しかしスタートから2時間半が近づこうかという頃、荒川は突如加速しない症状を感じる。エキゾーストからは炎が出ている。一度ピット入口でオフィシャルに確認してもらった後、なんとかピットまで帰り着きガレージへ。診断機などを使いながら、KTMSのクルーたちは急いでトラブルを特定する。原因は、インタークーラーのホースが抜けていたというもの。急いで修復し、KTMS GR YARISを送り出した。ただ、ピットイン時間は22分ほど。これで上位とは10周ほどの差がついてしまった。
KTMS GR YARISは奥住がステアリングを握りふたたびコースイン。チームはそこから作戦を切り替え、ひとりが引っ張れるだけ引っ張る作戦を採っていく。ふだんフォーミュラで戦っている若手たちにとっては気の遠くなるような長いスティントを続けていくが、ペースも悪くなく、KTMS GR YARISはリヤタイヤの保ちが良くピット時間も短縮でき、少しずつ順位もアップ。暗くなりナイトセッションとなり、午後9時前には平良に交代。午後11時前には荒川、さらに夜も3人が交代しながらドライブを続けていったが、トップには第1戦でも優勝を争った#13 GR YARISが走っている。
ただそんななか、夜が明けた午前8時26分ごろ、#13 GR YARISにもトラブルが起き、24分間のタイムロスを強いられる。これで平良がドライブ中だったKTMS GR YARISがトップに立つことに成功した。
序盤の大きな遅れを取り戻したKTMS GR YARISは、2周ほどのギャップを保ちながらチェッカーへ向け走行を続けていく。荒川、奥住と交代し、午後0時18分には最後のピットイン。平良にアンカーを託す。ただ刻一刻と午後3時のチェッカーが近づくなか、平良からはエンジンパワーが失われていくような症状の無線が飛び込んだ。
シリーズを考えれば、リタイアだけは御法度。ピットからは一度ルーティンのタイミングでチェックをすべきでは……と声をかけたが、平良は「いや。このままいきます!」と返答があった。ただひとり、KTMS GR YARISを1年間半乗り続けて、昨年の悔しさも知っている平良からのリクエストに、ピットも了承。ラップダウンは落ちたが、ついに午後3時、KTMS GR YARISは栄光のチェッカーを受けた。
真っ黒に煤けたKTMS GR YARISを前に、チーム全員が悲嘆に暮れた2021年の富士から1年。チーム一丸となっての勝利にチームは沸きつつ、忘れ物を取り戻したようなホッとした表情を浮かべ、食事も摂らず平良の走りを見ていたせいか、空腹を満たしはじめた。
DRIVER’S VOICE
平良 響 HIBIKI TAIRA
「昨年あんなかたちで24時間レースを失い、今年は絶対にリベンジしようと、僕もチームの皆さんも賭けていたレースでした。こうして優勝できて、しかも大逆転で勝つことができて、本当に嬉しいです。序盤にトラブルもあり、途中ライバルと10周差がついてしまい『これは届かないかな』という気持ちにもなりましたが、チームの皆さんもまったく諦めていなくて、よりドライバー3人も『かつために頑張ろう』という気持ちになりました。こうして優勝できて、本っ当に良かったです! 応援いただきありがとうございました」
荒川 麟 RIN ARAKAWA
「1周目にはコカ・コーラ・コーナーでコースアウトしてしまいましたが、これは完全に僕のミスで、さらにクラス最後尾まで落ちたところでトラブルと、一時はどうなることかと思いました。しかしチームの皆さんが前向きに頑張ろうと言ってくださいましたし、自分もその後はしっかりと頑張ることができ、最終的にチームの皆さんとともに優勝することができて本当に良かったです。自分にとっても初めての24時間レースで、9時間ドライブしたのですが、達成感がすごいです(笑)。これからも頑張っていきたいと思います」
奥住 慈英 JIEI OKUZUMI
「僕自身は以前からスーパー耐久を見ていたんです。ただ免許を取るまで出場ができず、今回が初めての24時間でしたが、加わったチームが昨年いろいろなことがあったこともよく分かっていました。序盤トラブルがありましたが、チームの皆さんが絶対になんとかするという気持ちを示してくださいましたし、決してペースが良いわけではありませんでしたが、ドライバーとして安全に、何も起こさず走ることも実力と言われ、それに徹することができましたし、チームの皆さんにも支えていただきました。こうして勝つことができたのは、チームの総合力の勝利だと思っています」