コントローラブルでストリートも主戦場
2021年にじつに61年ぶりにF1へ復帰を果たしたアストンマーティン。伝統的なレーシンググリーンがサーキットに帰ってきたことに胸を熱くしたファンも多いことだろう。その輝かしい歴史を反映したヴァンテージF1®エディションは、単なる記念モデルではなく、そのパフォーマンスなど機能性でも注目するべきモデルだ。
F1への復帰と同時にヴァンテージがオフィシャルセーフティカーを務めることになったが、そのためのスペシャルチューンがF1®エディションにも注ぎ込まれているのだ。そもそも、世界中のバラエティに富んだコースでF1マシンの隊列を淀みなく率いるためにセーフティカーはエンジンパフォーマンスとシャシー性能、空力性能を大きく高めてきた。ダウンフォースは200km/h走行時に155kgで、スタンダードモデルに対して60kgも増加したという。
そのエクステリアを忠実に再現したのがヴァンテージF1®エディションが身に纏うエアロダイナミクスボディキットであり、フロントスポイラーやリアウイングは同様のダウンフォースを生み出す。
4L V8ツインターボのエンジンもスープアップされ、最高出力は25ps増の525ps、最大トルクは数値こそ変りない685Nmだが発生回転域を拡げているという。そのスペックからも、あらゆる場面でパフォーマンスを引き出せるようチューニングされていることがわかる。トランスアクスルの8速ATにも改良の手が入り、シフトチェンジが素早くダイレクトになっているという。シャシーはフロント周りの剛性が強化されて鋭いターンインを実現。リアはスプリングレートが高められ、ダンパーの減衰力を最適化してトラクション性能を高めた。
スープアップされたとはいえエンジンに気難しさはまったくなく、一般道を2000rpm前後で流して走っているときはひたすらに従順で扱いやすさが光る。アクセルを踏み込んでいくと3000rpmあたりからサウンドに迫力が増して大トルクでボディを押し出していく。5000rpmを超えると回転上昇に一層の弾みがついてピークパワーを絞り出していく。トップエンド付近でははっきりとレーシーで身震いするほどだ。
ドライビングモードはスポーツ、スポーツプラス、トラックの3種類でサスペンションの硬さがわかりやすく変化する。今回はウェットの一般道ということもあってスポーツがベストだった。路面の凹凸をしなやかにいなし、接地感が濃厚になるからだ。ワインディングロードでは初期のストロークスピードが早めで、それゆえ滑りやすい路面にタイヤを押しつけやすく、十分にシャープに旋回していく。リアも落ち着いていて、安心してアクセルを踏み込んでいけるのは適正なダンピングの恩恵だろう。レーシングカー的なガチガチのイメージではなく、ラリーカー的な懐の深さがある。トルクバンドの広いエンジンとの相性もばっちりだ。
試しにスポーツプラスに切り替えてみると、この路面にはちょっと硬すぎるなと思う反面、ステアリング操作に対するゲインが高まってよりシャープな回頭性となった。ドライ路面だったら、もっと俊敏で姿勢を自在に制御するドライビングが楽しめそうだ。速度を高めれば空力性能の恩恵が高まり、自信を深めてアクセルを踏み込んでいけるだろう。スクエアな形状が特徴的なステアリングは意外なほど操作感が良かった。手で触っているステアリングの角度でだいたいの舵角が把握できて、一体感が増すからだ。
良くできたFRの常で、呆れるほどハイパフォーマンスながらコントローラルブルなことこの上ないヴァンテージF1®エディション。F1のセーフティカーに求められる特性はストリートスポーツとしても最適解なのだ。
【Specification】アストンマーティン・ヴァンテージF1®エディション
■全長×全幅×全高=4490×2153×1274mm
■ホイールベース=2704mm
■車両重量=1570kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/3982㏄
■最高出力=535ps(393kW)/6000rpm
■最大トルク=685Nm(69.8kg-m)/2000-5000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/35ZR21:295/30ZR21
■車両本体価格(税込)=23,460,000円
■問い合わせ先=アストンマーティン ジャパンリミテッド 03-5797-7281
投稿 F1のセーフティカーがそのまま公道にやってきた!? アストンマーティン・ヴァンテージF1エディションは最強のハンドリングマシンだった は CARSMEET WEB に最初に表示されました。