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消防車などの珍品が並び上級者向け? 官公庁オークションがリニューアルも普通の中古車を買うのと何が違う!?

 国税庁の差押え品や、公有財産の売却に用いられる「官公庁オークション」。これまでは、ヤフオク!のなかで取り扱っていたが、そちらは2021年で終了した。

 そこで新たに立ち上げられたのが、民間シンクタンク・コンサルティング企業であるKSI官公庁オークションだ。先日からその第一回オークションの内容が公示されている。

 普通乗用車だけでなく、消防車や救急車、バスやトラックまで取り扱うオークション。しかし、インターネットオークションと聞くと「大丈夫なの?」「何か不安は?」と思う人も多いのではないだろうか。

 そこで、官公庁オークションに限定した場合、普通の中古車を買うのと何が違うのか? 官公庁オークションというものは、普通のオークションとはどういった点が異なるのかなど解説していきたい。

文/高根英幸
写真/AdobeStock(トップ画像=sasun Bughdaryan@AdobeStock)

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■聞いたことはあるけど詳しく知らない人が多数? 官公庁オークションとはどういったものなのか

誰でも気軽に見て参加できるネットオークション。クルマ本体や絶版パーツなどの取引も盛んだ(vectorfusionart@AdobeStock)

 ネットオークションやフリマアプリの強みは、誰でも気軽に見て、参加できるところだろう。何となく眺めているだけでも楽しめるし、真剣にモノ探しやモノ選びをしたり、競り合って落札出来た時や、思わぬ掘り出し物や激安商品を獲得できた時には嬉しいものだ。

 自分が出品者になって不用品やコレクションの整理で小遣い稼ぎをすることもできるし、廃番になってしまったクルマのパーツを見つけることだってできる。

 そんなネットオークションの国内最大手がヤフオク!だ。

 1999年にYahoo!オークションとしてサービスを開始して以来、取り扱い高(8502億円=2020年通期)、常時出品数(7630万品=2021年11月)、出品カテゴリー数の多さ(4万671=2021年11月)を誇り、クルマ本体の取り扱いではダントツの充実ぶりとなっている。

 中にはコンディションの怪しげなクルマや、過走行など普通の中古車販売店では扱わないような(といっても最近は普通の中古車店の出品のほうが多い印象だ)クルマも見受けられるし、ネットオークションでクルマを購入することは、当然リスクがある。

 それを踏まえて、価格の安さやクルマのレア度、実際に購入するとすれば、どういう段取り(引き取りや名義変更などの手続き)で手に入れるかなど、落札後のそんな要素を想像してドキドキするのが楽しみであったりする。

 そんなヤフオク!の中に設けられていた官公庁オークションのサービスが、2021年末で終了してしまったのをご存知だろうか。

KSI官公庁オークションの専用Webサイト

 官公庁オークションとは、文字どおり国や地方自治体、公共団体が出品するオークション形式の売却手段だ。

 規定の使用期間を終えた公用車や備品、事務用品などのほか、相続税の物納と思われる不動産や、差し押さえで徴収されたさまざまな用品が出品されており、クルマは金額としても大きな部類だから差し押さえの対象となりやすいようで、まあまあの出品数を占める。

 そんな官公庁オークションの新しいスタイルとして先頃開始されたのが、KSI官公庁オークションだ。これは専用のWebサイトに行って会員登録するだけで利用することができる。

●官公庁オークションの専用Webサイト

 KSIは、紀尾井町戦略研究所の略で、そもそもYahoo! JAPAN(会社名はヤフー株式会社から現在はZホールディングス株式会社に改名)の子会社として設立された民間のシンクタンク・コンサルタント企業。

 現在はヤフーから独立しており、官公庁オークションを運営するにあたっては、ほかのIT企業もパートナーとして加わっている。つまりヤフオク!から官公庁オークションが独立したようなものだ。

■通常のネットオークションとは違う仕組みから、独立へ

 ところで、どうしてヤフオク!から官公庁オークションがなくなってしまったのか、疑問に思っている人もいるだろう。

 ヤフオク!でも官公庁オークションは一般の出品とは違って、最初に入札の権利を取得するために保証金を支払う必要があった。この保証金を支払う申し込み期間が定められていて、入札期間よりも前に締め切られる。

 そのため、オークションに入札するには、参加申し込みの期間中に保証金を払って参加することが必要だ。これが通常のヤフオク!とは違う部分だ。見つけた時には参加申し込み期間が過ぎている、なんてこともある。こうなると誰かが落札するのを眺めているだけ、となってしまう。

 これはいささか歯がゆいものを感じるが、いたずら入札を防ぐためにも冷却期間を設けることも必要だし、公的な機関への入札としては本来はもっとキチンとした申し込みが必要であるが、保証金を納めることでこれを省略しているということなのだろう。

 そういうルールの違いが、ヤフオク!の中では特異なコンテンツとなっていたことから、使い勝手の悪さを感じさせてしまった部分もありそうだ。そこで新たな受け皿を用意して独立させたのがKSI官公庁オークションなのだろう。

 なぜならKSI官公庁オークションもヤフオク!の官公庁オークションをほぼ受け継いだもの。Webのデザインこそ変わっているが、システムとしてはほぼ同じものだ。

官公庁オークションはルールの違いもあり、ヤフオク!の中では特異なコンテンツとなってしまっていた(metamorworks@AdobeStock)

 異なるのは、せり形式も導入されたことだろう。従来のヤフオク!官公庁オークションは、自分の購入希望額を決めて入札し、一番高い金額を入札した人が落札できる、というものだった。

 それが通常のネットオークションのように入札の最高金額が表示されて、入札期間中にそれより高い金額で再度入札することができるのだ。

 車両に関して言えば、官公庁オークションにはざっくりと分けて2種類のクルマが出品されている。ひとつは消防車や救急車、公用車などの公有財産で、もうひとつが税金などの滞納で差し押さえされたクルマだ。普通の人が注目するのは、後者の差し押さえされたクルマだろう。ただ、これは少々クセモノだ。

 正直言って、差し押さえされるクルマの所有者なのだから、クルマにキチンとした手入れを施していないことも多く、地方自治体もクルマの素人だから、単に保管しているだけ。中古車販売店の商品車と同じレベルを期待するのは、そもそも無理がある。

 ほかに差し押さえるモノがなかったのだろうと想像するくらい、クルマとしての価値もない出品物もある。

 これまで時折覗いてみた印象によれば、国産高級セダンや輸入車などが差し押さえ車両として出品されていたが、走行距離はまあまあ進んでいたし、内外装の印象からも乗りっぱなしで手入れを怠っていると想像できるクルマもかなりを占めていた。

 それでもつぶさにチェックしていけば、掃除や点検整備さえ施せば、まだまだ楽しめそうなクルマも見かけるから、そういったギャンブル性の高いクルマを手に入れて仕上げていくことを楽しむマニアにはいいのだろう。

 消防車やマイクロバスなど中古車販売店ではあまり扱っていない、マニアックな「はたらくクルマ」が出品され、それもかなりの低価格からの入札開始価格となるから、ちょっと欲しくなる人もいそうだ(実際、TVのバラエティ番組に消防車を購入した人が登場していた)。

 気を付けなくてはいけないのは出品者は官公庁であり、個人や中古車販売店ではない、ということだ。落札できて購入するとなった場合、基本的に手続きは自分で行なわなくてはならない。

 クルマの引き取りから名義変更などの手続き、機関として正常に動作させるための点検整備などはすべて自分で手配する必要があるのだ。

 もちろん購入後の故障や不具合などには保証などないから、すべては自己責任だ。そういった意味では、入札前には現地へ訪れて、現車を確認したほうがいい。

 クルマ好きでもかなりの上級者でなければ、購入して楽しむのは難しい。信頼できる整備業者などに協力してもらえば、あるいは問題無く乗り回して楽しめるかもしれない。そういうプロ向きのオークションがネットで公開されているものだ、と考えた方がいいだろう。

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