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運転するお父さん目線で見たステップワゴンとノア&ヴォクシー 走ってわかった明らかな違いとは

 新型ステップワゴンには後席に乗る家族のために、着座位置やシート形状を改良することで乗り物酔い防止に力を入れているそうです。

 またステップワゴンは低重心でハンドリングがしっかりとしていて走りがよいという評価も聞かれます。ライバルであるノア&ヴォクシーとは、ハンドリングや乗り心地に明確な違いがあるのでしょうか?

 いまだにコーナーでの揺り戻しが嫌でミニバン嫌いな人も多いので、新型ステップワゴンとノア&ヴォクシーを、運転するお父さん目線で、ハンドリング、乗り心地(前席、後席は家族目線)など、走りの違いはどうだったのか、モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底解説。

文/渡辺陽一郎
写真/ベストカーweb編集部

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■クルマ好きが萎えがちなミニバンを走りの面から見る!!

2022年5月登場の新型ホンダ ステップワゴン。AIR(右)とSPADA(左)の2モデル展開

 ミニバンはファミリーカーの象徴だが、お父さん(特にクルマ好き)としては、いまひとつ気分が盛り上がらないこともあるだろう。そこでステップワゴンとノア&ヴォクシーを、主に走りの面から比べたい。

 まず推奨グレードは、両方ともにハイブリッドだ。力を入れて開発され、モーター駆動の併用により、燃費に加えて動力性能も優れている。機能を考えると価格もハイブリッドが割安だ。

 ステップワゴンスパーダの場合、e:HEV(ハイブリッド)の価格は、ターボエンジンよりも38万3900円高い。しかし購入時に納める税額は、e:HEVが約8万円安く、実質価格差は30万円少々に縮まる。

 レギュラーガソリン価格が160円/Lとすれば、8万〜9万kmを走ると、燃料代の節約によって実質価格差を取り戻せる。

 しかもe:HEVは、ターボよりも加速性能が優れ、走りが静かで滑らかだ。比較チェックで取り上げるベストグレードは、e:HEVスパーダ(364万1000円)とした。

 内外装はデザインの穏やかなエアーも魅力だが、後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットインフォメーションなどを装着できない。エアーには装備の不満が伴うから、e:HEVスパーダとした。

 ノア&ヴォクシーでは、機能と価格のバランスを考えるとノアが割安だ。人気の高いエアロパーツ装着車の場合、ハイブリッドの価格はノーマルエンジンに比べて35万円高いが、購入時に納める税金は約13万円安く、実質価格差は約22万円に縮まる。

 5〜6万kmを走ると、燃料代の節約で実質価格差を取り戻せる。ベストグレードは、ノアハイブリッドS-Z(367万円)だ。

■街乗りではノアがやや有利?

ステップワゴンよりもひと足早く、2022年1月に登場した新型トヨタ ノア。姉妹車のヴォクシーと同時に登場

 両車の動力性能を比べると、ノアでも不満はないが、巡航中にアクセルペダルを踏み増した時の反応はステップワゴンが力強い。

 ボディが重く空気抵抗の大きなミニバンの場合、アクセルペダルを踏み増しても反応しにくい車種もあるが、ステップワゴンは滑らかに速度を高める。e:HEVでは、エンジンは主に発電機を作動させ、駆動はモーターが受け持つからだ。2.7L前後のガソリンエンジンを搭載する感覚で加速できた。

 またステップワゴンのエンジンは発電用だから、ホイールを直接駆動するのは巡航中に限られるが、アクセルペダルを踏み増すとエンジン回転も上昇する。発電を積極的に行い、なおかつドライバーの違和感を抑えるため、加速状況とエンジン回転数を連係させた。

 ノアのハイブリッドシステムは、動力性能をガソリンエンジンに当てはめると、2Lを少し超える程度だ。アクセルペダルを踏み増すと、少し粗いエンジンノイズが響く。それでも通常の走行音は、ステップワゴンと同等か、ノアの方が若干静かに感じる場面もあった。

 走行安定性と操舵感は、ボディが重く背の高いミニバンの苦手な機能だ。安定性が悪く、操舵感が曖昧だと、安全性や運転の楽しさを妨げてしまう。それが原因で、ミニバンを嫌うユーザーも多い。

 ステップワゴンとノアでは、走行安定性や操舵感の性格が異なる。ステップワゴンは、小さな操舵角から車両の向きが正確に変わるが、操舵に対する反応の仕方は穏やかだ。峠道を走ると、ノアに比べて曲がりにくく感じる場面もある。カーブを曲がる時は、ボディが少し大きめに傾く。

 その代わりステップワゴンは、直進安定性が優れ、高速道路で横風にあおられた時でも進路を乱されにくい。下り坂で危険を避ける時も同様だ。後輪の接地性が高く、ボディの傾き方は大きめでも、挙動の変化が穏やかに進む。

 したがってステップワゴンは、ドライバーや乗員を不安な気分にさせにくい。パワーステアリングの手応えを含めて、重厚感や骨太感があり、直進時には少しサイズの大きなミニバンを運転している気分になる。

 その点でノアは、ステップワゴンに比べると、操舵に対する反応が軽快で良く曲がる。峠道も走りやすい。街中を比較的低い速度で走る時も、ノアのほうがキビキビと走って馴染みやすい。

 その代わり下り坂のカーブで危険を避ける時など、後輪はステップワゴンほど踏ん張らない。つまりノアは街中も視野に入れ、ステップワゴンは、比較的高い速度域に重点を置いて足まわりや操舵感をセッティングした。

 このあたりは、ステップワゴンとノアのコンセプトや販売状況の違いに基づく。ノアはヴォクシーと併せて大量に販売され、幅広いユーザーをターゲットにしている。

新型トヨタ ヴォクシー。ギラギラしたいかつい外観のノアよりもさらに強烈なフロントマスクを持つ

 対するステップワゴンは、ノアやヴォクシーに比べて登録台数が少ない。今のホンダの国内販売では、N-BOXが35%前後を占めて、軽自動車全体なら約55%に達する。そこにフィット、フリード、ヴェゼルを加えると、国内で売られるホンダ車の70%を占めてしまう。

 その結果、今のステップワゴンは、以前と違ってホンダの中でも脇役的な存在になった。王道を行くノア&ヴォクシーとの販売合戦に勝てる見込みも乏しい。

 そこであえてフロントマスクなどを穏やかに仕上げ、存在感を強調するノア&ヴォクシーやセレナとの違いを明確に表現した。競争を避ける狙いがある。

 走りも同様だ。ボディを入念に造り込み、基本性能を高めたうえで、操舵感は穏やかに仕上げた。スポーティ感覚を弱める代わりに、乗り心地は柔和で快適だ。

 ノアは路上のデコボコを少し伝えやすいが、ステップワゴンは吸収性が良い。デザイン、走行性能、乗り心地まで、ステップワゴンの価値観は、ノア&ヴォクシーとは異なる。

 一般的にライバル車との競争を避けるクルマ造りは、無理が生じて販売面で失敗することも多いが、ステップワゴンは共感を得やすい。それは方針が明確であるからだ。「オラオラ系の外観は避ける」「ミニバンにとって大切な乗員の快適性を重視する」というものだ。

 この考え方に基づいて、運転感覚は穏やかになり、居住性も向上した。1列目シートのサポート性は、ノアが少し優れているが、3列目の座り心地と広さはステップワゴンが勝る。2/3列目から前方を見た時の視覚的なスッキリ感も、ステップワゴンが上まわる。

■クルマ好きに共感を得やすいステップワゴン

新型ホンダ ステップワゴン(AIR)。操舵に対する反応は穏やかだが正確。クルマ好きの感覚に訴えかけてくる

 このようにクルマとしての基本性能は、ステップワゴンが優れている。クルマ好きのお父さんが運転した時も、ステップワゴンに共感するユーザーが多いだろう。

 その一方でノアは、装備に力を入れた。特に安全性を高める衝突被害軽減ブレーキは、自車が右左折する時に、直進車や横断歩道上の歩行者も検知して作動する。スライドドアが開き掛けている時、車両が接近すると作動を停止させ、降車時の事故を防ぐ機能もある。

 使い勝手については、リアゲートを好みの角度で停止させ、車両の後方が狭い場所でも荷物を出し入れしやすくした。

 電動スライドドアの作動に応じてせり出すサイドステップも、3万3000円の低価格でオプション設定した。

 渋滞時にステアリングホイールから手を離しても、運転支援が続く機能も装着できる。スマートフォンを使って、車外から車庫入れできる機能も採用した。オプションを含めて、先進装備はノアとヴォクシーの圧勝だ。

 ここにも販売面の事情が絡む。ノアとヴォクシーの保有台数は膨大だから、そのユーザーが新型に乗り替えたいと思うような装備を数多く採用した。フロントマスクも存在感が強く、特にヴォクシーは、デザインに新鮮味を与えて、新たな顧客の獲得を目指している。

 以上のように、クルマ好きが共感を得やすいのはステップワゴン、不特定多数のミニバンユーザーをターゲットに据えたのがノアとヴォクシーになる。

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