バンコクを訪れている。海外出張は2年半ぶりになる。事前にパスポート、ワクチン接種証明書、医療保険証の写真をとってスマホから申請した。一晩明けてみると、QRコードがついたタイランドパスが発行されていた。コロナ対策として入国に必要なものはこれだけだ。空港でスクリーンショットで保存しておいた画面を係員がスキャンして完了。続く入国審査で並ぶこともなく、スムーズに入国できた▼バンコク市内に漂う匂いに、初めてタイに来たときの記憶を呼び覚まされた。もう30年近く前になる。夜中に到着し、ガイドブックだけを頼りに、何はともあれカオサンストリートを目指した▼どの国にも観光客を狙う悪い輩がいる。今思えばあまりに無防備だが、王宮前で声をかけられて水上ボートに乗った。川の上で恐喝され財布の金を全部取られたあげく、どこかわからない船着き場で放り出された。道を聞こうにも言葉が分からない。地図でカオサンストリートを指さすと、親切に帰り道を教えてくれた。まだ地下鉄も高架鉄道もない時代。幸い歩いて帰れる距離だった▼今ならスマホで検索しただろう。現金がなくてもチャージ式IC乗車券がある。便利になった。仕事するにはいい。ただ旅に冒険を求める若者には、もはやバンコクは物足りないかもしれない。(22・6・16)