もっと詳しく

 6月11~12日にハンガロリンクで争われた2022年ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ第2戦は、王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が開幕に続く予選完全制覇から“ハットトリック”達成の大暴れ。しかし赤旗中断の波乱となった土曜レース2のみ、2017年王者アダム・ラッコ(バギラZMレーシング/フレイトライナー)が気を吐き、王者のパーフェクトゲームを阻止する今季初勝利を飾っている。

 このハンガリーでの週末はWTCR世界ツーリングカー・カップと、TCR規定派生の電動ツーリングカー選手権であるFIA eツーリングカー・ワールドカップ(ETCR)との併催イベントとなったETRC第2戦は、開幕戦連勝、地元出身の王者が金曜フリープラクティスからセッションを支配する展開に。

 そのまま土曜予選でも勢いを維持したキスは、サッシャ・レンツ(SLトラックスポーツ30/マン)、元王者のラッコ、そして前人未到のシリーズ6冠を誇るヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)らを退け、幸先よくスーパーポールでの勝負を制した。

 迎えたレース1スタートでは、後方で大外刈りを決めたシュテフィ・ハルム(チーム・シュバーベントラック/イベコ)に対し、シェーン・ブレルトン(TORトラック・レーシング/マン)とテオ・カルヴェ(バギラZMレーシング/フレイトライナー)が軽い接触を喫する波乱があったものの、背後での戦いを避け静かなレースを繰り広げた上位勢は、レンツやハーンに対し9.3秒ものマージンを稼いだキスが完勝。凱旋のディフェンディングチャンピオンが、地元応援団の前で早くも今季3勝目を手にした。

 続いて、通常より遅い現地19時開始となったレース2は、日没が迫るトラック上のコンディションも災いし、最初の数コーナーで多重アクシデントが発生。その最大の犠牲者となったのがキスで、深紅のマンはフロントのブルバーが剥がれ落ちタイヤバリアにも激突。あわや横転の深刻なダメージを負ってしまう。

 キスのみならず、ハーンやアントニオ・アルバセテ(Tスポーツ・ベルナウ/マン)らも赤旗再開後の復帰は叶わず、日曜に向けレベス・レーシングのクルーも、地元王者の#1号車修復見通しに関して「明日のレースを戦える状況に戻せるか不透明」との状況に追い込まれてしまう。

開幕戦連勝、地元出身の王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が金曜フリープラクティスから予選へとセッションを支配する展開に
開幕戦連勝、地元出身の王者ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が金曜フリープラクティスから予選へとセッションを支配する展開に
日没間際に実施された土曜レース2は、赤旗絡みのレースで2017年王者アダム・ラッコ(バギラZMレーシング/フレイトライナー)が今季初勝利
日没間際に実施された土曜レース2は、赤旗絡みのレースで2017年王者アダム・ラッコ(バギラZMレーシング/フレイトライナー)が今季初勝利
明けた日曜予選スーパーポールも、地元の英雄キスが制し、開幕4セッション連続の最前列を獲得する
明けた日曜予選スーパーポールも、地元の英雄キスが制し、開幕4セッション連続の最前列を獲得する

 そんな重苦しい雰囲気のなか、45分後のリスタートで主導権を握ったのが手負いのラッコで、ブレルトンとアンドレ・クルシム(ドント・タッチ・レーシング/イベコ)の2台を一気にオーバーテイク。同じくアクシデントのダメージでペースが上がらないクルシムが背後のレンツに蓋をする間、11秒ものギャップを築いて今季最初のトップチェッカーを受けた。

 明けた日曜午前の予選でも、修復なったキスがスーパーポールの1アタックで今季4セッション連続のポールポジションを確定。最初に設定した2分17秒350のタイムは「破られない」と確信したチームは、2度目のアタックを回避する戦略を採ると、この判断が大当たり。前日勝者のラッコがフロントロウ2番手、そして今季すべてのヒートで連続表彰台獲得記録を続けるレンツが、ハーンを退けての3番手となった。

 続くレース3のオープニングも切り返しのターン2まで首位攻防の火種が残ったものの、先頭でストレートを降ったキスはそのまま姿を消し、後続を置き去りにする展開に。背後のラッコもレンツの仕掛けを凌いで2番手を守り、一方のレンツは終盤に向け“帝王”ハーンの急襲を受け、教科書どおりのオーバーテイクを決められ表彰台圏内から陥落。これでレンツは2022年初のポディウム圏外となってしまった。

 そして最終ヒートのレース4は、リバースポール発進のカルヴェが、ハルム、ハーン、そしてキスという選手権の“巨人”たちを相手に首位を維持したものの、まさかのブレーキトラブルでターン14を直進。そこまで素晴らしいパフォーマンスで守り続けたリードを失っただけでなく、レースからもリタイアという無念の結末となった。

 代わって主役の座を演じたのがホームヒーローのキスで、8番手発進から2周目までにハーンの背後に浮上すると、勢いの差を見せつけるかのように“帝王”をオーバーテイク。首位を行くフランス人を追走する。しかし終盤、戦列を去ったカルヴェの跡を受けリーダーの座に立ったキスが、5秒差を築いての週末“ハットトリック”を達成。2位ハーン、3位ラッコの表彰台となった。続く2022年のETRC第3戦は、7月2~3日にスロバキアリンクで争われる。

レース3は勝者キスを筆頭に、ラッコとヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)が並ぶ表彰台に
レース3は勝者キスを筆頭に、ラッコとヨッヘン・ハーン(チーム・ハーン・レーシング/イベコ)が並ぶ表彰台に
レース4を制し、週末“ハットトリック”達成を祝う喜びのドーナツターンを披露したキス
レース4を制し、週末“ハットトリック”達成を祝う喜びのドーナツターンを披露したキス
続く2022年のETRC第3戦は、7月2~3日にスロバキアリンクで争われる
続く2022年のETRC第3戦は、7月2~3日にスロバキアリンクで争われる