2022年の全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権はいよいよ6月18〜19日、宮城県のスポーツランドSUGOで第4大会を迎える。今季は9月24〜25日の岡山までの全6大会で争われることから、SUGOでの第4大会はシリーズ後半戦の幕開けとなる。これまでの前半戦3大会を振り返っておこう。
若手ドライバーたちの登竜門として、また近年では、そのダウンフォース量の大きさから、全日本スーパーフォーミュラ選手権やスーパーGT GT500クラスをドライブするための準備のカテゴリーともなっているスーパーフォーミュラ・ライツ。今季は13台/14名のドライバーがこれまで参戦しているが、ランキングでは“抜けだした”ドライバーがおらず、接戦模様となっている。
まず今季のエントリーからおさらいしておくと、2021年に名取鉄平をチャンピオンに導いたB-MAX RACING TEAMは、1台はホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)とのコラボレーションで木村偉織を走らせ、もう1台はチームの育成として菅波冬悟を走らせる。同じくHFDPとコラボするかたちでTODA RACINGは太田格之進を走らせている。
一方TOM’Sは、今季4台体制に拡大。昨年から継続となる小高一斗、平良響のふたりに加え、2021年FIA-F4チャンピオンの野中誠太、2021年フォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップ王者の古谷悠河を走らせている。
また2021年に三宅淳詞のドライブで2勝を飾ったルーニースポーツの10号車は、第1大会、第3大会は川合孝汰が、第2大会は元嶋成弥がドライブした。また、スリーボンド東名エンジンを積みHELM MOTORSPORTSが今季新たに参戦。平木湧也、平木玲次の兄弟がドライブしている。
マスタークラスでは、B-MAX RACING TEAMから参戦するDRAGONと今田信宏の争いに、ルーニースポーツから参戦する植田正幸が割って入るかたち。ただ、植田は第3大会のオートポリス、第4大会のSUGOをスキップしている。
■今季3大会9戦を振り返る
各レースの詳細は省くが、4月9〜10日に富士スピードウェイで開幕した第1大会では、第1戦で野中が、第2戦では小高が、第3戦では平良が優勝。TOM’S勢が3勝を飾り、野中、平良にとっては嬉しい初優勝を飾っている。ただ木村が2回の2位表彰台を獲得しているほか、太田も第2戦で2位に。この大会では川合がスピードをみせ第1戦のポールポジションを獲得したほか、第2戦では4位に入った。
4月22〜24日の第2大会鈴鹿では、第4戦では小高がポール・トゥ・ウインを飾るも、そのレースで2位に入った太田がウエットとなった第5戦を制す。第6戦はふたたびウエットだったが、今度は小高が優勝、太田が2位となった。
5月20〜22日にオートポリスで行われた第3大会では、TOM’S勢が走り出しから不調で、そんななか今季勝ち星になかなか届いていなかった木村が第7戦で初優勝。続く第8戦ではスタート時のペナルティをとられてしまったが、第9戦では2勝目を飾っている。一方、第3大会で2位2回、優勝1回を重ねたのが太田。TOM’S勢では、野中が第3大会で3戦連続の3位に。荒れた第8戦では、鈴鹿で二度の3位表彰台を獲得した古谷が最上位の2位に入っている。
■前半戦は太田格之進の安定感が光るも、後半戦は別のアプローチに?
これまでの3大会を終えランキングトップにつけているのは、65点を獲得した太田。第1戦のスタート直後に接触されストップした以外の8戦でポイントを獲得しており、7戦で表彰台と極めて高い安定感を誇る。クレバーな走りで表彰台をしっかり得ており、週末の1レース目でも3レース目を見据え、決して無茶をしない戦いをみせてきた。
ただ、太田は後半戦に向けて「これまで勝ってもいますしポールも獲っていますが、安定した走りを心がけてきました。しかし、後半戦は来年“上”に上がるために、何か光るところをみせたいと思っています」というからさらに楽しみなところ。
「逆に、チャンピオンが見えはじめているからこそガツガツいきたいですし、ギリギリのところを攻めたいですね。守りに入ってしまったら成長は止まりますし、探究心を出していきたいと思っています。だから今回からは絶対引かないです」
一方ランキング2位は最多の3勝を飾っている小高。すでにスーパーフォーミュラも経験済みで、小高にとっては今季ライツの王座は“マスト”とも言える。ただ第1大会の富士ではエンジン交換のペナルティを受けたことが響き、第2大会は2勝を飾ったが、第3大会のオートポリスが絶不調。3レースとも1ポイントずつ、合計3得点に留まっており、太田との差に繋がっている。不調のなかで得たこの3点を後半戦に繋げられるか。
■巻き返しを狙うTOM’S勢
「富士ではエンジン交換がなければ3連勝できたかもしれませんが、ホームコースでパフォーマンスを出し切れなかった悔しさがあります。鈴鹿も2勝はできましたが、やはり少しずつ詰めが甘いです」と小高。
「オートポリスは何をやっても良くならなかったですし、金曜に予選という変則スケジュールが響いてしまいました。ふだんどおり土曜予選なら、金曜にデータを見直せたりしたんですけど。自分がそこまで詰められなかったのも悪いですが」
後半戦に向けて小高は、「(チャンピオン争いは)意識していないわけではありませんが、そこは深追いせず、一戦一戦を大事に戦っていきたいですね」と語った。
3位はオートポリスで2勝を飾った木村がつける。無得点は第8戦のみだが、鈴鹿大会で思うようにポイントを重ねられなかったのがやや響いている。速さの面では文句なしで、今後いかに安定して高得点を積み重ねられるかが巻き返しへの鍵となりそうだ。
4位は野中だが、第1戦以来優勝がない。表彰台は6回獲得しており安定感は高いが、一方でウエットとなった鈴鹿では“取りこぼし”もあった。野中車はRSファインがメンテナンスし、昨年まで35号車をドライブしていた河野駿佑がデータエンジニアとしてドライバーに寄り添ったアドバイスも送っている。安定感をさらに一段上げれば、まだランキング首位はまったく届かない差ではない。TOM’S勢では、第2大会、第3大会と苦しんだ平良が、逆にライツに慣れ速さを増している古谷との差を詰められている。野中から古谷までは点差も少なく、チームメイト同士の争いも気になるところだ。ちなみに野中、平良、古谷は同い年というのも興味深い。
■波に“乗れていない”ドライバーたちの逆襲なるか
一方、なかなか思うような結果を残せていないのが菅波、川合、そしてHELM MOTORSPORTSの平木湧也、玲次のふたり。本人の目標であるGT500、スーパーフォーミュラに向けての決意の挑戦を続けている菅波はコンスタントにスピードをみせポイントは獲得できているが、ここまで優勝、表彰台がない。オートポリスでの第8戦ではフロントロウにつけながら接触。悔しい一戦となった。
またルーニースポーツから参戦する川合は、第1戦のポールポジションを獲得するも接触で失い、第3大会では週末まったく流れに乗れず、トラブルなどで不運の連鎖に巻き込まれてしまった。こちらも菅波同様、自身のキャリアを切り拓くための挑戦。メーカーのサポートを受けない菅波、川合のふたりもなんとか後半戦で流れに乗って欲しいところだ。
ちなみに6月16日に開幕した第4大会のオートポリスでは、専有走行で川合がトップタイムをマークしている。もともと「SUGOは得意」という川合だけに、まずは結果に繋げたいところだ。
またHELM MOTORSPORTSは玲次が第1戦で1ポイントを獲得したものの、その後はしばらくポイント獲得はなく、荒れた第8戦で待望の2台入賞を果たした。ただ、オフこそタイムを出していたものの、いざレースとなるとTOM’S、B-MAXという2チームの壁が高く、ふたりも悔しさをみせている。スーパー耐久富士24時間での優勝の勢いを繋げ、後半戦の躍進を狙いたいところだが、今季は同じコースでの2回目の開催がなくデータが活かし切れないのは少々つらいところか。
そして、マスタークラスの争いは白熱している。9レースを終えて首位の今田と2位のDRAGONの差はわずか3ポイント。ふたりともに4勝ずつと拮抗している。ふたりの後半戦の戦いも大いに注目したいところだ。