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 電動化、自動運転、コネクテッドなど最新技術が続々登場しているトラック業界。もちろん最新技術のトレンドを抑えるのも大事だが、やはり基本構造を知らなきゃトラックのメカは語れない。

 ということで始まった本シリーズは、トラックの基本構造に造詣の深い多賀まりお氏に、トラックの基本構造を解説してもらおうというもの。

 第一回となる今回のテーマは「シャシー構造」を詳しく解説する!!

文/多賀まりお 写真/トラックメーカー各社


トラックのほとんどで採用されている梯子型フレームとは?

大型トラックの梯子型フレーム

 多品種少量生産の典型であるトラックの車体には、カタチや大きさの異なるさまざまな架装物に幅広く対応できる構造とともに、偏った位置に集中することもある大きな荷重に耐える堅牢性が求められる。

 小型から大型までほとんどの車両が採用する梯子型フレームはこうした要件に対応できる、トラックに適した構造だ。

 梯子の長手の部分はサイドレール、桁はクロスメンバーと呼ばれる。梯子の幅、即ち組幅を広くすると捻じれに強くなるが、必ずしも強ければ良いというわけではない。

 欧州のオフロード用シャシーには、不整地での路面追従性を高めるために組幅を狭く採って捻じれ剛性を下げた例も見られる。

 日本車の荷台部分の組幅は小型の標準キャブ車で700mm、ワイドキャブ車で750mm、中型〜大型は850mm前後が標準的。架装物の汎用性を高める目的から、シャシーメーカー間ではほぼ同じ寸法となっている。

 次に、フレームの上下方向の曲げに対する強さはサイドレールの高さ(上下の厚み)で決まる。

 実勢値としては車両の大きさに応じて小型車で150〜160mmぐらい、中型で200〜235mm、大型の低床や2軸トラクタで250〜270mm、高床や3軸トラクタでは300mmといったところ。

 サイドレールの形状は小型のダンプシャシーなどに閉断面の溶接構造も見られるが、加工や補強のしやすい鉄板を折り曲げたC型(コの字型)断面が大勢。板厚は6〜7mmのものが多く、8mm超の厚さや、高強度の炭素鋼や合金鋼を使ったものも存在する。

2種類のリーフサスペンション

大型トラックの後軸のリーフサスペンション

 トラックのサスペンションは、リーフスプリング(板バネ)と、左右輪を繋げた固定式の車軸を組み合わせ、リーフが車軸の位置決めも担うリーフサスペンションが最も一般的。

 リーフスプリングにはマルチリーフタイプとロングテーパーリーフタイプの2種類が存在する。

 マルチリーフタイプは、中央から端部まで厚さの変わらないリーフを重ね合わせたもので、リーフがたわむ際のリーフ同士の摩擦力がダンピング(振動の減衰)効果をもたらす構造。

 いっぽうロングテーパーリーフは、板厚を連続的に変化(中央から端部に向かって薄くなる)させたテーパー形状によって板間に隙間を生じさせ、板間摩擦を排除し、よりしなやかな動きをもたらす構造。

 ロングテーパーリーフはトラックのなかでも乗り心地(荷台の上下振動低減)を重視する用途から90年代に普及が加速し、現在はヘヴィデューティモデルにも使われている。板間摩擦によるダンピング効果が得られないので、ショックアブソーバーの役割は重要だ。

優れた乗り心地をもたらすエアサスペンション

こちらはエアサスペンション

 さらに優れた乗り心地をもたらすのがエアサス。金属バネの代わりに内部に圧縮した空気を詰めたゴム製のバッグ(エアベローズ)を用い、内部の空気圧を増減させるいことでエアバッグに掛かる荷重に対する反発力、即ちバネの堅さを変えられるのが特徴。

 内圧を高めると堅いバネとなり、低くすれば柔らかいバネとなる。空車から定積状態まで車軸に掛かる荷重の変化に対して内圧を調整することで、常に最適な乗り心地が得られる仕組みだ。

 併せて車高も適正な高さに保たれるため、大型のバン型車などはボディの高さを保安基準の上限である3.8m近くに設定できる。手動操作で車高を調整する機能も、積み降ろしやトレーラの脱着時に利便性を発揮する。

 ちなみに、エアバッグ用の圧搾空気はエンジン駆動のコンプレッサで作られるサービスエアを利用するのが一般的。エアブレーキを使わない小型車などの場合には専用の電動コンプレッサを装備することになる。

 なお、エアバッグはリーフのように車軸を位置決めする機能を持たないので、エアサスには車軸をシャシーと結び、車軸の動きをコントロールするためのロッド類が必要。懸架方式はさまざまで、4バッグ式、2バッグ式などが一般的だ。

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