以前は、「クルマは良いのにインテリアがダサい」というイメージもあった日産車だが、近年はアリアに代表されるように、見違えるほどよくなってきている。「どうしてこれまでできなかったのか」とも思ってしまうが、他社車にひけを取らないレベルに仕上がっているのは、非常に頼もしい。
「やればできる」のなら、もっともっと高みを目指してほしい、ということで、直近で登場した3台のインテリアの特徴を確認しながら、筆者が素晴らしいと思うポイント、そしてあと一歩だと感じるポイントについて、触れていこう。
文/吉川賢一、写真/NISSAN、奥隅圭之、佐藤正勝
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アリア(539万円~)
●良い点:精巧感溢れるツインディスプレイと本革素材が秀逸
現在の日産車のなかで、最もインテリアの質感が高いのは「アリア」だろう。大型のディスプレイは、前後に段差を付けてレイアウトしているが、滑らかな面で繋ぎ、一枚の大きなディスプレイのように表現しており、精巧につくり込まれている印象を受ける。日除けがないタブレット型のディスプレイは、従来のクルマのメーター周りとは一線を画すデザインで、未来的だ。メルセデスやヒョンデもタブレット型のディスプレイを採用しているが、日産のツインディスプレイも、非常に上手なみせ方だと思う。
インパネやシートには、プレミアムな質感のナッパーレザーシート(ブルーグレー)を採用。この本革が、色味もあいまってしっとりと落ち着いた印象で、まるで高級なラウンジのような雰囲気を演出してくれる。シンプルでありながら美しく力強いデザインは、日産史上、ダントツで1位のインテリアではないだろうか。
●あと一歩な点:埋め込み式スイッチの操作性
木目調パネルに浮かび上がるエアコンのハプティクススイッチは、必要なときには現れ、不要なときには形を消す。スイッチ部分を押すと、運転中でも振動で操作感が伝わるようにもなっている。またセンターコンソールにあるモード切り替えスイッチも、押すと振動するタイプだ。
しかし、やはり操作性はイマイチ。温度調節をする場合、このスイッチを何度か押すことになるのだが、指を引っかける凹凸がないなかで、平らな面にあるスイッチを押すのは、なかなか難しい。特に、運転中のように身体が揺れてしまう車内では、スイッチ部が押すと振動してくれるとはいえ指先が定まらず、周りのインパネに手をついたうえで、探りながら押すような操作となる。
使い勝手を考えるエルゴノミクス部門として、これが使いやすいと考えたのか、デザイン部門が主導して押し切ったのかは分からないが、筆者には、従来の物理ボタンから改悪されているように思えてならない。
ノート(203万円~)/ノートオーラ(261万円~)
●良い点:ツインディスプレイと手触りのいいファブリック素材
200万円代前半のコンパクトカーで、よくぞここまでインテリアの質感を上げてきたものだと、驚かされたのがノートだ。最大のポイントは、メーターとナビのツインディスプレイを全グレード標準採用したこと。アリアと同じく、曲面で繋げたデザインとしており、一枚の大きなディスプレイに見せている。メーターフードのないデザインは、コクピット周りをすっきりと見せており、まるで近未来のクルマのような印象だ。先代のノートからは、2世代くらい進化したような印象を受ける。
そして、そのさらに上級を実現したのが、ノートオーラだ。ベースとなるノートから、インパネやセンターコンソール、ドアトリムに、ツイード柄のファブリック表皮や、オープンポア仕上げの木目調(15工程もかけて微細加工がなされている)の加飾を施し、手触りまで含めて質感を上げてきた。ブラック本皮シートに加えて、上質なホワイト系「エアリーグレー」も用意されており、小型車では大変珍しい高級感だ。
昔から「小さな高級車」は、世界中の自動車メーカーから幾度となく登場してきたが、現時点でコスパを含めたトップランクは、このノートオーラといってよいと考える。
●あと一歩な点:フローティングコンソール下の使い勝手
ギアセレクターを高い位置へレイアウトするため、コンソールを宙に浮かせた「フローティングコンソール」だが、その下にあいた空間の使い勝手がよくない。手に持っていたカバンを置くにしても狭く、ケータイや財布をおいても滑る(滑り止めのついたマットは別売)ので、何を置いてよいのか迷うところだ。
結局のところ、ウェットティッシュやタオルなど、あまり目立たせたくないアイテムを置くこととなりもったいない。アリアのようにギアセレクターはアームレスト側へ移動し、センターコンソールを切り離した方が、前席左右の移動もできて、便利だったかもしれない。
サクラ(233万3100円~/補助金適応前)
●良い点:軽とは思えぬデジタルメーター
ほぼ、東京モーターショー2019で登場したコンセプトカー「IMk」の姿で登場した「サクラ」。フロントバンパーやヘッドライト周りなど、アリアの特徴を捉えたうえでそのまま縮小した、まさに「アリアの孫」。
インテリアこそ、コンセプトカーとは違って、現実的な解に落とし込まれてはいるが、ツインモニターを標準搭載するなど、コストも充分にかけられている。見える範囲では、デイズと共通するパーツは見当たらず、完全オリジナルのようだ。
ただ、その現実的な解も、軽を越えたクオリティで、7インチサイズの液晶メーターと9インチナビゲーションは、アリアやノートのように一枚板の上にレイアウトされている。よく見れば、2枚のディスプレイを横に並べただけなのだが、アリアやノート(ノートオーラ)の印象が良いからか、質感が良く感じられてしまう。
ダッシュボードのデザインも、水平基調にまとめて、カッパーのラインを差し込み、防水の効かせたファブリックで覆うなど、アリアやノートオーラの意匠を受け継いでいるように見える。ギアセレクターも、アリアやノート/ノートオーラの流れを引き継いだものとなっており、もはや軽の水準ではない造りの良さだ。
●あと一歩な点:チープな印象の前席シート
その反面、普通に感じたのが前席シートだ。未来的なインテリアに反して、一般的な軽自動車のベンチシートタイプと同様に、乗り込みのしやすさを優先したようなタイプ。もちろん軽の全幅では、ノート/ノートオーラのような大きなシートは入らないのだが、「軽を越えた軽BEV(電気自動車)」をうたうのならば、シートデザインまで含めて超えていってほしかった。
■まとめ
今後、国内市場向けには、待望の次期型セレナが控えている。新型ノアヴォクシー、新型ステップワゴンとライバル車は大幅な進化を果たしており、日産もこのライバル2車種についてはよく研究していることだろう。2023年ともうわさされている次期型セレナ。アリア、ノート/ノートオーラ、そしてサクラにつづいて、次期型セレナでも質感高いインテリアをみせてくれることを期待している。
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