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 トラックやトレーラは、たくさんの荷物を運ぶことが求められています。といっても、法律でクルマ全体の重量(車両総重量)の上限は決まっているので、たくさん運ぶためには、クルマ自体の重量を軽くするしかありません。

 にも関わらず日本では、単なる鉄のおもりを2t(トン)も載せなければ走ることができないトレーラが、いまも数多く使われています。

 物流効率のアップとCO2排出削減が求められる世の中で、なぜあえてムダに重いトレーラを使わなければならないのか? その謎に迫ります。

文/緒方五郎 写真/トラックマガジン「フルロード」編集部


フル積載20ft海コン3軸シャシー

初代クオンGKセミトラクタが牽くフル積載20ft海コン3軸シャシーの先端に、おもり(カウンターウエイト)がみえる

 2tのおもりが必要となるセミトレーラ(被けん引車)は、長さ20フィート(約6.1m)の国際海上コンテナ(海コン)を積載するためのコンテナシャシーのうち、「重さが20~24tになる海コン」を運ぶ「3軸シャシー」です。

 ここでは、このセミトレーラを「フル積載20ft海コン3軸シャシー」と呼ぶことにします。現在は40ft海コン(長さ約12.2m)用コンテナシャシーが主流になっていますが、以前から大量に用いられている20ft海コンを運ぶために、なくてはならないセミトレーラです。

 2tのおもり(カウンターウエイト)は、フル積載20ft海コン3軸シャシーの前方に装備されています。四角い箱状の物体がそれで、外からはっきり見えます。それそのものが鉄のカタマリで、おもり以外の機能はありません。

おもりの役割

カウンターウエイト。車両によって固定位置・固定スタイルが異なるが、約2tの箱状の鉄塊である

 あえて約2tのおもりを載せているのは、法律で定められている「軸重」(車軸1本にかかる重量のこと)を最適化することと、コンテナシャシーを牽引するセミトラクタのトラクションを確保することの、二つの役割があります。

 日本の法規では、国際海コン積載時のシャシー総重量の上限を「30.48t」、20ft海コン自体の総重量の上限を「24t」に設定しています。

 「シャシー総重量30.48tのコンテナシャシー」を、法規違反とならない軸重で、かつセミトラクタに十分なトラクションを確保して運行させるためには、
 (A) おもりを使って「非フル積載2軸シャシー」に近いサイズの3軸シャシーにする(キングピン全長約8.7m)
 (B) 3軸シャシーの全長を長くする(同約10.3m)
 (C) 2軸シャシーの全長を長くする(同約10.8m)

…などの選択肢が考えられています。
 なお、「キングピン全長」というのは、セミトラクタとの連結部からコンテナシャシー後端までの長さで、連結した時の全体の長さに影響する数値です。

 (A)(B)(C)のいずれも実際に生産されていますが、日本のコンテナシャシーユーザーの多くが選んだのが、コンテナシャシーの駐車場や物流施設への影響が少ない(A)のフル積載20ft海コン3軸シャシーだった、というわけです。

おもりをなくす方法はあるのか?

 「2tのおもり」をなくして、フル積載・法令順守・サイズ抑制の三つが両立できれば…と誰しも思うことでしょう。

 例えば、花見台自動車が開発したコンテナシャシー「HCシリーズ」は、グースネック(トラクタヘッドと重なる部分)のフレーム形状を、独特の幅広デザイン(同社は「コブラネック」と呼ぶ)とし、連結全長の短縮化と2軸化を実現させたものがあります。

 また、欧州のフル積載20ft海コン3軸シャシー(関連法規は異なるが、やはり軸重制限がある)は、エアサス(装着車がほとんど)の車高調整機能を利用することで、セミトラクタへ軸重を寄せる例がみられます。

いっぽうでトレンドの変化も

 もっとも日本国内では、耐久信頼性や導入コスト・維持コストの面から、機械的要素の少ないリーフサスを用いた、ごくシンプルなシャシーが好まれているので、「おもり搭載」がベストなソリューションであるのも確かです。

 さらに、より大きな40ft海コンが増えた結果、いまでは40ft海コンシャシーが主流となりました。その中には、20ft海コンの積載も兼用できるタイプもあり、保有車両を合理化したいユーザーに支持されています。

 そして近年では、20ft、40ftに加えて、新しい規格である45ft海コンの積載も兼用できるシャシー(欧州製の伸縮フレーム付エアサス装着車)が、少しずつ増えてきました。

 このように、海コンシャシーに対するニーズが変わりつつあることも事実で、今後は「おもり付き」フル積載20ft海コン3軸シャシーの姿が減っていくのかもしれません。

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