2022年上半期には、トヨタから新型ノア・ヴォクシー、ホンダからは新型ステップワゴンが発売された。人気車種のフルモデルチェンジと相まって、話題がこと欠かない。ミニバンは、来年(2023年)以降も新型車への期待が高まるカテゴリーでもある。
そこで、今回はライバル同士である新型ノア・ヴォクシーと新型ステップワゴンをさまざまな角度から比較していく。さらに10点満点の採点方式で評価もしていく。どちらに軍配があがるのか? それとも互角なのだろうか?
文/渡辺陽一郎、写真/西尾タクト、奥隅圭之、TOYOTA
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運転のしやすさとシートアレンジは五分五分!? 使い勝手をチェック!!
ミニバンは今でも人気のカテゴリーで、国内で売られる小型/普通乗用車の25%前後を占める。2022年は新型ミニバンが多く発売され、1月にはノア&ヴォクシー、5月にはステップワゴンが新たに登場した。格好のライバル同士だから、詳細に比べてみたい。
ボディスタイルは両車とも水平基調だが、フロントマスクの印象は異なる。ステップワゴンは穏やかな雰囲気で、このデザインは、車両全体のコンセプトを反映させている。ノア&ヴォクシーは存在感を重視した。
運転席に座って周囲を眺めると、ステップワゴンはボディの四隅が分かりやすい。その代わり全長は、エアーが4800mmでスパーダは4830mmだから、ノア&ヴォクシーの4695mmに比べて100mm以上長い。全幅もステップワゴンは1750mmだから、ノア&ヴォクシーの1730mmに比べて若干ワイドだ。
つまりボディの四隅の分かりやすさと、サイズについては一長一短だ。最小回転半径はステップワゴンが5.4m(プレミアムラインは5.7m)、ノア&ヴォクシーは5.5mで、この点でも差が付きにくい。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:5点
・ノア&ヴォクシー:5点
●内装の質感と使いやすさ比較
内装の造りは両車とも上質だが、メッキパーツなどの使い方は、ノア&ヴォクシーが少し巧みだ。
メーターの視認性やスイッチ類の操作性は同程度だが、ハイブリッドのATレバーには注意したい。ステップワゴンのe:HEVは、D/Bレンジをプッシュ式のスイッチで操作する。慣れの問題ともいえるが、操作しにくいので、複数の車両を併用するドライバーは気を付けたい。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:5点
・ノア&ヴォクシー:7点
●居住性比較
1列目のシートは、座り心地にさほど差はないが、ノア&ヴォクシーは少し柔軟に仕上げた。2列目は、ハイブリッド同士で比べると足元の形状が異なる。
ステップワゴンe:HEVは、2列目に座る乗員の足が1列目の下に収まりやすいが、ノア&ヴォクシーは入りにくい。そのために身長170cmの大人6名が乗車して、2列目に座る乗員の膝先空間を両車とも握りコブシ2つ分に調節すると、ステップワゴンは快適でノア&ヴォクシーは窮屈だ。1列目の下に足が収まりにくいから、膝の持ち上がる姿勢になってしまう。
3列目も異なる。2列目に座る乗員の膝先空間を両車とも握りコブシ2つ分に調節して、3列目に座ると、ステップワゴンの膝先には2列目と同じく握りコブシ2つ分の余裕ができる。ノア&ヴォクシーは、握りコブシ1つ半と狭い。
しかもステップワゴンの3列目は、座面の長さ(奥行寸法)は2列目よりも約80mm短いが、背もたれを含めて十分な厚みを持たせた。座り心地はノア&ヴォクシーよりも柔軟だ。ノア&ヴォクシーの3列目は、座面がステップワゴンよりも10mmほど長いが、座り心地の柔軟性は乏しい。
さらにステップワゴンは、サイドウィンドウの下端部分を乗員にしっかりと見せて、ノア&ヴォクシーよりも車内の水平基調を明確に表現している。車内の造りがシンプルだから、2/3列目に座る乗員が自然な感覚で車外の風景を眺められる。視覚的にもノア&ヴォクシーよりも快適だ。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:9点
・ノア&ヴォクシー:7点
●乗り降りのしやすさ比較
スライドドア部分における路面から床までの高さは、ノア&ヴォクシーが380mmで、ステップワゴンは390mmだ。この差はわずかだが、ノア&ヴォクシーは、電動スライドドアの作動に連動して外側へ出てくる機械式ユニバーサルステップ(サイドステップ)を3万3000円の低価格でオプション設定した。乗り降りのしやすさに配慮している。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:6点
・ノア&ヴォクシー:7点
●シートアレンジの使い勝手比較
7人乗りに採用されるセパレートタイプの2列目シートは、両車とも長いスライド機能を備える。ステップワゴンスパーダの場合、2列目の通常のスライド量は525mmだ。内側に寄せると、壁側のデコボコを避けて780mmスライドできる。
ノア&ヴォクシーは、内側に寄せない通常の状態で745mmのスライドを可能にした。ステップワゴンに比べると、ロングスライドさせる時の内側へ寄せる手間を省いた。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:7点
・ノア&ヴォクシー:8点
●荷室の使い勝手比較
ノア&ヴォクシーでは、3列目シートに装着されたレバーを引くと、3列目が自動的に持ち上がる。次にサイドウィンドウ側へ押し付けると、ロックして固定される。3列目を片手で畳むことが可能だ。
ステップワゴンは、3列目が床下格納だから、3列目の背もたれを前側に倒して、シート全体を手前に引くと床下に落ち込む。ノア&ヴォクシーに比べて、格納に手間を要するが、畳んだ3列目が荷室側へ張り出さない。そしてステップワゴンは、3列目を畳んだ時の荷室長(荷室の奥行寸法)がノア&ヴォクシーよりも長い。
このあたりは一長一短だが、ノア&ヴォクシーは、手動式のリヤゲートでも任意の角度で止められる。電動式は、ボディ後方の側面に開閉スイッチが装着され、角度を調節しやすい。縦列駐車をしている時など、車両の後方が狭い場所でも、荷物を出し入れしやすい。リヤゲートの使い勝手はノア&ヴォクシーが勝る。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:7点
・ノア&ヴォクシー:9点
動力性能と加速感の実力はいかに? 走行性能と安全装備をチェック!!
売れ筋のハイブリッド同士で動力性能を比べる。ステップワゴンのe:HEVでは、エンジンは基本的に発電機を作動させ、駆動はモーターが受け持つ。そのために瞬発力が強く、加速も滑らかだ。ノア&ヴォクシーのハイブリッドも滑らかで動力性能も相応に確保するが、ステップワゴンはさらに優れている。
ノイズも同様だ。ノア&ヴォクシーも通常の走りでは静かだが、登坂路での加速時には音質が粗くなりやすい。その点でステップワゴンは耳障りに感じにくい。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:8点
・ノア&ヴォクシー:6点
●走行安定性と操舵感比較
新型車とあって、両車ともにミニバンでは操舵に対する反応が正確だ。操舵角が小さいとき、あるいはステアリングホイールを回し始めたときの曖昧な印象が払拭され、気分良く運転できる。
この点は両車とも共通だが、相違点もある。ステップワゴンは、ノア&ヴォクシーに比べると、後輪の接地性を高めた。峠道などを走ると、曲がりにくく感じる場面もあるが、下り坂のカーブでも後輪の横滑りは発生しにくい。直進安定性も優れ、高速道路のトンネルを抜けたときの横風にも強い。
いい換えればステップワゴンには重厚感があり、ひとまわり大きなクルマを運転している印象を受ける。パワーステアリングの操舵感も、ミニバンでは若干重く、手応えを重視した。
いっぽう、ノア&ヴォクシーはミニバンとして一般的な設定だ。幅広いユーザーがなじみやすい。操舵に対する反応は、ステップワゴンよりも機敏で良く曲がる。混雑した街中や峠道を走りやすい。その代わり後輪の接地性や直進安定性、重厚感は、ステップワゴンと比べて少し見劣りする。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:7点
・ノア&ヴォクシー:6点
●乗り心地比較
両車ともに、時速40km以下では路上の細かなデコボコを伝えやすい。その上で比べると、ノア&ヴォクシーは少し硬い。ステップワゴンは足まわりが柔軟に動く。そのためにステップワゴンは、カーブではボディが大きめに傾くが、挙動の変化が穏やかで前述の通り後輪の接地性も高い。従って安定性は損なわれない。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:7点
・ノア&ヴォクシー:6点
●燃費性能比較
ステップワゴンスパーダのWLTCモード燃費は19.6km/Lだ。ノア&ヴォクシーハイブリッドは、エアロパーツを装着したS-GやS-Zが23km/Lになる。燃費性能はノア&ヴォクシーが勝る。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:6点
・ノア&ヴォクシー:7点
●安全装備と運転支援機能比較
ノア&ヴォクシーの衝突被害軽減ブレーキは、自車が右左折するときに、直進してくる対向車や横断歩道上の歩行者にも反応する。プロアクティブドライビングアシストも全車に標準装着した。先行車に近付きすぎたときなど、アクセルペダルを戻すと、回生充電量が増して減速力が強まる。ドライバーがブレーキペダルを踏もうとしたとき、タイミング良く減速が開始されるため、走りが滑らかになる。
さらにオプションでは、電動スライドドアが開き掛けているときに車両が接近すると、作動を止めて降車時の事故を防ぐ安全装備も採用した。渋滞時の高速道路では、ステアリングホイールから手を離しても、運転支援機能が継続する装備も選べる。ノア&ヴォクシーは、今のトヨタ車の中で、装備が最も充実している。ステップワゴンと比較しても、大幅に上まわる。
採点(10点満点)
・ステップワゴン:7点
・ノア&ヴォクシー:10点
ステップワゴンとノア&ヴォクシーのおすすめユーザーは?
ステップワゴンは、2/3列目に開放感が伴って座り心地も快適だから、多人数で移動する機会の多いユーザーに適する。またe:HEVは動力性能が優れ、走行安定性と乗り心地も上質だから、高速道路を使った長距離ドライブにも適する。
ノア&ヴォクシーは、街中を軽快に走ることが特徴で、運転感覚が馴染みやすい。幅広いユーザーに適する。使い勝手も優れ、3列目シートを簡単に畳めて、2列目のロングスライドも使いやすい。頻繁にシートアレンジの操作をするユーザーにも向いている。さらに先進的な安全装備や運転支援機能も用意した。
ノア&ヴォクシーは、機能や装備をバランス良く高めて好調に販売されるが、ステップワゴンにも前述のメリットがある。ニーズに応じて選び分けたい。
●総合評価
・ステップワゴン:7点
・ノア&ヴォクシー:8点
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