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<p>ガブリエル・シャネルの展覧会に見る、モダニズムの美意識。|石田潤のIn The Mode</p><p>【新着】ガブリエル・シャネルの展覧会に見る、モダニズムの美意識。|石田潤のIn The Mode 〈三菱一号館美術館〉で開催中の『ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode』。ガブリエル・シャネルがデザインした約140の品々は、彼女がミース・ファン・デル・ローエや…</p><p>〈三菱一号館美術館〉で開催中の『ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode』。ガブリエル・シャネルがデザインした約140の品々は、彼女がミース・ファン・デル・ローエやアイリーン・グレイと同時代を生きた「モダニスト」であったことを物語る。</p><p>ブラック&ホワイトで統一されたシンプルな空間。〈三菱一号館美術館〉で開催中の『ガブリエル・シャネル展 Manifeste de mode』は、抑制の中に美を見出すシャネルの美意識を具現化したものとなっている。〈ガリエラ宮パリ市立モード美術館〉に始まり、メルボルンの〈ヴィクトリア国立美術館〉を経て東京に巡回してきたこの展覧会は、シャネルの創業者であるガブリエル・シャネル(1883-1971)がデザインしたアイテム約140点を紹介するものだ。 シャネルらしいモノトーンカラーで統一された展示デザイン。ミニマルな空間に光のラインがアクセントを添える。 ガブリエルは、女性のファッションに変革を起こした20世紀を代表するファッションデザイナーであり、ミース・ファン・デル・ローエやピエール・シャロー、アイリーン・グレイと同じ時代を生きたモダニストでもある。「神は細部に宿る」とミースは言ったが、展示された品々から見て取れるディテールへのこだわり、機能性を重視した服作りは、彼女がファッション界におけるモダニストであったことを再認識させる。 1920年代、30年代のアイテムが並ぶ「スタイルの誕生」。黒で統一された空間に、直線的な光のラインが映える。 男性用下着の素材とされていたアイボリーのシルクジャージーを、女性用アイテムの素材へと転換した。「ドレスとジャケットのアンサンブル」(1922-1928年)。(パリ、パトリモアンヌ・シャネル所蔵) モノトーンの小花柄がシックな「ドレスとスカーフのアンサンブル」(右・1930年頃)。切り抜きやインサーション、アップリケの技法が取り入れられた「デイ・ドレス」(左・1930年春夏)。 展示は8つの章から構成され、シャネルのスーツからリトル・ブラック・ドレス、ベージュと黒のバイカラーシューズ、「2・55」バッグ、そして香水「シャネル N°5」と、今なお作り続けられるアイコニックなアイテムの原型たちが登場する。ガブリエル・シャネルは1912年にドーヴィルにブティックを開いた際に、初めて女性服(スポーツウェア)を発表したが、「スタイルの誕生」と銘打たれた展覧会の最初の部屋には、1920年代から30年代にかけて作られたドレスやデイ・アンサンブル、コートが並ぶ。 ここで注目したいのは、トップに展示されたシルクジャージーの「ドレスとジャケットのアンサンブル」(1922-1928年)だ。当時、アイボリー色のシルクジャージーは、男性用下着に用いられていた素材だった。しかし、ガブリエルはこの着心地の良い素材を女性の服に転用した。のちに出てくるツイードもまた、元々はスコットランド地方で男性のカントリーウェアに用いられた素材だ。男性用のものとされていた素材を積極的に女性服に取り入れたのも、ガブリエルが行ったファッション革命の一つである。 Loading… 石田潤 いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。</p>