7月17日、静岡県の富士スピードウェイで開催された全日本スーパーフォーミュラ選手権第6戦富士。予選2番手から序盤3番手、野尻智紀(TEAM MUGEN)がピットに入ってからは2番手を走っていた坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)は、ピットインした直後に、それまで先頭を走っていた関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)がストップしたことから、ピットアウト後トップに立ったかと思われたが、セーフティカーに追いつくまでの間にピットインしていた笹原右京(TEAM MUGEN)に先行され、勝利を逃すことになってしまった。
坪井は今季、予選では上位につけることはありながらも、決勝では苦しむラウンドが多く、今季はこれまで3ポイントに留まっていた。迎えた第6戦では、予選でフロントロウ2番手を獲得。スタートではやや加速が鈍りインを抑えたものの、トップでTGRコーナーに入った関口に詰まるかたちとなってしまい、その間に野尻に先行を許した。
ただ、サッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)のクラッシュ後に入ったセーフティカー明けに野尻がピットインを行うと、2番手で関口を追った。25周を終え関口がピットインすると、坪井も翌周ピットへ。ここで関口のタイヤが外れセーフティカーが入ったが、コースインする坪井に野尻が迫ってくる。勝負どころと見た坪井は第2セーフティカーラインまでになんとか野尻を抑え、これでトップに立ったかに思われた。
しかし、セーフティカーが入ったことで坪井はペースを落とし1周回ってきたが、その間に笹原、宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)、佐藤蓮(TEAM GOH)がピットインしていた。笹原が真っ先にコースに戻り、坪井の前に出た。
「1周戻ってきてセーフティカーが見え、無線が入って初めて先行されたことを知りました。詰めが甘すぎましたね」と最終コーナーで事態を知った坪井は、この時の心境を語った。
「最悪でしたね。『終わったな』という感じです。早くこのままレース終わらないかなと思いましたし、ボーッとしてしまうくらいでした」
野尻を抑えたことでトップに立った手ごたえを掴んでしまっていたのか、セーフティカーが入り追い抜きができないことで油断してしまったのか。レース後、「セーフティカーに追いつくまではペースを上げないと」と他のドライバーからも指摘されていたほどだった。またチームを率いる立川祐路監督も「今日は僕の責任」と悔しがった。
リスタート時に笹原に仕掛けたかった坪井だが、逆に野尻に迫られ、笹原の先行を許してしまう。その後も「オーバーテイクシステムも全部使いながらなんとかプレッシャーをかけていったのですが、やはり同じタイヤでしたし、前半のペースも笹原選手とあまり変わらなかったのはセーフティカーラン中にも聞いていました」と追いつくことはできず。2位でチェッカーを受けることになった。
「ホンダ勢の加速の速さ、オーバーテイクシステムを使ったときの差はちょっとあったのかな、と思います。そうなるとなかなか戦いづらかったですね」と坪井は振り返った。
坪井にとっては、目前につかみかけていた優勝を逃す悔しい結果となった。ただ一方で、収穫はあったと2位を前向きにとらえた。
「ドライのペースについては、関口選手や野尻選手と同様のペースで走れましたし、特に野尻選手はどこに行っても速い、選手権のリーダーですからね。こちらのタイヤの方が古いのに同じようなタイムで走れていたので、その点はこれ以上ないくらい収穫ですし、やっと0.1秒台の争いの次元まで来ることができたのは大きいです」と坪井。
「チームとしてはやっと表彰台に立つことができましたし、大きなポイントを得ることもできました。表彰台に乗ることができたことについては、まずはホッとしています」