FIAは、6月16日、ドライバーの安全を考慮し、マシンのポーパシング(ダウンフォース量の変化によってマシンが激しく上下に振動する現象)を減らすための対策を導入することを発表した。
2022年にF1技術レギュレーションが大幅に変更され、グラウンドエフェクトカーが導入されると、各チームは程度の差はあるものの、ポーパシング現象に悩まされ、これに対処する必要に迫られた。車高をできるだけ下げることがより優れたパフォーマンスを生むことにつながるが、低い車高で走ることで、バウンシングやボトミングに苦しむことにもなる。
メルセデスのルイス・ハミルトンは、アゼルバイジャンGP後、バクー市街地サーキットのバンピーな路面で背中の痛みに苦しみ、レース後、マシンから自力で降りるのが難しいほど身体にダメージを負っていた。
メルセデスのジョージ・ラッセルやフェラーリのカルロス・サインツをはじめ、多数のドライバーが現在のポーパシングの影響に強い懸念を示し、FIAに対して対応を依頼していた。
カナダGPを前に、FIAは声明を発表、チームに対してドライバーをポーパシングで苦しめないようなセットアップを取るよう指示するため、技術指令を出したことを明らかにした。FIAは、ドライバーの安全性を考慮し、医師と協議の上、この問題に介入することを決めたということだ。
FIAの声明には以下のように記されている。
「今年のFIA F1世界選手権第8戦において、新世代F1マシンの空力的振動(“ポーパシング”)の現象、そしてそれがレース中とレース後にドライバーの健康状態に影響を及ぼしていることが、再び確認された。F1の管理機関であるFIAは、安全の観点から、チームがこの現象を軽減または排除するために必要な調整を行うよう要求するために介入する必要があると確信した」
「この問題に取り組むためにFIAが取る意向である対策について、チームへのガイダンスを与えるため、技術指令が出された。そこには以下の内容が含まれている」
「1. プランクおよびスキッドを、デザインおよび観測される摩耗の両面から、より綿密に調査する」
「2. 車両の垂直加速度に基づき、垂直方向の振動の許容レベルに関する定量的な限界を示す、基準を定義する。この基準のための正確な数式は、現在、FIAによって分析中であり、F1チームがこのプロセスに貢献することが求められている」
「こういった短期的な対策に加え、FIAは、中期的に、マシンがこういった現象を示す傾向を抑える対策を定義するために、チームとの技術会議を開催する予定である」
「FIAは、ドライバーの安全性の観点から、医師団と協議の上、介入することを決定した」
「時速300kmを超えるスピードで走行する競技では、ドライバーの集中力のすべてがその仕事に当てられる必要があり、過度の疲労や痛みを感じる場合、それが集中力の低下につながると、重大な結果を招く可能性があると考えられる」
「さらに、FIAは、ドライバーの健康への即時の影響に関して懸念を抱いている。多数のドライバーが最近のイベント後に背中の痛みを訴えている」
この技術指令によって、より大きな影響を受けるのは、ポーパシングが激しいメルセデスやフェラーリであると考えられる。