道路交通法で定められているルールのうち、速度制限や信号、そして一時停止などの標識の順守といったものは、多くの人が気を付けているところであり、街中をみていても、(速度超過や際どいタイミングでの信号通過など、「あれはアウトだろう」と思うことも稀にありますが)大きく違反している行為はあまり見かけることはありません。
しかしながら、道路交通法で違反とされているにもかかわらず、街中でよく見かける危険な行為はいくつかあります。よく見かけるけど、やめたほうがいい違反をご紹介するとともに、その行為がどれだけ危険なのか、ということにも触れていきます。
文:吉川賢一
アイキャッチ写真:Adobe Stock_ Artem
写真:Adobe Stock、写真AC
回避できた危険が回避できなくなる、運転中の「ながらスマホ」
運転中の「ながらスマホ」については、ご存じの通り、2019年12月に罰則が強化されました。しかしながら、2年半が経過したいまでも、街中でしばしば見かけます。実際に、携帯電話使用等に係る交通事故件数は、減ってはいるものの、まだまだ多いのが現状です。
運転中の「ながらスマホ」について規制している道路交通法第71条第5号の5によると、クルマが停止しているときを除いて、「携帯電話等を保持して通話をすること」と、「ナビやスマホなどの画面を注視すること」をしてはいけないとしています。クルマのほか、原付バイクも同様。「画面を注視すること」が禁止されているので、SNSなどの利用ももちろん違反です。
これらに違反(携帯電話等の保持、画像注視)すると、(反則行為※となり)反則金は普通車で18,000円、違反点数3点が加算されます。さらに(携帯電話の保持や画面注視が原因で)事故を引き起こした場合は、(非反則行為となるため罰則が適用され)1年以下の懲役又は30万円以下の罰金、違反点数は6点と、免許停止処分の対象になります。(※反則行為:交通違反のうち、比較的軽微なものについて、反則金を支払うことで罰則の適用を受けない「交通反則通告制度」が適用される行為)
当たり前ですが、クルマが走行中は、たとえ低速であっても、前へ進んでいます。20km/hでも1秒間に約6m、40km/hでは約11m、60km/hでは約17mも前進します。たった一瞬目を離すだけで、回避できた危険が回避できずに、事故となってしまう可能性があるのです。実際に2000年のデータでは、死亡事故のうち、携帯電話等を使用していたケースは、使用がない場合の約1.9倍にもなるそう。
どんなに大事な連絡でも、どんなに急いでいても、クルマの運転中はドライバーとしての義務を優先させなければなりません。スマホの利用は、安全なところにクルマを止めたうえで行うようにしてください。
左側視界が遮られる、助手席の人の「ダッシュボードへの足のせ」
「助手席の人が、足をダッシュボードにのせる」。高速道路などで見かける、なんとも行儀の悪い行為ですが、行儀が悪いでは済まされず、交通違反として、ドライバーが取り締まりをされてしまう行為です。
まず考えられるのが、「座席ベルト装着義務違反」。たとえシートベルトを装着していたとしても、助手席の人が足をダッシュボードにのせる、ということは、間違った姿勢でいるということ。道路交通法71条において、「運転者は座席ベルトを装着しないで自動車を運転してはならない」と規定されており、すべての乗員に正しくシートベルトを装着してもらうというドライバーの義務に反しています。この場合、反則金はありませんが、違反点数1点が加算されます。
また、「安全運転義務違反」になる可能性も。助手席の人が足をダッシュボードにのせることで、左前や左ミラーの視界が遮られ、「運転操作に支障をきたす」とみなされる可能性があります。左側通行の日本では、クルマの左側には歩行者や二輪車などの「交通弱者」がいることも多く、左側視界が遮られることは、大変危険なことです。安全運転義務違反は、反則金9,000円(普通車)、違反点数は2点です。
また、シートに浅く腰かけていることで、急ブレーキの際に身体がシートベルトからすり抜け、お尻が助手席足元に入ってしまう「サブマリン現象」になり、大けがをするリスクも。もし走行中に、助手席の人が足をあげようとしたら、言いにくい人であっても、「違反になるし、危ないから」と、しっかりと伝えなければなりません。
前席乗員にも危険をきたす、後席シートベルト非着用
2008年に義務化された、後部座席でのシートベルト着用。しかしながら、2020年に行われたJAFユーザー調査では、5人中3人はシートベルトをしていなかったそう。2016年の調査では、35%程度(一般道の場合)だったので、徐々に改善している傾向ではありますが、後席シートベルトに関しては、まだまだ、理解が進んでいない状況です。
前席が厳しく取り締まりがされている一方、後席に関しては取り締まりも厳しくなく、また違反点数も、(前章でふれたように)前席が違反点数1点となるのに対し、後席では高速道路のみ1点、一般道では口頭注意のみ。そのため、「締めなくても大丈夫」と思っているかもしれませんが、シートベルトの必要性は前席も後席も変わらず、むしろ後席乗員がシートベルトをしないことで、前席の乗員が危険な目に遭うことにも繋がってきます。
JAFがダミー人形を使って行った実験(55km/hフルラップ前面衝突試験)では、シートベルトを着用していない運転席側後席ダミーが、前方向へと投げ出され、運転席のヘッドレストに頭を打ち付けたあと、シートごと運転席ダミーを押しつぶし、運転席ダミーがハンドルとシートの間に挟まった、という結果となっています。
運転席側後席ダミーの頭部は、ヘッドレストを介して運転席ダミーの後頭部に衝突。シートごと押しつぶされた運転席ダミーとともに、頭部に重大な損傷が発生する可能性がある衝撃となったそう。後席シートでも、シートベルトを着用していたダミーは、上体をしっかりと拘束されたことで、前方へと投げ出されることはなかったそうです。
また、シートベルト非装着の場合、事故の際に車外へ放出されるリスクもあります。100km/h近いスピードでクルマが走行している道路で、もし車外へ放出されたら…。かなり深刻な状況に置かれることは想像できるでしょう。小さな子供であればなおさらそのリスクは高まります。後席でも、シートベルトは必ず装着するようにしてください。
危険だから「やっちゃだめ」とされている
他にも、交差点でのあおりハンドルや、黄色信号でのアクセル踏み込み、などは、よく見かけるけどやめたほうがいい違反行為。
交差点でのあおりハンドルは、「運転テクニック」だと思っている人もいるようですが、左折時の内輪差でひっかける原因を勘違いしている、もしくは、できるだけ減速をしたくない、という自分勝手な理由で危険な運転をしていることに気づいていない、非常に愚かな行為。
道路交通法 第34条第1項の「左折の際にはあらかじめできる限り道路の左側端に寄り、かつできる限り道路の左側端にそって、徐行しなければならない」という規制に違反するものであり、また(あおることで)ウインカーがキャンセルされたまま曲がっていけば、「合図不履行違反」にもなります。なにより、周囲のクルマにとって大変迷惑。黄色信号でのアクセル踏み込みも同様に、自分勝手極まりない行為です。
「まわりでやっているから」 「これで何十年も運転してきたし」 「こんなことで捕まらないでしょ」という思考は、ドライバーのモラル不足です。違反となる行為は、危険だから違反なのです。本稿で紹介した行為にもし心当たりがあるならば、今すぐに改め、安全にカーライフを楽しんでください。
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