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 2022年11月1日からバイクに「平成33年(令和2年)排ガス規制」が全面適用される。50ccを除き、規制に対応していないバイクは、この期日までに規制をクリアしないと日本で販売できなくなる。

 生産終了に追い込まれるモデルは、現行ラインナップの約1割と少なくない。殿堂入りするバイクにはいくつかのパターンがあり、これを全四回にわたって紹介していく。

 まず第一回は、ほぼ日本専用車で「ガラパゴス化」していたモデル群。CB400SFらロングセラーも含まれる。

文/沼尾宏明、写真/HONDA、YAMAHA

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国内190車種のうち約1割が10月末で生産終了となる

 国産バイクメーカー4社は、日本向けに約190車種のラインナップを擁する(2022年7月現在)。このうち約1割の20車種程度が生産終了になる見込みだ。

 近頃、大きな話題となったのが、CB400スーパーフォア/スーパーボルドール、SR400、セロー250といったロングセラーの殿堂入り。また、現行最後の空冷直列4気筒モデルだったCB1100の絶版も衝撃的だった。

 これらに共通するのは、ほぼ国内専用モデルという点だ。

 SRやセローは、排ガス規制が日本より緩い一部の海外で従来モデルの販売が継続されているが、本来の主要マーケットは日本。多大なコストをかけて排ガス規制に対応したとしても、グローバル展開による採算を確保できない。そのため、国内での生産終了を決断したのだろう。

 国内4社は世界で約2100万台もの二輪販売台数を誇るが、日本での販売台数は40万台程度。世界をリードする4大バイクメーカーがありながら、国内だけの販売ではコストを回収するのは難しい。CB400SFも年間3000台程度を売上げる人気車ながら、悲しいことにこれが現実なのだ。

30年の節目にミドルクラスの代表格CB400SF/SBが消える!

 ここからは生産終了する各モデルの詳細を改めて振り返ってみたい。

 まずCB400SF(ホンダ)は、1992年4月28日にデビューしたネイキッド。初代発売からちょうど30年後の2022年4月28日に生産終了が正式発表された。

 CB400SFは、ネイキッドブームを築いた空冷直4のカワサキ ゼファーに対抗すべく、水冷直4を搭載。ライバルを圧倒するスポーティさとグラマラスなデザインで、ベストセラーに躍り出た。

 さらに定番モデルとなった2000年代では、2002年から2017年まで16年連続でクラス販売首位を記録。排ガス規制の影響で2008年にゼファーχやXJR400Rら多くのライバルが消えたが、近年は400ccクラスで世界唯一の直列4気筒車として君臨した。教習車としても長年にわたって活躍し、お世話になった人も多いはずだ。また耐久性にも定評があり、バイク便としても圧倒的な人気がある。

 搭載されるDOHC4バルブ水冷4気筒エンジンは、ルーツを辿ると1986年のCBR400Rにまで遡る。当時の燃料供給はキャブレターで、エンジンもそれに合わせて設計されたものだ。

 1999年型でバルブ休止機構のハイパーVTECなどを採用し、当時の排ガス規制に適合。2008年型でハイパーVTEC REVOを導入した新エンジンになったタイミングで、燃料供給がFIに進化した。この改良のおかげで前回の平成28年排出ガス規制もクリア。一時期は令和2年排ガス規制にも対応すると噂されていた。

 しかし、エンジンの基本設計がやはり古く、排ガス規制を通すため大幅なメスを入れる必要がある。関係者筋によると「規制を通すとなれば車両価格は200万円近くに達する」という。現行のCB400SFは車両価格が約90万円、カウル付きのCB400SBは100万円超となっており、クラス最高額。さらに2倍近い価格となれば、セールスも期待できず、生産終了が決まったと推測できる。

 排ガス規制が適用される10月末まで生産は続けられるが、残念ながら既に生産分は予約で完売している。

2022年10月生産分をもってCB400スーパーフォアの生産終了が決定。ファイナルエディションが設定されないのは後継車があるから……なのか?

53年に及ぶホンダ空冷直4の歴史に幕を降ろしたCB1100

 続いてはCB1100(ホンダ)。唯一の空冷直列4気筒モデルだったが、2022年型でファイナルエディションが設定され、殿堂入りとなった。

 ホンダの空冷直4と言えば、1969年のCB750フォアに始まり、CB900F/750F(1979年)、CB1100R(1981年)とキラ星の如き名車が揃う。その53年に及ぶ歴史がCB1100で終焉を迎えたのだから衝撃が走った。

 STDは2021年型がスライドしてそのままラストに。クラシカルなEXグレードとスポーティなRSグレードには、特製エンブレムや専用色を与えたファイナルエディションが設定された。2021年10月~11月末頃まで期間限定受注で販売する予定だったが、早期に完売している。

 CB1100は2010年2月にデビュー。1992年のCB750以来、約18年ぶりに新開発された空冷CBで、エンジンはCB1300をベースに空冷化しており、バルブタイミングをわざとズラすことで「鷹揚」な走りを実現していた。

 空冷エンジンは、水冷と違って熱を一定に保ちにくく、燃焼温度のバラつきがあるため、排ガスが増加しがち。2000年代にはカワサキのゼファー、ヤマハのXJRシリーズなど多くの空冷直4機が排ガス規制により生産終了に追い込まれた。

 CB1100も継続が期待されたが、終売。過去には欧州などで販売されたが、これも現在は日本専用となっていた。

クラシカルさを強調したCB1100EX。前後18インチのアルミリムスポークホイールや、バフ掛けトップブリッジ&エンジンカバーなどがレトロだ

初代は1978年デビュー、生きた化石SR400も時代に抗えず

 ヤマハのSR400は、初代が1978年デビューという驚異のロングセラー車。発売以来、流麗なスタイルと、空冷+キックスターターなどの基本構成を維持したまま熟成を重ねてきたが、43年目の2021年型で生産終了がアナウンスされた。

 2021年1月21日に発表されたファイナルエディションでは、通常販売のほか、1000台限定のリミテッドを用意。発表から数日で年間販売計画の6000台(ファイナル5000台、リミテッド1000台)を超える受注が殺到した。

 生産終了の理由は、排ガス規制に加え、2021年10月に導入が開始されたバイク用ABSの義務化も大きい。シンプルな車体のため、ABSユニットの搭載スペースを確保するのが困難だった。

 そして伝統のSOHC2バルブ空冷単気筒は2010年にFI化したほか、2018年にはキャニスターなどの追加で平成28年排ガス規制に対応。まさに延命を図ってきたわけだが、新規制に対応するのはコスト的にも技術的にも難しかったようだ。

 なお、タイでは今なおSR400が販売されているが、日本へ逆輸入してもABS規制と排ガスの関係で登録はできない。

定価74.8万円に対し、ショップによっては150万円近い価格で取り引きされているSR400ファイナルエディションリミテッド。専用の塗装やシートをあしらった豪華仕様だ

愛されバイク、セローも2020年型でラストとなった

 セロー250(ヤマハ)は、1985年の初代225から数え、35年目の2020年モデルで殿堂入りとなった。

 粘り強い特性の空冷単気筒と軽量スリムな車体を持ち、野山を散歩するような「マウンテントレール」という独自の世界観を構築。2019年12月に生産終了が発表され、ファイナルエディションが翌1月から発売された。

 生産終了の理由は、排ガス規制のほか、ABS規制、さらに2020年7月から導入されたヘッドライトの認証試験基準変更が理由の一つでもある。

 SRと同様に現在、メーカー在庫は完売。新車はショップにある店頭在庫のみとなるが、ヤマハ公式HPでは現在もラインナップされている。また、北米など独自の排ガス規制を敷く一部の海外では「XT250」のネーミングで継続販売中だ。

セロー250ファイナルエディションは、1985年の初代をイメージした緑と赤が用意され、初代と同様にフレームも塗装される

CB1300も来年で終了? 一方でCB400復活の動きも!?

 ちなみに、CB400SFの原型となったCB1000SFの後継機CB1300SFシリーズは、2021年に令和2年排出ガス規制に適合し、販売が続けられている。しかし、こちらも日本専用モデルであり、2022年秋頃に発売される見込みの30周年モデルがファイナルエディションと噂される。

 また当WEBで既報のとおり、CB400SFには「後継機」の存在が噂になっている。エンジンはやはりDOHCヘッドの水冷並列4気筒となる模様。従来のCB400SFと異なり、中国市場などに投入されるグローバルモデルとして展開するため、「復活」が可能となる模様だ。

 これは、中国でZ900RSなど日本製並列4気筒モデルの人気が高まっていることが背景。海外向けに500cc版が用意され、国内仕様として400cc版が登場する可能性がある。

 このような「脱ガラパゴス化」によって、SRやセローも国内に復活する日を心待ちにしたい。

同じく国内専用車のCB1300SF/SBも2023年型でラストに? 113ps&11.4kg-mのパワフルな走りと威風堂々とした車体が魅力。争奪戦になる前に買っておいた方がいいかも?

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