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 タイヤの数が多く走行距離も長いトラックにとって、タイヤ関係の出費はかなりの額になります。コストを抑えたりと思っているドライバーや運送会社も多いはず。

 メーカーやパターン、運転方法によってもタイヤの減り方は変わってきます。どうしてタイヤはすり減るのか? 現役タイヤマン・ハマダユキオさんがタイヤ摩耗の原因を解説します。

 トラックドライバーさんにとっても、タイヤの上手な使用方法を考える上で参考になるのではないでしょうか。

文・写真/ハマダユキオ


トラック・トレーラで出費が嵩むタイヤ

 タイヤはクルマのパーツの中でも割と高額で、消耗部品に分類されます。しかもクルマ一台に付き一本ではなく数本、多軸トラックやトレーラのタイヤの数は数十本にもなり、タイヤ関係の出費はかなりのものになりますよね。

 新車の時のタイヤがそのまま廃車まで使えれば良いのに~と思われる方も多いと思います。

 また、フロントタイヤとリアタイヤでの減り方が違うため、ローテーションが必要だったり、タイヤメーカー、パターン、サイズでの違い、車両やドライバーさんの運転によってもタイヤの減り方は変わってきます。

 タイヤはゴムの摩擦力を利用しているので、地球上でタイヤを使用すれば必ずすり減って行きます。この事実は我々が生きているうちは変わらないと思います。

 しかし、タイヤはどうしてすり減るのかを考えることは、タイヤの上手な使用法の参考になります。

摩耗の原因

 タイヤの摩耗はミクロの世界でタイヤの接地部分(トレッド部分)と路面の突起物が衝突し、粒子の離脱現象が繰り返されることで進行していきます。

 そこでタイヤの摩耗に影響する要素が7つございます。

1.空気圧
2.荷重
3.速度
4.カーブ
5.ブレーキ
6.路面
7.季節・使用期間

 まず「空気圧」ですが、規定圧より低くなるとトレッド部分の動きが大きくなる事で摩耗が促進されます。

 タイヤに充填する規定圧はそのタイヤの性能が最大となる空気圧なんですね。規定の空気圧でタイヤを路面に押し付けることで、駆動力や制動力を最大限に発揮し、カーブでの横方向からの入力に対しては最小のスリップ、最小のトレッドの動きとなります。

 低い空気圧になると本来空気で支えてる荷重がタイヤ本体の負担となり、無駄なタイヤの撓みからトレッド部分の動きが大きくなり摩耗が進みます。なので摩耗のを抑えるためには、適正な空気圧を維持しましょう。

 「荷重」はトラックでいうなら積載量です。空気圧と似た理由なんですが、荷重が大きければタイヤの撓みの影響からトレッドの動きが大きくなり摩耗が促進されます。

 勿論、「速度」が速くても摩耗は促進されます。また、走行中のタイヤの撓みである屈曲運動が熱を生むのも摩耗の原因の一つとなります。

 クルマが曲がる時は、曲げる方向へタイヤの向きを変えます。クルマにはハンドルを切った方向とは逆に遠心力がかかっており、そのままでは行きたい方向には進みません。

 クルマを進みたい方向へ進めるには、タイヤと路面との摩擦により向心力を生み出す必要があります。このときの摩擦力は直進時よりも大きな力ですので「カーブ」が多いと摩耗も促進されます。

 タイヤは駆動力だけではなく制動力も伝えています。クルマの運動エネルギーは車速の2乗に比例しますが、そのエネルギーをタイヤは路面に伝えて減速もしくは停止させるのですから、「ブレーキ」を頻繁に使えばタイヤの摩耗は促進されます。

 「路面」と「季節」はイメージ通りですね。荒い路面、未舗装路、砂利道、荒い舗装路は減りが早く、滑らかな舗装路やコンクリートは摩耗しにくい傾向です。ゴムは熱に弱いので外気温や路面温度が高くなる夏のほうが摩耗が進行しやすい傾向にあります。

熱と摩耗の関係

 タイヤの摩耗と熱は密接な関係にあります。

 走行によりタイヤは発熱します。これは接地面での屈伸運動により発生するモノですが、運動量が多くなれば熱の発生も多くなります。タイヤの撓みの量が大きく、回数が増えれば熱も増えます。

 ここでもやはり空気圧、荷重、速度が関わってきます。空気圧が低いと当然撓みが増え運動量が大きくなり発熱が促進され、同じ理由で荷重が大きいとタイヤの撓みも増しますので運動量が増え、熱も上昇します。

 速度が上がると一定時間内で回転数が多くなり接地回数が多くなる為、タイヤの温度も上昇します。

 その他に発熱に関しては溝の深さも関係します。溝が深いとトレッドのゴムの歪みが大きく、これも運動量の増加に当たるので発熱が増えます。また溝が深いということはトレッドのゴムの量も多いため、発生した熱が発散され難く、ゴムの中に蓄熱される要因も加算されます。

 タイヤの基本構造(バイアス構造とラジアル構造)によっても発熱量は変わってきますが、今は乗用車、トラック、バスともにほぼラジアルタイヤを装着していますので、違いを意識する必要はないかと思います。
(ラジアル構造のほうが内部の骨格部分の三角トラス効果によりトレッドの動きが小さくなるため、バイアス構造より熱の発生を抑えられます)。

 いずれにしても、タイヤの摩耗を抑えてライフを伸ばし、最後まできっちり使い切るためには、故障の原因の一つである発熱を抑える必要があります。トラックの積載量や制限速度は決まっているので、ドライバーさんが個人でできる対策として重要なのが空気圧管理です。

 日々の運行前点検に加えて、月に1度程度でいいので冷えた状態のタイヤ内圧を、エアゲージを使ってチェックしてみてください。タイヤの熱と摩耗を抑えてトラックのパフォーマンスを最大限に発揮するため、タイヤの空気圧管理をお願いします。

投稿 タイヤはどのようにすり減っていくのか? トラックのタイヤ管理に欠かせない「摩耗」の基礎知識自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。