今や軽自動車までもがハイブリッドが当たり前になりつつある。なんといっても燃費の良さが最大の魅力であり、一度味わったら離れられないなんて声もあるほど。
でも、超単純な疑問だが、ハイエースやキャラバンといった職人さんが使うこの手のクルマにはなんでハイブリッドモデルが存在しないのか!? 毎日相当な距離を走る故、燃料代もバカにならないと思うが、その理由はなんだ!?
文/小鮒康一、写真/TOYOTA、NISSAN
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■ハイブリッドの魅力はやっぱ燃費の良さ! 価格も手ごろで当たり前の存在に
もはや特別な存在でもなんでもなく、すっかり選択肢のひとつというレベルにまで世間に馴染んだ感のあるハイブリッド車。そんなハイブリッド車のメリットは数多く存在するが、やはり多くのユーザーが魅力に感じているのはその燃費性能ではないだろうか。
車種によってはガソリン車とハイブリッド車で、カタログ燃費においてリッター10km以上差があるケースもあるため、いくらハイブリッド車がガソリン車よりも高額だとはいえ、魅力的に映るのも当然だろう。
以前はガソリン車との価格差を燃費だけで回収しようとするならば、10万km以上は走行しないといけないというような話もあったが、近年ではガソリン車との価格差も小さくなってきており、コストメリットはさらに大きくなっている。
となれば、“10万km走ってからが本番”と言われるほどタフに使い倒される商用ワンボックスであるハイエースやキャラバンにもハイブリッドモデルが存在していてもいいような気がするが、ご存知の通り現在に至るまでハイブリッドモデルは設定されていないのだ
■プロボックスはプリウス譲りの信頼性! ハイエース&キャラバンは専用ハイブリッドが必要に
同じように働くクルマとして酷使されることが多いプロボックスにはモデル途中でハイブリッドモデルが追加されているのに、その違いはなんなのだろうか?
商用ワンボックスにハイブリッドモデルが設定されない理由、その一番大きなところは信頼性の問題だろう。毎日ゴリゴリと働いてくれる商用車だけに、車両トラブルで数日間稼働できなくなるだけでその損失は計り知れない。
プロボックスに搭載されたハイブリッドシステムは2009年に3代目プリウスに搭載された第3世代のTHS(TOYOTA Hybrid System)であり、初代アクアや11代目のカローラシリーズ、2代目シエンタなど幅広い車種に採用されているため、かなり信頼性もあがっている。
一方、ハイエースにハイブリッドシステムを搭載するとなるとFRレイアウトに対応したものを用意しなければならず、かといってクラウンやレクサスの各車に採用されたFR専用2段変速式リダクション機構付のものを搭載するのはコスト面でもクルマのキャラクター面でもマッチしないことは容易に想像がつくだろう。
そしてプリウスなどに搭載される乗用車向けのハイブリッドは、街中でのストップ&ゴーなど燃費悪化に繋がるシーンではモーターで駆動し、速度が乗ってきたところでエンジンとモーターを併用して走行するスプリット式を採用している。
しかし、これは重い荷物を積んだ状態で走行することが多い商用ワンボックスには不向きなシステム。この点も、そのまま流用することが難しい理由のひとつとなっている。
また商用ワンボックスを使用するユーザーは、個人で仕事を請け負っている職人さんや小規模な業態のところも少なくない。
いくら燃料コストが抑えられたとしても、初期投資の額が大きくなるハイブリッド車はなかなか購入のハードルが高く、それだけ予算を拡大するのであれば力強く信頼性も高いディーゼルモデルを選択するというのが現実ではないだろうか。
■荷室スペースの圧迫も死活問題! やっぱりハイエースハイブリッド登場は遠い未来か!?
商用ワンボックスカーにおいては、ハイブリッド化によって荷室スペースが減少してしまうのも由々しき問題となる。
前述のプロボックスではハイブリッド化によってエンジンルーム内に補器用バッテリーを搭載することができなくなったため、荷室左側にバッテリーが移設されているのだが、これによって荷室スペースがわずかながら減少してしまっているのだ。
そしてハイブリッド車ではマストで必要となる駆動用のバッテリーもプロボックスではリアシート下になんとか押し込んでいるものの、そもそも荷室がフラットなハイエースやキャラバンなどではシート下に押し込むことも難しいし、FRレイアウトでプロペラシャフトが存在しているためにフロア下への設置も難しくなってしまうだろう。
またハイブリッドシステムを搭載したことによって車両重量が上がると、最大積載量が減少するというデメリットも無視できないポイントなのだ。
このように現段階でハイエースやキャラバンにハイブリッドモデルが存在しない理由は、メリットよりもデメリットの方が多いということに尽きる。
とはいえそもそも電動化を見越した設計がされていなかったがためにデメリットが多いということもあるので、来たる電動化の時代に向けてリリースされるであろう新型には、こういったデメリットを払拭したハイブリッドモデルが追加される可能性は大いにあるだろう。
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