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 伝説のクルママンガ『頭文字D』の意思を現代に受け継ぐ新世代のクルママンガ、『MFゴースト』。2017年の連載開始時から圧倒的な読者人気を獲得しており、14巻発売時点の現在で、ついに単行本累計発行部数350万部を突破している。

 当連載では、作品内で繰り広げられるガソリン車のレース『MFG』で活躍するドライバーや、主人公・片桐夏向の周囲を取り巻く人々など、魅力あふれる登場人物たちの人となりを分析し、そのキャラクターや人物像を明らかにしていく。

 今回は、いよいよ『頭文字D』屈指の人気キャラクター、高橋啓介を取り上げる。現在どんなことをしているのか、兄がつくりあげたMFGとはどう関わっているのか? 歳を取ってダンディーになった啓介の今を探る。

文/安藤修也
マンガ/しげの秀一


■”イケオジ”になった中年・啓介の現在の姿!

 『MFゴースト』第1話から謎の人物として名前が出てくる「リョウ・タカハシ」。MFGの「エグゼクティブオーガナイザー」という立場以外、明かされておらず、年齢も経歴もすべて不明だという。しかし『頭文字D』の熱心な読者であれば、この人物が高橋涼介だとすぐにわかったはず。そして、涼介の顔を思い浮かべると同時に、多くの読者の頭の中によぎったキャラクターは、きっと高橋啓介に違いない。

 『MFゴースト』を読み進めていると、この作品が『頭文字D』と時間的なものを共有していることに気づく。そして、当時のキラ星の如き人気キャラたちが、すこしずつその名前と姿を現して、再開に感動を覚えることになる。当然、ファンとしては、藤原拓海、高橋涼介、そして高橋啓介らスターキャラの登場に期待して心を膨らませてしまう。

 が、その場面は突然訪れる。第40話「重大な欠点」で、高橋啓介が現在の姿を現わすのだ。肩書きは、「TKマッハコーポレーション代表取締役」。あのヤンチャな若者が社長になったのだと思うと感慨深い(年長者目線)。若かりし頃と変わらず、鋭い目つきのイケメンで(少し頬がこえているようにも見える)、相変わらずスリムな体型でスーツもよく似合っている。当時と異なるのは、アゴヒゲを蓄えたことや髪をすこし今風に遊ばせているあたりか。

 登場した場所は「神奈川県横浜市」で、背景絵から推測するに、どうやらこの会社は横浜ランドマークタワーにオフィスを構えていると思われる。やはり『頭文字D』から登場している同社不動産部門チーフのケンタ(中村賢太)との会話で、「ファクトリー」、「パーツの開発」というワードが出てきているので、社業はカーパーツメーカーのようだ。しかし「収益の柱は今や不動産」とも啓介が言っており、多角的な事業を展開していると思われる。

■MFG「デモ走行の怪」その正体は……

 作中では「プロジェクトDの進化系がMFG、公道最速理論の解答編」という高橋涼介の言葉が語られている。実際に、涼介がMFGのレギュレーションを作り上げたようだが、弟でありプロジェクトD中心メンバーだった啓介はMFGにどう絡んでいるのかといえば、ケンタとの会話のなかで、啓介自身「オレのデモ(模範)走行を~」と発言している。

 MFG公式サイトにアップされているデモ(模範)走行動画は、4年前、つまりMFG開催のタイミングで公開されたようだが、3年目の最終戦までそのタイムをやぶったドライバーがいなかったため、MFGフリークの間では「デモ(模範)走行の怪」と呼ばれていた……。それが誰のドライビングなのかは発表されておらず、車種も「今はもう街中で見かけることも無くなったクラシックカー」、「黄色いボディカラーの……なんとかセブン……」と謎が多かったためだ。

 しかし、「黄色のなんとかセブン」と聞けば、賢明な読者なら、すぐに高橋啓介のRX-7のことだと気づいたに違いない。つまり、MFGのスタートにあわせて啓介がコース選定やデモラン映像制作にドライバーとして参加していたという事実が判明し、同時に、年を重ねた今でも啓介の腕は鈍っておらず、一級品のままだということがわかる。ファン感涙のファクトである。

■弟子に受け継がれた公道最速理論と群馬プライド

 ラウンド2「芦ノ湖GT」の中盤では、夏向の走りを画面超しで眺めながら、いよいよ啓介が公道最速理論についても言及する。また、藤原拓海から片桐夏向へ継承された同理論に対して、「こっちもくり出すけどな……とっておきの一撃を」と、夏向に対抗措置をとることを口にする。

 そして、芦ノ湖GT終盤、啓介がオフィスから兄である涼介に電話する風景が見られる。ここで、「次からエントリーさせるぜ……」と、自身が育成したドライバー、諸星瀬名のMFG投入を宣言。つまりこの構図は、藤原拓海と高橋啓介の代理戦争である! ファン心理としては、もうこれだけで鼓動が高鳴るというもの。ちなみに、この後のケンタとの会話ではこっそり「(藤原は)ド天然」とも発言している(笑)。

 そして同電話中、「盆には高崎帰るよ」「ゆっくりメシでも食おうぜ……」などと世間話までしており、これまた高橋兄弟のファンにはたまらないシーンだろう。残念ながら姿を現しているのは啓介だけだが、早く涼介の顔も見たいものだ。

 ラウンド3「ザ・ペニンシュラ」に参戦した諸星瀬名は、いきなり大活躍をみせることになる(詳しくは『人物列伝08 諸星瀬名編』参照)のだが、予選走行時に瀬名はこう発言している。「オレのバックボーンは……群馬プライドだ」、「脈々と流れる公道最速のDNAは、ボス(高橋啓介)からオレへとうけつがれている」と。これは、拓海と啓介の代理戦争の火蓋が切って落とされたことを読者へ伝えるメッセージにもなっている。

 決勝レース中、瀬名が夏向にパスされると、啓介は「いきなり勝てるとは思っちゃいないよ」と余裕の表情。さらに、瀬名の強みは「モンスターじみた吸収力」なのだと。一度MFGを経験させた啓介の愛弟子が、次のラウンド4でどれほどの実力を見せるか期待が高まる瞬間だ。

 ただし、この意地悪な師匠は、夏向の欠点までは弟子に伝えていない。このやり方を聞いたケンタは、「どんどん涼介さんに似てくるな」と心の中で思ったのだが、このあたりもファン心理をくすぐるやりとりである。

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