ハイブリッドドライブを搭載した新型ホンダ シビックの走りはこうだ。内外装ともよりエレガントになり、ハイブリッド専用車として提供される。我々は全情報を把握し新しいシビックを走らせてみた!
市場投入と価格: ベースコストは32,000ユーロ(約450万円)弱
「ホンダ シビック」は、コンパクトカーの中では古株だ。初代は50年前に堂々と発表され、今回、ホンダは11代目の「シビック」の布陣を整えた。先代はどちらかというとスポーティなデザインだったが、今回はエレガントな路線を選択している。
また、ホンダは伝統を破り、当分の間、VTECを搭載せず、代わりにハイブリッドドライブを搭載することにした。2022年秋、新型「シビック」は販売店に並ぶ。価格は上昇し、「エレガンス」トリムの31,900ユーロ(約446万円)から始まり、「スポーツ」が少なくとも33,200ユーロ(約464万円)、「アドバンス」は36,600ユーロ(約512万円)からとなる。
デザイン: 曲線を少なくし、より洗練されたシビックを実現
シビックの世代の違いは、いつも簡単に見分けがつくが、今回も例外ではない。先代はどちらかというとスポーティなデザインだったが、今回の「シビック」ではエレガンスに重点を置いている。全体的に曲線を抑えたスッキリとした現代的なデザインだが、長いボンネットと傾斜したルーフにより、スポーティな印象を与えている。
また、やや角張った新型のヘッドライトによって、キリッとした表情になった。幅の狭いグリルは上下にわずかにオフセットしており、空気供給用のハニカム形状のアウトレットを備えたマットブラックのマスクで閉じられている。そして、新しいエプロンでは、エアインテークが中央にスマートにまとめられている。
フロントエプロンの側面のエレメントは装飾用だ。閉じていて、フォグランプが収納されている。サイドミラーの位置が新しくなったのは、安全性を考慮したためだ。フロントドアに搭載されるようになり、死角を減らすことが目的だ。
ルーフスポイラーとウイングを取り外して、リアエンドはおとなしくなった
リアエンドは先代よりもさらにクーペらしくなったが、野暮ったさもなくなった。ルーフエッジのスポイラーとテールゲートのウイングは省略されている。その代わり、トランクリッドに小さなティアオフエッジが設けられている。リアライトの形状は、新型シビックではよりクラシカルになったが、C型ライト形状の特徴はそのまま残している。
3つ目のブレーキランプの位置は、リアランプの間にあるのが面白い。そのため、ブレーキング時には、ほぼ連続的にLEDの帯が光る。一段低いエプロンも目立つデザインとなっている。目を引くディフューザーで、スポーティな印象も残している。
サイズ: 全長とホイールベースを拡大したコンパクト
寸法をざっと見たところ。新型シビックは、先代モデルより31mm長くなっている。ホイールベースも35mm長くなり、プロポーションも変更された。車高は20mm低くなり、車幅はほとんど変わっていない。
【サイズ一覧】
• 全長: 4549mm(+31mm)
• 全幅: 1802mm(+1mm)
• 全高: 1415mm(-20mm)
• ホイールベース: 2732mm(+35mm)
• ラゲッジコンパートメント容量: 410~1220リットル
ドライブ: 新型ハイブリッドシビックのファーストラップ(アップデート情報!)
先代モデルの耐久テストにおいて「ホンダ シビック」は問題が多かった。ハンドリングは複雑で、シャシーは硬すぎ、CVTトランスミッションのおかげで、高速道路ではエンジンの音がうるさい。それが、第11世代では改善されたのだ。まず、その寸法だ。全長は4.55メートルと先代モデルより長くなり、後席乗員の足元がすっきりとした。
最高級グレードの「アドバンス」に標準装備されるサンルーフだけは、背の高い人にとってヘッドルームがやや狭くなる。ラゲッジルームは使いやすい410リットルを確保している。また、新しい広さは、特にフロントで顕著だ。シビックは全幅1802mmとそれほど広くないものの、第11世代はワンクラス上の広さと質感を感じさせる。
正確なステアリングと高いドライビングコンフォート
操作系はよく整理され、ステアリングホイールの大きなボタンは運転中でも直感的に操作することができる。またノズルをダッシュパネルの後ろに隠した高度な換気システムにより、快適なエアーフローによる環境を実現している。
ディーゼル、小型ガソリンエンジン、ターボ・・・。新しい「シビック」ではそれらがすべてなくなり、ハイブリッド一本に置き換わった。141馬力の2リッターガソリンエンジンは2列目に移動し、電動モーターは発電機としてのみ機能する。これは、実際に使ってみると、とても効果的だ。
無意識のうちにリニアに力を発揮する。急にパワーを要求されたときの大きな唸りは、もう過去のものだ。CVTにありがちな、盛り上がりに欠けるエンジンの回転音を防ぐため、人工的なシフトポイントを設けている。ステアリングはしっかりと正確で、乗り心地の良さも驚くほど高い。
これは、走行ノイズの低さと、サスペンションのコンプライアンスに起因するもので、快適なオールラウンダーだ。
インテリア: ホンダの内部はまったく異なる印象
外見だけでなく、内装も今までの「シビック」とはまったく違うものになっている。先代ではドライバーを中心にすべてがまとめられていたが、新しいホリゾンタルデザインによって、空間の風通しがよくなることは間違いない。インフォテインメントスクリーンが搭載され、7インチから9インチに大きくなった。その背後には、最新のホンダのソフトウェアが動作している。
最初に試したときに、直感的に操作でき、システムもすぐに使えた。左端にはホームボタンなどの重要なボタンが配置され、ここには音量調節のためのボタンもある。AppleのiPhoneはワイヤレスで、Androidの携帯電話はケーブルでペアリングすることができるようになっている。
デジタルスピードメーターは10.25インチに大型化
「シビック」は、デジタルスピードメーターを継承し、10.25インチに拡大した。10代目では、この部分を3分割し、中央にほぼ正方形のディスプレイ、左右に燃料残量と冷却水温のディスプレイを配置していたが、新型はよりオーソドックスなデザインになっている。ディスプレイはより長方形に、他の2つのインジケータはより小さく、端に目立たないようにしている。
ホンダは、よりエレガントなラインを内部に継続している。素材だけでなく、中央画面下の新しいクライメートコントロールユニットも、より高級な印象を与えるようになった。温度調節はこれまで通り、直接コントロールできるロータリーダイヤルで行い、温度表示ももちろんデジタルだ。
オートマチックトランスミッションのギアセレクターだけが、なかなか追いつかない。シビックでは、ボタンでギアを選択するようになっている。このボタンが大きすぎるだけでなく、他のインテリアに比べて少し素っ気ない印象がある。
後方では、ルーフの形状から1.80m以上の人には若干窮屈
ホンダは、フロントのスポーティで低い着座位置(このクラスでは異例なほどだ)を維持している。フロントシートは快適な座り心地で、電動で調節可能なフル装備のシートといえる。後席は少し高めで、背もたれの角度も快適で、張地も快適だ。膝にも十分な余裕がある。
身長1.65mなら文句はないが、1.80mからここが少しきつくなる。ラゲッジルームは410リットル、アドバンスタイプは404リットルだ。リアシートを倒せば、シビックは最大1,220リットルの容量を確保することができるようになっている。
装備: 渋滞アシスト機能の改良で操舵も可能に
ホンダは、「シビック」の電子デバイスのよるアシストシステムを改良した。フロントには新たに100度の広角カメラを搭載し、歩行者や自転車だけでなく、車線や境界線も認識できるようになっている。
これも、トラフィックジャムアシスタントがアクセルとブレーキだけでなく、ステアリングもアシストできるようになった理由のひとつだ。改良されたパーキングアシスタントは、バックで駐車する際に、ブラインドスポット警告システムの情報を使って、駐車スペースの横から接近してくる車両を警告する。
エンジン: VTECからハイブリッド駆動に変更された新世代エンジン
当面は、VTECバルブタイミングを搭載した新世代は用意されない。その代わり、ホンダは、小型車「ジャズ」やSUV「HR-V」に採用されている、従来にないハイブリッド駆動をコンパクトモデルにも搭載するようになった。
システムは2基の電動モーターとガソリンエンジンで構成され、シビックの場合、燃焼エンジンは141馬力の2リッターアトキンソン直噴エンジンである。
ホンダのハイブリッドドライブは、以下のような仕組みになっている。ゆっくり走るときは、135kW(184馬力)、315Nmのトルクを持つ電動モーターが推進力を発揮する。スピードを上げれば、レンジエクステンダーのようにガソリンエンジンが始動し、もうひとつの電動モーターで第1電動モーターの電気を発電する。
高速走行時には、ガソリンエンジンのみが推進力を担う。最高速度は180km/hだ。他のハイブリッドドライブとは対照的に、電気モーターと内燃エンジンは駆動軸上で動力を共有することはない。
シビック タイプRは、最後の純燃焼エンジンになるかもしれない
ホンダは、まだVTECエンジンを完全に見切ったわけではない。11代目もスポーティな「タイプR」が登場するが、先代の2リッターエンジンを踏襲し、ホンダ最後の純燃焼エンジンとなる可能性も十分ある。しかし、ここでもホンダはハイブリッド駆動を選択することが可能だろう。すでに、マニュアルトランスミッションが再び採用されることが発表されている。
結論:
我々は新型シビックに好感を抱いているが、正直言って、リアよりフロントの方が快適だ。そして、ハイブリッドに切り替わったことで、当然ながらVTECの時代も終わりを告げようとしている。しかし、願わくば、我々のような懐古主義者を拾い上げるような、「タイプR」がまた出てきてほしいものだ。しかし、「タイプR」がもし登場しなかったとしても、新世代のシビックは絶対に成功し、現代的で、以前よりずっとエレガントなシビックとなるはずだ。それほどの実力なのである。
【ABJのコメント】
今度の「シビック」は本当に評価が高い。日本の老舗自動車総合誌でも年間ベストワンに選ばれるほどの一台で、実車を見ると確かに質感の高さなどがひしひしと伝わってくるし、乗ってみてもものすごく完成の高い自動車らしい。アメリカでもその評価はゆるぎなく、世界的に好評に売り上げが推移している。残念ながら日本とヨーロッパを除いて、らしいが。
というのも今回の「シビック」、価格がかなり高いことが特に日本ではネックになっているらしく、それは昨今のホンダのどの車にもいえるのだが、ライバル車と比べると明らかに高価格である。もちろんいいものは高いし、安く売ることだけが正義ではないが、このクラスの顧客は、やはり価格には敏感であることは言うまでもないし、ホンダの普通車不調の原因は自動車そのものではなく、マーケティングにあるような気がしてならないのは残念なことである。本当に安く売ることだけが正しいことではないが、「シビック」らしいということであれば、だれもが手を伸ばしたくなる価格であることが、その名前にふさわしいのではないか、と初代「シビック」が我が家の自家用車であったおじさんとしては思うのである。(KO)
Text: Katharina Berndt and Sebastian Friemel
加筆: 大林晃平
Photo: Honda