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「今の時代、おっさんはどんなクルマに乗るべきか?」

 いやもちろん、どんなクルマに乗ったっていいのだが、アナタ(おっさん)が仮にクルマ好きなら、周囲のクルマ好きからどう見られるかを意識するはずだ。そして少なくとも、「シブイなぁ!」とか、「わかってるね~」と思われたい、と願うのではないだろうか? そういう選択を、ワタクシ清水草一が独断で展開いたします!

文/清水草一
写真/ステランティス・ジャパン

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■現行モデルで最終モデルとなる(!?)フレンチセダン

 先日、遠目に見て、ものすごくカッコいいクルマが止まっていた。それは黒いステーションワゴンだったが、ボディはワイド&ローで実にスタイリッシュ。しかも「ワル」な雰囲気をプンプンさせていた。

 ボディが黒の上に、テールランプまで(光らない状態では)黒なので、一瞬車種がわからなかったが、近づいて見たら、それはプジョー508 SW(現行モデル)だった! 私は内心、「ヒエー、508SWってこんなにカッコよかったのか!」と舌を巻いた。

プジョーのフラッグシップモデルで現行型で2代目モデルとなる508は、2019年に日本発売を開始した

 プジョー 508は、BMW 3シリーズやメルセデスベンツ Cクラスと同じDセグメントに属するアッパーミドルセダン/ステーションワゴンだ。このクラスはドイツ御三家が圧倒的に強く、クラウンを筆頭とする国産セダンも続々と戦線離脱しつつあるが、フランスでも状況は同じ。

  現行型のプジョー 508は、「ファストバック」を名乗るスポーティな5ドアハッチバックスタイルに転換し、SWもシュッとしたスポーティなフォルムにすることで、生き残りを図っている。それでも販売状況は全世界的にあまり芳しくなく、508は、セダン/ステーションワゴンとしては、現行モデルが最後になる可能性もある。

 しかし、そんなこととは無関係に、508のカッコよさは光っていると思わないか? BMW 3シリーズやメルセデス・ベンツ Cクラスやアウディ A4よりも、イケてるように見えないか!?

■デザインの魅力は大胆不敵な”ワル感”にあり!

 特筆すべきは、508が持つワル感だ。セダン/ステーションワゴンで、ワルな雰囲気を持つモデルは、いつの間にか激減している。ワルな雰囲気は、主に速そうでスカしたデザインによって生み出されるが、セダン/ステーションワゴンのユーザーの高齢化もあり、ワル感よりもゆったりした居住性を求めるユーザーが増えているのだ。

 国産車では、かつてはスカイラインやセドリック/グロリアにワルな雰囲気があったが、セドグロは消滅してフーガになり、完全にオッサン化。スカイラインもミニフーガ化し、ワルというよりデブ……と言ったら言い過ぎですが、なんとなく中年太りして丸くなったイメージだ。しかしプジョー508は違う! 今でも速そうにスカしている! だからボディカラーによっては、猛烈にワルっぽく見えるのだ!

 われわれおっさん世代は、若い頃、誰しもワルに憧れた。地方ではツッパらなければモテなかったし、暴走族も全盛を誇った。ワルぶることは、若者の必須項目ですらあった。おっさんになってからも、「ちょいワル」なる流行語の対象となった。あれはワルへの郷愁。かつてワルに憧れたからこそ、郷愁が生まれたのだ。

 今はどうだ。ワルはいったいどこへ行った? ツッパリや不良は消滅寸前、暴走族も同様だ。今でもたまにバイクで暴走するのは、おっさんの旧車会だったりする。ヤクザは警察に壊滅させられ、地下に潜って半グレ化。一見善良であるように装うようになった。昔のヤクザ映画のような「見るからにワル」は、人もクルマも激減しているのだ!

 が、プジョー508は、ワルを忘れたおっさんに、ワルのカッコよさを思い出させてくれる。あくまで雰囲気だけで悪事を働くわけではないですが、508を見ると、ワルっぽいルックスへの憧れがよみがえる!

 フロントマスクを細かく見ると、左右の「頬髭」のようなポジションランプが、モミアゲみたいでワルだ。昭和世代としては、尾崎紀世彦を思い出す。シャープな目付きは松田優作か。なんじゃこりゃぁ! と叫びたくなる。

アグレッシブなフロントデザイン。ライトからバンパーにかけてLEDデイタイムランニングライトが垂直に通っている

 ディメンションは、見た目どおりのワイド&ロー。ファストバックで全長4750×全幅1860×全高1420mmとなっている。

 ライバルたるBMW 3シリーズセダンは、全長4715mm×全幅1825×全高1435mm。508は3シリーズに比べ、幅が広く全高が低い。特に1860mmの全幅が効いている。

 このあたりの数値は、10mm違うとかなり雰囲気が変わってくるが、508は3シリーズより全幅で35mm広く、全高で15mm低いのだから、3シリーズがおっさんに見えるくらいワイド&ロー。実にスカしたプロポーションだ。

■ダイナミックさとしなやかさを備えた走り

プジョー初となる電子制御アクティブサスペンションを搭載し、より高いレベルの乗り心地とハンドリングを実現した

 走りは羽毛のように軽い。特にノーズの軽い1.6Lガソリンエンジン搭載モデルは、アクセルもブレーキもステアリングも身のこなしもウルトラ軽快で、ハンドルをちょっと切ればバビッと向きが変わり、アクセルをちょい踏めば無駄なほど激しく加速する。筋力の衰えたおっさんも、508に乗れば筋肉増強剤でスーパーマンになったような錯覚を得られる! 

 乗り心地はフランス車っぽくしなやかで印象抜群。2.0Lディーゼルはガソリンに比べると動きが重いが、ロングドライブでの燃費は魅力的だ。

 インテリアがまたスカしまくりだ。小径の楕円ハンドルとアッパーメーターの組み合わせは、未来的でカッコイイ! センターコンソールにはピアノの鍵盤みたいなスイッチがズラリと並び、ピアニスト気分になれる。もしもピアノが弾けたなら……と悔やんでいるおっさんも、願望を満たすことができる。

 フランス車は、ACCや自動ブレーキなどの先進安全装備の装着が遅れていたが、508はその点も問題なし。しっかり日独勢に追いついている。

 このプジョー508、日本導入当時は417万円という廉価バージョンもあり、価格的にも非常に魅力的だった。不人気(のはず)なフランス製セダンゆえ、中古価格の下落も期待できたから、「3年後には、中古車が100万円台狙えそう!」と思ったものだ。

 この予想は大ハズレだった。約3年後の現在も、508の中古車相場は高止まりしていて300万円を切るタマはごくわずか。1.6Lガソリンでギリギリ300万円強、ディーゼルだと350万円というところだ。ひょっとして、ワルに憧れるおっさん効果だろうか……。いずれにせよこれは、508が魅力的であることの証明だ。

 508に乗れば、ワルなカッコいいおっさんになれる! 1860mmの全幅が心配? 大丈夫! 乗れば1800mmも1860mmも大して変わりないから! おっさんはプジョー508に乗ってワルになれ!

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