もっと詳しく

 2022年F1第11戦オーストリアGPで各チームが走らせたマシンを、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが観察し、印象に残った点などについて解説。今回は、フェラーリが決勝日に見せた速さを分析する。

────────────────────────────────

 日曜日の決勝レースの大本命は、マックス・フェルスタッペンだった。初日予選でポールポジション、そして二日目のスプリントを制したレッドブルRB18は、フロア入り口に変更を加え、いっそうの速さを発揮していた(下の写真参照)。

レッドブルRB18のフロアフェンス比較(一番上がオーストリア仕様)
レッドブルRB18のフロアフェンス比較(一番上がオーストリア仕様)

 ただしレッドブルリンクはリヤタイヤに厳しい、いわゆるリヤリミテッドサーキットである(末尾の解説参照)。そして日曜日の朝に降った雨で路面のラバーが洗われ、土曜日よりも冷え込んだこのコースで、レッドブルのリヤタイヤは予想以上にデグラデーションに悩まされた。

 一方で、カナダで導入された空力効率に優れるリヤウイングを装着したフェラーリは、直線区間でレッドブルに勝るとも劣らない速さを見せた。わずかに遅れたのは(数km/h)、ストレートエンドでの最高速だけだった(フェラーリはコーナー立ち上がりの加速を重視しており、レッドブルはターボのおかげでストレート後半の伸びに優れる)。

フェラーリF1-75のリヤウイング比較
フェラーリF1-75のリヤウイング比較

「トップスピードでレッドブルより不利だったのは、主に彼らのDRSの効果によるものだった」とフェラーリのマッティア・ビノット代表は分析する。「我々は新しいリヤウイングで対応し、直線スピードの不足を解消した。今やレッドブルのアドバンテージは、ほんのわずかだよ」

 フェラーリとレッドブルの力関係は、シーズン開幕以来変化してきた。その片鱗はすでに5月のスペインGPで確認済みで、F1-75はRB18よりもタイヤを均等に消耗していた。マラネロのエンジニアたちは、予選よりも決勝のセットアップを優先したのだろう。

 バーレーンやモナコなど、他のリヤリミテッドサーキットでも、フェラーリは最速を記録した。直線で劣ることなく、レッドブルと同等の速さを発揮しながらも、リヤタイヤをそれほど消耗させない。シャルル・ルクレールやカルロス・サインツも2回のピットストップを行ったが、ずっと余裕を持っていた。

註:フロントリミテッド/リヤリミテッドサーキットとは?

 この違いは、サーキット特性、より具体的には最もラップタイムを稼げる場所に関係している。

 ヘアピンやタイトなコーナーが多く、高速コーナーが少ないサーキットはリヤリミテッドに分類され、速く走るためにはコーナー出口でリヤのグリップを多く確保する必要がある。オーストリア、バーレーン、カナダが典型的で、リヤエンドが強力でなければ(安定性だけでなく、タイヤを過熱させない能力も)、快適に走れない。

 一方で長く、速く、半径の大きいコーナーがあり、トラクションを必要とするタイトコーナーがあまりないサーキットでは、フロントタイヤに厳しい。このタイプに分類されるのがハンガロリング、イスタンブール、シルバーストンで、フロントタイヤがオーバーヒートしがちで、コーナー進入でグリップを失いやすくなる。