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 ウクライナ侵攻の影響や、アメリカの干ばつによる穀物の不作で、小麦粉などの価格が大きく高騰、生活必需品の値段がどんどん上がっている。

 これまで10円を守り続けてきたヒット商品、うまい棒も2022年4月1日から12円に値上がりしている。そんな各業界が値上げに踏み切る中、自動車業界でも材料費の上昇や円安などの影響で、特に輸入車は年々価格が上がっている。

 国産車では大幅に価格が上昇したという話はまだないが、このままであれば一部改良などに合わせて価格を上げるメーカーも出てくるのではないだろうか。

 なぜ自動車メーカーは値上げを迫られることになっているのか? そして、値上がりするのはいつから、いくらくらいなのか? 消費者に直結する大きなこの問題について深掘りしていく。

文/国沢光宏
写真/Adobestock(トップ画像 Nomad_Soul@Adobestock)

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■価格上昇は不可避! 材料費高騰が止まらない

 新車の値上げ時期がジワジワ近づいてきた。材料や原料、部品調達価格の上昇により自動車の精算コストは上がり続けている。

 例えば主材料の鋼材。自動車の重量の60~70%が鋼材だという。1400kgのクルマだったら1トンということ。その鋼材、直近の2年で1トンあたり4万円程度値上がりしている。年内を目処とし、さらに1トンあたり4万円近く値上げするという。

 値上がり要因は皆さん考えているよりはるかに多い。大半の材料や原料を海外から調達しているタイヤは10%の値上げを実施済み。触媒に使われるパラジウムは今や白金や金より高騰しており、1台当たり1万円近い値上がり要因になるという。しかも直近の円安により(105円から135円と30%もの値上がり要因になる、海外から調達する部品は値上がりしなくてもコスト高に。

自動車は鋼材以外にも、さまざまな材料が使われているため値上げ要因が多い。特に電動車はさらにコストが上がる(Golf_MHNK@Adobestock)

 ハイブリッドに代表される電動化車両の調達コストも急騰中。モーターに使われる希土類(レアアース)は世界規模で供給不足になっており、調達価格が上がっている。

 電池に使うリチウムやニッケルの価格は下がる気配なし。原油価格の上昇により樹脂類の製造コストまで上がってしまった。その上で慢性的に続く半導体不足にトドメを刺される。もはや大幅値上げは避けられない状況だ。

■国産メーカーも秋から値上げの可能性あり! 一体どうなる!?

 そんな中、早くもドンドン値上げをしているのがテスラ。普通の自動車メーカーはイヤーモデルや年次改良、マイナーチェンジといったタイミングでしか値上げをしない。部品などの調達価格は数カ月から1年単位で決めているからだ。

 そういった”常識”を持っていないテスラの場合、調達価格上がったらすぐ値上げする傾向。アメリカ国内での値上げ、2022年に入って3回目である!

 結果、モデル3で2500ドル(約34万円)高くなった。何の変更もなしで34万円の値上げは自動車業界じゃ異例のこと。とはいえ普通の自動車メーカーも2022年の秋から値上げを避けられない状況になってきた。

大手自動車メーカーといは異なる独自の戦略をとるテスラ。自動車ではなく電化製品に近い考え方のため、値上げも躊躇しない(Bjorn Wylezich@Adobestock)

 部品調達価格の上昇を反映しなければならないためだ。繰り返しになるけれど、車重1400kgのクルマだとすでに鋼材だけで8万円の値上げをしなければならない。

 そのほかの値上げを考えると、車両価格100万円あたり3~5万円前後といったイメージか。300万円のクルマで9~15万円の値上げということに。部品高騰率の高い電動化車両だとさらなる上乗せもあり得る。

 値上げのタイミングとしては、イヤーモデルか年次改良だ。すなわち2022年の9月あたりから、続々と「うわっ!」と感じるような価格を発表してくると考えていいだろう。

 困ったことに消費者としちゃ「受け入れられない」という選択肢はない。なぜか? すでに部品不足により生産台数が大幅に減少しており、納期半年なら上等。納期1年という車種まで続出している。すでに欲しくても買えない状況だ。自動車メーカーとしては値上げしない理由なし。もちろん売れ行きを落とす車種もあるだろうけれど(売れないクルマは値上げ幅を抑える?)、値上げ断行です。

 実際、すでに値上げ前提で商談しているケースが多数出てきた。一方、半年程度先に納車予定のクルマであれば、契約した時の価格で買えると考えていい。5%の値上がりだったら、値引き対応で吸収できるからだ。利幅を少し減らすだけで対応可能。また、値引きしなくても売れる車種が増えてきており、これまた値引きしたと思えばなんとか利益を上げられる。

 ただ1年先の納車とか、マイナーチェンジが控えている車種になるとそうもいかない。好例がトヨタ ランドクルーザー300。現時点での納期は4年となっており、当然ながら途中で年次改良を行う。そればかりかさらに大きい変更を受けるマイナーチェンジもはさむ可能性大。こうなると装備内容やオプション内容まで変わってくるため、現在の価格と大きく違ってくることだろう。

 そういった車種については、すでに「1台買います」くらいの契約しかできなくなっているそうな。トヨタのWebの『納期情報』を見ると、異常事態具合がよ~くわかる。驚くことに「詳しくは販売店に聞いて下さい」がズラリと並ぶ。こんなこと、今まで一度もなかった。当該車種についちゃ値上がり確実だと認識して間違いなし。待っていたらさらに値上がりするから急ぎたい。

 輸入車も日本車とまったく同じ。いや、日本車と違い、すでに値上げが始まっている。日本車と違うのは調達部品に加え、円安による為替分も含まれているから一段と激しい値上げ率になってくるだろう。

 輸入車の購入を考えているなら基本的に在庫車から選び、早めの納車が望ましい。直近1年でクルマを買おうと思っているなら早めに! じゃなければ2年くらい待つことをすすめておく。

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