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 自動車を購入するにあたって、ユーザーは多くの税金を払うことになる。自動車税や重量税などだが、その後も車検のたびに税金を徴収され、さらには使用する燃料に対してガソリン税などを支払うことになる。しかも消費税までかかるので、二重課税(ガソリン税に対しても消費税がかかる)となっている。

 そんな中2022年5月19日に自工会会長を務めるトヨタ自動車の豊田章男社長は「自動車税制の改革」の必要性について語り話題となっている。

「税のあり方も、こうした成長戦略・産業政策の中で腰を据えて見直すべきです。今年は、大局的な視点から自動車税制の見直し議論を深め、何とか道筋をつけたいと思っております」

 ところで新車購入時に支払う「環境性能割」をご存じだろうか? 今回はこの聞きなれない税金について解説しよう。

文/小林敦志、写真/ベストカー編集部

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■新型コロナ対策費は結局増税で賄われる

トヨタ プリウス。EUでは2035年までにハイブリッドが販売できなくなるが、日本ではハイブリッド&プラグインハイブリッドも販売できる

 世界から見ると、化石燃料からのエネルギー転換全般について出遅れているとされているのが日本。

 自動車に限ってみても、2030年代半ばまでに純粋なガソリン車の販売を禁止する方向で動いているようだが、そこにはBEV(バッテリー電気自動車)やFCEV(燃料電池車)など“ゼロエミッション車”以外に、内燃機関を搭載するHEV(ハイブリッド車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)も含まれるものとされている。

 EU(欧州連合)では、2035年までにゼロエミッション車以外の販売を禁止するとしているので、ここでも差がついてしまっている。

 ただアメリカは2030年までに販売される新車の半分をゼロエミッション車にするとしているし、ロシアのウクライナ侵攻により世界的なエネルギー供給体制の見直しが起こっており、EUが予定通りにゼロエミッション車へ移行ができるかも不透明となってきたともいわれている。

 日本に限ってみれば、あと13年ほどは純粋なガソリンエンジンを搭載する新車を購入することができるようなのだが、現状の車両電動化へのスローペースを加速させるべく、政府としては、より環境負荷の低いクルマを優遇する自動車関連諸税の改正や、新たな税金の創設などが今後進んでいくのではないかと販売現場では囁かれている。

 日本政府が新型コロナウイルス対策に使ったお金が2020年度単年度だけで77兆円にのぼるといわれ、世界トップクラスとされる大盤振る舞いとなっている。省庁間での予算の奪い合いも目立ち、単なる“ばらまき”にも終わったともいわれるが、国民に新型コロナウイルスワクチンの無料接種なども実現している。

 しかし、接種を受ける時点で無料であっても、後に増税の嵐が吹き荒れることで実質国民は有償でワクチン接種を行ったことになるというのも“お約束”の話になるのは間違いないとされている。

 東日本大震災の時のように所得税を一律に上げて広く薄く増税していくだけではなく、消費税率の引き上げが行われることも十分考えられる。“環境負荷低減”や“持続可能社会の実現”などを大義名分として新税の設立もあるかもしれない。

■自動車取得税が廃止され環境性能割に

ガソリン車には痛い“環境性能割”。ガソリン車の販売がメインであるトヨタ アルファードだが、影響は少なかったもよう

 そのようななかで狙い撃ちされる確率がかなり高いのが自動車関係諸税である。現状で新車購入時に注文書に計上される自動車関係諸税は、自動車税、自動車重量税、そして環境性能割(自動車税環境性能割)がある。

 “環境性能割”については聞きなれない人もいるかもしれないが、2019年にそれまでの自動車取得税が廃止され環境性能割となっている。

 これは燃費性能に応じ、三輪車以上の小型自動車及び普通自動車(特殊自動車を除く)取得時にかかる税金となる。

 税率は環境負荷低減(燃費基準値達成度などに応じる)レベルに応じて、登録車ならば非課税、1%、2%、3%が設定されている。ちなみに登録車で非課税となるのはPHEV、BEV、FCEVそしてクリーンディーゼル車、2030年度燃費基準85%達成以上車となっている。

 この環境性能割は2021年12月いっぱいまで臨時的軽減措置が行われており、この間は非課税対象車範囲や税率軽減などの拡大が行われていたのだが、ひっそりと2022年1月より通常税率に戻されている。

 ただ、臨時的軽減措置の期間は当初より延長されており、また新型コロナウイルス感染拡大中でもあったので、再び延長されるのではないかとの話もあり、声高に通常税率に戻ることは販売現場でアナウンスしにくいこともあったようだ。

 販売現場では「トヨタ アルファードはガソリン車の販売がメインなので、臨時的軽減措置の廃止は気になりましたね。2021年12月までと2022年1月以降では、納付する環境性能割はそれまでの額に比べ180%ほどに増えました」とセールスマンが話してくれた。

 話が税金なので、単純に「増えた分を値引きアップで」というわけにもいかず通常税率に戻った時には悩んだそうだが、そもそもアルファードは値引き額がかなり拡大していたこともあり、幸いにも販売台数にはそれほど影響はなかったそうである。

■非課税が最新・高性能の目安になる?

日産 セレナ。モデルチェンジを終えたライバルのノア/ヴォクシーとステップワゴンは環境性能割が非課税であるのに対し、モデルチェンジ前のセレナは3万円以上が課税される

 また、5月26日に新型ホンダ ステップワゴンが正式発表されたが、ステップワゴンの属するクラスは、トヨタ ノア&ヴォクシー、日産セレナの3車が激しい販売競争を日々繰り返していることで有名である。

 筆者は3車(ノア、ステップワゴン、セレナ)の見積り(商談メモなど簡易的な試算書)を取ってみた。

 ノアとステップワゴンはHEV、セレナはe-POWER搭載車をセレクトし、オプションなどは限りなく統一したのだが、示された見積り書をみるとノアとステップワゴンは環境性能割が非課税となっているのだが、セレナは環境性能割として3万5500円が計上されていた。

 ノア&ヴォクシーは2022年1月に正式発売されており、ステップワゴンとともに新型となっているのに対し、セレナはフルモデルチェンジを近々控えた末期モデルということもあるので、モデルチェンジすればおそらくセレナも非課税対象になるだろう。

 また新型になったライバル車に比べれば値引き額もかなり大きいので、現状でもたいして気にする必要もないともいえるが、税金だけで約3.5万円も出費が多いことは筆者としても意外なほどインパクトが大きかった。

 つまり、性能が劣るから課税されているという印象が強くなり、納車後の燃料代負担がライバル2車より重くなるのではと漠然な不安も募り、ライバル車へ流れやすくなってしまうのではないかとも考えられる。

 ただし、ノア&ヴォクシー、ステップワゴン、セレナのエアロ仕様での売れ筋グレードでみると、車両本体価格はほぼ横並びでセレナが若干安くなっている。

 現状ではノアで35万円、ステップワゴンで約38万円がガソリン車とHEVで価格差(当然HEVが高い)がある。

 ノア&ヴォクシーやステップワゴンで、「HEVには手が届かないのでガソリン車で」と考えている人にとっては、値引き額の大きいe-POWERセレナは、ノア&ヴォクシーやステップワゴンのガソリン車に近い予算で購入できる電動車となるので、その面では魅力が高いといえよう。

 政府が電動車普及を進めようとしているのだから、これからは純粋なガソリンエンジン車に乗るよりは、何らかの形でモーターが搭載される“電動車”を選び乗っておけば、増税などのリスクも最小限に抑えることができる可能性が高い。

 現状では初度登録から13年を超えると自動車税がアップしているが、電動車へのシフトを加速させるために、13年より早いタイミングで自動車税がアップになるかもしれない。

 そもそも、排気量で区分される自動車税は、これからゼロエミッション車へシフトしていく社会では、いち早く抜本的改正が行われてもおかしくないと考える。

 あまり“税体系を変えよう”と叫ぶと、「それなら」と増税シフトをとられてしまうのがいままでの流れのようにも見える(あくまで例えだが排気量1ℓ未満の登録車の自動車税を引き下げる代わりに軽自動車税は引き上げになってしまうといった感じ)。

 新型コロナウイルス感染拡大対策で政府は“散財(効果的に使われたかはおおいに疑問が残る)”してしまったのだから、今後の増税は避けられない。

 増税の話が出れば真っ先にやり玉にあげられやすいのが自動車関連諸税。日本では“循環型社会”とか、“持続可能な社会の実現”、“地球を救おう”という前に、できるだけ増税の波を被らないためという国民のある意味“自己防衛”という視点で、ゼロエミッション車シフトが加速していくかもしれない。

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