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元陸上自衛隊幹部自衛官という経歴を持ち、いまは民間企業に勤務しながらTwitterなどで心を楽にするコツやライフハックを発信している「わび」さんと「ぱやぱやくん」。“バズる”ツイートを連発している2人に、自衛隊で学んだ仕事術について聞いた。

(前編:『結果を出すよりまず「生き延びる」〜 自衛隊で学んだ弱った心との向き合い方』はこちら)

共に人気ツイッタラーのわびさん(左)、ぱやぱやくん

「結論から言え!」自衛隊の報告術

--陸上自衛隊というと一般的には体力仕事のイメージも強いかと思いますが、幹部の仕事は多岐に渡ります。民間企業に移ったいまも生かされている自衛隊時代の仕事術はありますか。

【ぱやぱやくん】部下から見られているという意識や、しっかりと身なりを整えるというのはいまでも役に立っていますね。自衛官は「誠実な人」というイメージがあるので、その特徴を生かして信頼を勝ち取りやすいと感じています。

【わび】私は陸上自衛隊の教範である「野外幕僚勤務」から学んだことが仕事に生きています。幕僚とは指揮官を補佐する人たちのことを指しますが、特に幕僚活動の4要件である「適時性」「先行性」「並行性」「完全性」の考えをいまも大切にしています。

《幕僚活動の4要件》

適時性:時宜にかなった行動をすること

先行性:先を見通し、前もって準備すること

並行性:様々な組織や関係者と調整しながら同時並行的に仕事を進めること

完全性:緻密で完全な仕事を目指すこと

ぱやぱやくん(右)防衛大学校を卒業し、陸上自衛隊の幹部自衛官としての勤務経験を持つ会社員。名前の由来は幹部候補生学校でよく言われた「お前らはいつもぱやぱやして!」という叱咤激励に由来する。著書に「陸上自衛隊ますらお日記(KADOKAWA)」「飯は食えるきに食っておく、寝れるときは寝る(育鵬社)」。Twitterフォロワー数は19万人を超える。アカウントは @paya_paya_kun。

【ぱやぱやくん】さすがですね。仕事をするとつい完璧にやろうと完全性を求めてしまいがちですが、状況をよく見極めた上でフィードバックをもらいながら、60〜70点を目指してやっていく方が上手くいきます。もし自分の苦手なことがあるのなら、自分自身でどうにかするより人の力を借りるのが正解です。

【わび】またプレゼン資料の作成や、報告要領も役に立っています。

【ぱやぱやくん】「結論から言え!」ですね。

【わび】中隊長から「結論から言え!お前がいま死んだら誰がわかるんだ!」と言われたのがいまだに忘れられません。人が集中できる時間は短いんです。結論から述べることは本当に大切です。

人間関係より気にかけるべきは…

--自衛隊と言えば人間関係も濃密です。コミュニケーション能力に自信を持つ自衛官もたくさんいます。そこで、会社で人間関係がうまくいっていない人は、どのような点を意識すればいいでしょうか。

わび   大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。激務と上司によるパワハラが重なり、メンタルダウンで休職した。復帰後、第一線からの異動を機に視野を広げ、市役所に転職。現在は外資系企業で危機管理を担当している。著書に「この世を生き抜く最強の技術(ダイヤモンド社)」。Twitterフォロワー数は14万人を突破。アカウントは@Japanese_hare

【わび】そもそも、会社の人間関係は上手くいかないのが普通ではないでしょうか。

【ぱやぱやくん】そうですね。会社は仲良しクラブではないので。仲が悪い人がいて普通だと思います。自衛隊では多種多様な人がいることを知りましたが、どんな職場にも「いつも味方の人」と「いつも悪態をついてくる人」はいるものです。

【わび】人の気持ちはコントロールできません。「いつかわかり合える」的な努力はやめましょう。結果を出していくしかないですね。

【ぱやぱやくん】成果を出すと発言力が増し、自分の地位も高めることができるので、最低限仕事が進むようなコミュニケーションを取ることができれば問題ないと思います。逆にみんなと仲良くしようとして、仕事のパフォーマンスが下がったら本末転倒です。

【わび】ただ、パワハラや意地悪をするような人がいるようだったら、時には戦うことも必要だと思います。パワハラの標的になりやすいのは、仕事ができない人よりも何を言っても反抗しないと思われている人です。正論をはっきり主張し、何もかも思い通りにならないことを態度で示すべきです。「一線越えたら撃ちますよ」の気概です。

常に心に転職の準備を

--自衛隊という「つぶしが効かなそう」と言われる職業からの転身は多少の勇気が必要だったかと思います。「会社をやめたい」と思ったときに取るべきアクションを教えてください。

【ぱやぱやくん】会社をやめたいと思うことがあるのは普通だと思います。私は会社やめたいゲージは常に心にあって、「あんまりやめたくない」〜「めちゃくちゃやめたい」の間を行ったり来たりしています(笑)。

「会社をやめたい」とよく言う人は一見ネガティブにも見えますが、弱音を漏らすことで心の平穏を保てるので、結果としてやめない人が多いです。自衛隊でも「やめたい」と言わない人ほど、心がポッキリ折れる印象がありました。

いらすとや

【わび】私は仕事をやりたくないとは思いませんが、人間関係の調整がうまくいかず、なかなか進まないときは少し嫌になりますね。そう考えるとやめたいゲージが全くのゼロのときは少ないかもしれません。

【ぱやぱやくん】ちょっとでもやめたい気持ちがあるなら、日頃から転職サイトを見たり、転職に詳しい方と接点を持っておくといいと考えています。こうした接点があると、いざ動くときに動きやすくなります。心が決まっていない段階で実際に「履歴書を提出する」「面接を受けにいく」といった行動を取る必要はないと思いますが、準備運動はしておいた方がよいですね。

ただ「やめたい気持ち」が先行してしまうと、転職先がブラックかもしれなくてもそのサインを見落としてしまうことがあるので、要注意です。重大な決断をするときは、ストレスフリーな状態から導き出す結論がおそらく最善策ですよ。

【わび】確かに転職を考えるまでが0で、転職を決めた後に100にするような動きよりも、ちょっとずつ動いておいた方がスムーズですね。それにこれまでたくさんのやめる覚悟を持った人たちを見てきましたが、覚悟を決めるとなぜか悩んでいたときよりも仕事ができるようになるんです。仕事に迷いがなくなったり、上司にもためらわずに意見できたり。怖いものがないから、思考と結論の間に雑念がなくなるんですね。

(おわり)