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 今季2022年より、電動最高峰“RX1e”クラスの導入を予定するWorldRX世界ラリークロス選手権は、本来7月末に予定されていたドイツ・ニュルブルクリンクでの栄えある開幕戦を延期する決断を下し、各参戦チームが新時代に備えるため最大限の時間を確保する方針を選択。8月13~14日にスケジュールされていたノルウェーのヘル戦が、新たなオープニングイベントに指定された。

 これにより、ドイツはダブルヘッダー戦とした上で11月のシーズンフィナーレに移動し、10月19~20日の週末には2015年から毎年WorldRXを開催してきたスペインのバルセロナでの、こちらもダブルヘッダー戦が追加されている。

 本来なら、7月初旬にWorldRXを象徴するスウェーデンの“聖地”ホーリエスで開催された名物イベント『マジック・ウイークエンド』で、お披露目のデモンストレーションを実施する予定だったRX1eは、今季の始動に備え舞台裏で精力的な準備が進められてきたものの、過去2年間の世界的な予測不可能性により、サプライチェーンの問題が発生。新型電動車両の製造が予期せず遅れる事態となっていた。

 すでに欧州選手権のEuroRXが5月のハンガリーで開幕し、そのホーリエスで第2戦を実施済みの2022年シーズンだが、チームが準備を完了する猶予を得るため、さらに2週間を与えるという決定が下されたことで、結果として開幕戦は8月13~14日のノルウェー戦に正式に切り替わることとなった。

 シリーズプロモーターのラリークロス・プロモーターGmbHでエグゼクティブプロデューサーを務めるアーネ・ディルクスは、改めて「今季よりシリーズは大きな一歩を踏み出し、電動化技術が世界ラリークロスを次のレベルに引き上げることは間違いない」との観測を示した。

「ただし、そのような重要な進化には時間が掛かり、過去2年間の世界的な課題の影響を受けない人は誰もいない。だから今はチームと協力し、可能な限り最善の方法で新車をファンに紹介することをお約束したい。さらに2週間の準備期間を設けることで、誰もがそれを行えるようになると確信している」と続けたディルクス。

 一方で、新開幕戦ノルウェーに続き、ラトビア、ポルトガル、ベルギーと当初スケジュールのラウンドを消化したのち、スペイン、ドイツと並んだ新たなダブルヘッダー“5連戦”スケジュールの構成にも自信を見せる。

「10月にカタルーニャに戻り、ニュルブルクリンクでシーズンをスタイリッシュに終えることを楽しみにしているが、まずはヘルでの開幕戦に焦点を当てていきたい。そして、本当に感動的なイベントで新時代を迎えることを楽しみにしているよ」

2021年最終戦となったドイツ・ニュルブルクリンクでは、5人のタイトル候補が王座を争った
2022年3月時点ではカレンダーから漏れていたスペイン・バルセロナ戦の開催が決定した

■11月に移動したニュルブルクリンク・ラウンドは雪になる可能性も

 今回、スケジュール改訂の影響を受けたニュルブルクリンク運営組織のCEOを務めるインゴ・ボーダー代表と、同じく新開幕戦の地ノルウェー・ヘル会場の、トーヘージ・フォーボード・スリン代表も、このラリークロス新時代幕開けに期待を寄せる。

「昨年には素晴らしいレースと、素晴らしいタイトルバトルが行われた初開催イベントを経て、このスポーツの新時代を飾る最初のラウンドをホストできなかったのは残念な気持ちで一杯だ。しかし今は、電動化初年度のフィナーレを担当することを非常に楽しみにしている。11月の新しい日付では、ダブルヘッダーの興奮をさらに増すべく、ふたたび雪が散りばめられたトラックを目の当たりにするかもしれないね……」と、ニュルCEOのボーダー代表。

 一方、ヘルのスリン代表も「我々としても、WorldRXカレンダーへの復帰には大いなる関心と興奮があったし、待望のチャンピオンシップ電動化時代のプレミアを上演することは、まさに華を添える出来事だ」と歓迎の意を示した。

「ノルウェーの人々は、自動車業界のエネルギー転換をリードしていることを誇りに思っている。現在ここで販売されている新車の90%は、電気自動車かハイブリッド車なんだ。そのためラリークロス・プロモーターが行っていることと多くの相乗効果があり、今後の展開を楽しみにしている。ファンにとっては、4つのクラスすべてでセンセーショナルなアクションを目撃する素晴らしいイベントになるだろうね」

 新時代のグリッドに並ぶ最高峰車両RX1eは、オーストリアのEVパイオニア企業であるクライゼル・エレクトリック社がシリーズ主催のラリークロス・プロモーターGmbHやFIA国際自動車連盟と緊密に協力して開発製造するKit(キット)を活用。ツインモーターにより総合出力500kW(約689PS)、瞬間的に880Nmもの最大トルクを発生する。

 既存の内燃機関スーパーカーをコンバートしたマシンには、最大容量52.65kWhのバッテリーが搭載され、システム重量は300Kg、車両全体の総重量は1330kgに規定される。前後アクスルで独立したモーターはカーボンラップされ、プリロードオプション付きの高性能トランスミッションとLSDも装備される。

「ふたたび雪が散りばめられたトラックを目の当たりにするかもしれないね……」と、ニュルCEOのボーダー代表
新開幕戦ノルウェーに続き、ラトビア、ポルトガル、ベルギーと当初スケジュールのラウンドを消化したのち、スペイン、ドイツと並んだ新たなダブルヘッダー”5連戦”スケジュールに