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10年故障なしは日本車では当たり前と侮ることなかれ! 最低限のメンテで車齢が変わる 新車から10年以上長く乗るための5つのターニングポイント

 昭和から平成初期にかけてのクルマは5万kmも走るとトラブルが出始め、10万km手前ともなるとそこそこ手を入れる必要が生じた。

 このため、10万km超えての使用にはかなりの覚悟が求められた。ところが、現在のクルマは各部の耐久性が格段に向上し、10万kmは単なる通過点。20万kmを余裕で走りきれる耐久性を有している。

 とはいえ、クルマはあくまで機械だ。壊れにくくなったとはいえ、油断しているとトラブルに見舞われることがあるのは当たり前。日常的な点検やメンテナンスは必要だ。

 ということで、新車で購入してから10万、20万kmと長くつきあっていくために最低限、注意すべき点をピックアップした。

文/鈴木伸一
写真/ベストカーweb編集部、Adobe Stock(トビラ写真/Panumas@AdobeStock)

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■10年以上乗るためのターニングポイント1/新車納車時

 新車で購入した場合、1ヵ月経過すると「無料点検の案内」が届く(もしくは事前に説明がある)。新車特有の「1ヵ月点検」と呼ばれる初回点検の案内で、あくまで任意。断ることもできるが素直に受けることをお勧めする。

 精密機械でもあるクルマは、購入した直後に不具合が起きる「初期不良」が、希に発生する。つまり、新車だから「絶対に安全」という保証はなく、万が一にもそんな不具合をかかえたままの走行は危険でもある。

 点検の目的は「転ばぬ先の杖」。整備に不慣れな素人には気付けない、そんな「不具合の芽を詰む」という目的があるからで、それこそがプロの存在意義でもあるのだ。

 また、機械にはスムーズかつ快適に動作できる「適温」というものがある。エンジンであれば冷却水の温度が「80~90℃」の範囲で、昭和モデルの車両では走り出す前の儀式として、水温が上がるまでアイドリングさせる「暖気運転」が必須であった。

 ところが、電子制御燃料噴射による燃料供給が一般的な現代のクルマは、コンピューターが燃焼状態をチェックすることで常に最適な混合気を供給してくれる。このため、基本的に上記の暖機運転は不要。エンジン始動後、すぐに走り出してOKだ。 

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キャブから電子制御燃料噴射に代わり、エンジン安定稼働という目的での暖気運転は不要になった。が、機械寿命観点では、水温や油温が安定するまでは軽い負荷で運転した方がいい。EVもその例には漏れていないので、冷間始動後すぐの全開走行は控えよう

 しかし、「エンジン始動後すぐ全開運転OK」という訳ではない。水温が安定するまで、エンジンに無理な負荷をかけることなくゆったり走らせることが肝心だ。

 冷却水が適温まで暖まらないとエンジン内部の各部が熱膨張を考慮した適正なクリアランス(隙間)とならないため、無理に回そうとしても回転が重く、異音を発したりする。そんな状態で無闇に回転を上げると摺動面(金属が擦れ合っている面)にダメージを与える可能性があるからだ。

■10年以上乗るためのターニングポイント2/定期点検

弊社所有のハスラーの12カ月点検をした時の整備記録簿。他メーカーの12カ月定期点検記録簿もほぼ変わらない内容だ

 普通、クルマの各部は使用期間や扱い方に応じて劣化が進み、性能が低下する。そのまま放置しておけば不慮の事故や故障、燃費の悪化を招き、しいてはクルマの寿命を縮めることにもなる。そこで、必要となってくるのが使用期間に応じて行う「定期点検」で、道路運送車両法によってユーザー(使用者)に実施が義務付けられてもいる。

 つまりドライバーには「適正な管理」が義務付けられており、クルマの安全はユーザーの責任において確保する必要があるのだ。

 そしてこの「定期点検」は、ユーザー自らが目視等で確認する「運行前点検」と、法律で定められている「法定点検」の2つがある。

 前者は日々の安全を確保するため走行距離や運行時の状態などから判断したとき、走り出す前に実施する目視確認主体の、一般ユーザーにも無理なく実施可能な全15項目の点検。メカに自信がなければ行きつけの整備工場のプロに依頼して点検方法をレクチャーしてもらうなどして、自身で行えるようにしておきたい。

 さて、後者は車検と車検との間に行う「法定1年点検(12ヵ月点検)」と、2回目以降の車検と同時期に行う「法定2年点検(24ヵ月点検)」の2つがある。

 一般的に、「24ヵ月点検」は「車検」と同時に実施するため、未点検になることはないが、「12ヵ月点検」は何かと怠りがち。車検切れで公道を走ると重い罰則・罰金があるのに対し、法定点検は義務ではあるものの受けなくても罰則が無いからだ。

 しかし、「12ヵ月点検」を怠ったことによって生じた整備不良が原因の「故障」や「事故」を起こしてしまった場合、事故時の保険金の金額に影響。新車のメーカー保証は「12ヵ月点検」を行っていることを前提としているため、場合によってはメーカー保証が受けられなく恐れも。プロに点検を依頼すれば費用はかかるが、水と安全はタダではない。くれぐれも注意したい。

■10年以上乗るためのターニングポイント3/24ヵ月点検・車検

車検時の油脂類の交換は絶対ケチってはいけない(naka@Adobe Stock)

 「24ヵ月点検」は基本的に「車検」と同時に行うため、点検に出しているという意識が薄く、両者をゴッチャに捉えがち。

 しかし、「法定点検」がクルマの故障を未然に防ぐことが目的なのに対し、「車検」は検査時点における安全面や環境面が基準を満たしているかどうかの確認であって、それ以降の安全を保証するものではない。

 また、「点検」はあくまで正常な状態あるいは正常値内にあるかどうかを確認する作業で、確認の結果、必要となって実施した修理やパーツ交換は「整備」で、点検とは別途、費用がかかることになる。が、プロがチェックして修理や交換が必要と判断したものなら、自身の安全のため迷わず整備を依頼したい。

 特に注意すべきは油脂類だ。コレだけはケチってはダメ! 特に「ブレーキフルード」は無条件で交換を依頼したい。ブレーキフルードは湿気に弱く、1年も経過すると水分を取り込んで劣化。徐々に茶色く濁ってくる。

 そのまま2年以上使い続けると、混入した水分でマスターシリンダー内壁がサビて液漏れを誘発。吸水すると沸点が下がってべーパーロックなどのトラブルも起こしやすくなるので、走行距離が少ないからといって交換を怠ってはならない。遅くとも車検毎(2年毎)の交換が必須だ。

■10年以上乗るためのターニングポイント4/真夏の時期

 エンジンオイル/エンジンの温度がただでさえ高まりがちな夏場、渋滞のノロノロ運転という状況はオイルへの負担が確実に増す。そんな状況下、オイル量が少なかったり、劣化したオイルでは満足な潤滑が行えないため、エンジンの回りが重くなったりアイドリングが不安定に、オーバーヒートの要因にもなるので要注意!

 長距離ドライブ等で、長時間の渋滞に巻き込まれる可能性があるときは、出かける前に最低限オイル量のチェックくらいはするべきで、もしもオイル交換を怠っていたなら出発前に交換したい。

 冷却水/性能向上が著しい近年のクルマはオーバーヒートを起こし難くなっている。しかも、8年間交換不要の超・長寿命なスーパーLLCの普及によって冷却水もメンテナンスフリー化しつつある。が、乗りっぱなしで、必要最低限の日常メンテすら怠っていたとしたら、この限りではない。

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最近は冷却水の必要交換頻度も減少してきている。ただ、例えば鋳鉄ブロックのエンジンを使用したクルマで同じことをやると錆が発生してしまうこともあるので、自分のクルマがどのくらいの交換頻度であるべきかはしっかりおさえよう(nikkytok@Adobe Stock)

 特に夏場は注意が必要だ。蒸発量が増えるため正常な状態でも冷却水が減る可能性が高まるので、冷却水量のチェックだけは確実に行っておきたい。

 バッテリー/バッテリーは内蔵された極板とバッテリー液(電解液)の間に生じる化学反応で電気を貯めたり放出したりしている。外気温度が高まる夏場、その充・放電に伴う化学反応が必要以上(液温度25℃で容量100%)に活発になり、放電しやすくなる。

 外気の温度が34℃の夏日にはエンジンルーム内に置かれたバッテリー液の液温は50℃にまで達するからで、渋滞路でのアイドリング時には発電量が消費電力を補いきれず、放電する一方の状態になりやすく、最悪、走行中にバッテリー上がりを起こすことも。

 バッテリーケース上面には、コンデションを目視確認できるインジケーターが設置されているので、定期的にチェックを! そして、もしも「良好」以外の表示だったらプロに点検を依頼したい。

■10年以上乗るためのターニングポイント5/冬の時期

 バッテリー/気温が下がると動植物の動きが鈍くなるように、冬場はバッテリー内部の化学反応の活性化が鈍ることで充・放電能力が低下。電気を取り出しにくくなる。

 しかも、始動時に要求される電力は暖かい季節より高まるため、バッテリーターミナルの締め付けの緩みといった些細なトラブルが始動不良の原因となるので注意! 指でつまんで左右に抉ったとき微動だにしなければ問題ないが、ほんの僅かでも動くようなら注意! 側面の固定ナットをキッチリ増し締めしておきたい。

 タイヤ/空気は熱で膨張するため、タイヤが冷えた状態と暖まった状態とでは空気圧は異なる数値を示す。このため、空気圧の測定は走行前の冷えたときに行うのが原則で、外気温が高い夏場に空気圧を調整して以降、まったくの手付かずだった場合、かなり危険な領域まで空気圧が低下している可能性がある。

 空気圧は正常な状態でも自然に低下する。そこに気温の低下による目減りというダブルパンチが加わるからだ。規定値より低下するとタイヤ本来の形状を維持できなくなるため、偏摩耗の原因やハイドロプレーニングを起こしやすくなって危険。

 さらに、接地面積の増大で異物を咬みやすくもなる。「自然に目減りする空気圧によって形状を維持する」というタイヤの構造上、いかにメンテナンスフリーが進もうとも空気圧チェックは欠かすことができない重要メンテナンスの1つ。くれぐれも注意したい。


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