回復から成長に向けた足取りに不透明感が漂っている。個人消費を中心に景況は上向いているものの物価上昇の影響は免れず、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した原材料ひっ迫やサプライチェーンの混乱、中国の景気減速など不安材料は多い。とどまることを知らない円安も原材料輸入のマイナス要因となる。企業は半導体やライフサイエンスなど成長分野に積極投資を行う姿勢をみせるが、見極めも必要になってこよう。
内閣府発表の1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0・1%減、年率0・5%減となり、速報値を上方修正した。個人消費の回復を映した格好だが、設備投資は前期比0・7%減と速報値から下振れしている。
帝国データバンクは設備投資に関する企業への意識調査のなかで、2022年度の実質民間企業設備投資額を87兆円と試算。いぜんとして新型コロナウイルス感染拡大前を下回るものの2年連続の増加を見込んだ。ただウクライナ情勢やコロナ禍などによる不透明感の高まり、原材料の価格高騰や供給制約、また急速に進行する円安の影響など国内景気は下振れリスクが大きく、設備投資への影響も懸念されるとした。
企業の投資意欲には差がある。同調査で設備投資の予定が「ある」と回答した企業は全体の58・9%。規模別では大企業が72・0%だった一方で、中小企業は56・3%、小規模企業は43・7%にとどまる。投資計画の内容(複数回答)は「設備の代替」が41・5%でトップ。以下「既存設備の維持・補修」「省力化・合理化」「情報化(IT化)関連」となった。従業員数が多い企業を中心にデジタル投資が予定されている。
設備投資を行わない理由については「先行きが見通せない」が53・0%で最も多かった。続いて「現状で設備は適正水準である」「投資に見合う収益を確保できない」「借入負担が大きい」「原材料価格の高騰」となった。
日本政策金融公庫の「小企業の設備投資動向調査」をみると、21年度に設備投資を実施した企業の割合は前年度比3・7ポイント低下して26・1%。22年度の設備投資計画に関しては、前回調査よりも少ない14・2%が実施すると答えるにとどまった。
成長分野への投資を断行できる体力を備えた大企業に対し、中小や小規模企業は慎重だ。原材料価格の高騰に見合った価格修正などで収益基盤を固めるとともに、投資機会の見極めも重要になる。併せて、得意技術を生かして差別化を図っていく努力が一層問われてくる。
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