<p>「司法が役割を放棄した」原告らぼうぜん 同性婚不受理の合憲判決 | 毎日新聞</p><p>同性婚不受理の合憲判決 「国にたらい回しにされた」原告らぼうぜん 「愛する人と結婚できる当たり前の世の中になってほしい」と切望して原告団に加わった田中さんと川田さん。判決後「僕たちはどこに行けばいいのか」と肩を落としました。</p><p>「裁判所が国会に判断を丸投げしたに等しい。司法が差別を解消する役割を放棄した」。同性婚を認めない現行制度を合憲と判断した20日の大阪地裁判決は、初の違憲判断を出した札幌地裁判決から後退し、解決策の検討を立法府に委ねるような姿勢もにじませた。性的少数者の尊厳を司法に訴え続けた原告の同性カップルから怒</p><p>りの声が相次いだ。 「憲法14条に違反するとは認められない」 午後2時すぎ、大阪地裁の大法廷。土井文美(ふみ)裁判長が「婚姻の自由」を定めた憲法24条などに続いて、「法の下の平等」をうたう14条についても違憲ではないと判断を示すと、原告の川田有希(ゆうき)さん(37)=香川県三豊市=は視線を下げ、満員の法廷にため息が広がった。判決後も原告や弁護士たちはしばらく動けず、ぼうぜんと立ち尽くした。 地裁正門前に集まった支援者ら約50人も言葉を失った。「まだまだこれから」と書かれた旗の前で、原告の田中昭全(あきよし)さん(44)=同=は「司法は判断から逃げたようにしか思えない」と悔しさをにじませた。 アーティストの田中さんと、演劇制作を手がける川田さんは2007年、地元で開かれたクリスマスパーティーで出会った。食事やインテリアの好みも同じ。常に自然体でいられる関係に心地よさを感じ、「結婚」を約束する仲になった。9年前、穏やかな瀬戸内海を望む三豊市内の山あいの古民家を「ついのすみか」として田中さんの名義で購入した。 三豊市は20年1月、四国で初めて性的少数者のカップルを婚姻に準じる関係と公的に認める「パートナーシップ制度」を導入。2人は第1号のパートナーになった。ただ、法律婚とは異なるため、法的な不利益は解消されず、田中さんに万が一のことがあっても、川田さんが「ついのすみか」を相続することはできない。 「愛する人と結婚できる当たり前の世の中になってほしい」。2人はそう切望して訴訟の原告団に加わった。田中さんは判決後、大阪市内で開かれた記者会見で、「動かない立法を司法の判断で後押ししてほしかったのに、全く顧みられなかった」と残念がった。 判決は同性婚が認められない同性カップルに「重大な影響が生じている」と認める一方、「差別や偏見の解消は民主的過程における自由な議論を経た制度の構築で実現される」と指摘。法的な不利益を受ける同性愛者の救済は国会に委ねるとも受け取れる判断を繰り返した。 川田さんは判決後に、「国にたらい回しにされた。僕たちはどこに行けばいいのか。性的マイノリティーと呼ばれる僕たちの尊厳を軽視している」と肩を落とした。 判決は婚姻に似た新たな制度の創設にも言及したが、原告の坂田麻智さん(43)は「私たちが求めているのは婚姻の平等。同性婚だけを区別する別の制度を作っても、また差別されるのと同じだ」と指摘。「札幌判決は当事者にとって生きる希望だった。今日の判決は逆に追い詰めてしまいそう」と危機感をあらわにした。【安元久美子、古川幸奈、小坂春乃】 関連記事</p>