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2002年にポルシェ初のSUVとしてデビューしたカイエン。ポルシェがSUV? と一部からは懐疑的な目を向けられたものの、瞬く間に大ヒットを記録。現在ではプレミアムSUVのベンチマークのひとつとしてライバルに意識される存在となった。ここではSUVの最新モデル4台を集め比較してみた。

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ベンチマークのカイエンが武闘派のターボGTを追加

カイエンは、頂点に位置付けられるモデルとしてターボGTをラインナップした。それを知らしめるポルシェのホームページでは、カイエンがサーキットをガンガン攻めている。プロトタイプの段階で、すでにニュルブルクリンク最速SUVの称号を獲得済みだ。

ルーフとルーフスポイラーの翼端板はCFRP(カーボン繊維強化樹脂)製。

4LのV型8気筒ツインターボエンジンは、ベースなるターボクーペ用に対して最高出力を90ps上乗し640psを発揮。エアサスペンションは15%剛性が高められ、車高は17mm下がっている。ドイツ車の基本キャラは理論派といえるが、ターボGTは速さを追求した武闘派に思える。

走り始めると、その印象が際立ってくる。試乗時の路面はウェットだっただけに、フル加速すると2速にシフトアップされても高度な4WD制御の威力を持ってしてもトラクションコントロールが介入。だが、22インチタイヤのグリップ力は最大限で維持され、エンジンは瞬時にレブリミットの6750rpmまで吹け上がる。

その過程では、走行モードをスポーツにするとチタン製スポーツエキゾーストシステムがエンジンの鼓動を感じる快音……いや爆音を響かせる。しかも、2速で100km/h以下なので公道でもこの刺激が実感できる。

インテリアは多くはスウェード調のアルカンターラで覆われ後席は左右独立で乗車定員は4名。インパネ周りはタコメーターの針とステアリングセンターにイエローの刺し色が入る。



サスペンションは、不快感を伴わない範囲でギリギリまで引き締められている。ステアリングの手応えも、スッキリと軽めではなくガッシリと重めだ。超高剛性タイヤを履くだけに路面のわだちに影響され、進路の修正が必要な場面もある。だが、ターボGTならではの武闘派キャラとして受け入れたくなるから不思議だ。

エンジンは640psを発揮し、走りは背が高い911だ。

ただ、すべてのカイエンが武闘派というわけではない。ターボGTと同系エンジンにモーターを組み合わせ、システム出力680psを発揮しつつ環境性能にも配慮したターボSEハイブリッドクーペは、超理論派といえるモデルだ。

【Specification】ポルシェ・カイエン・ターボGT
■全長×全幅×全高=4942×1995×1636mm
■ホイールベース=2895mm
■車両重量=2220kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/3996cc
■最高出力=640ps(471kW)/6000rpm
■最大トルク=850Nm(86.7kg-m)/2300-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=マルチリンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=285/35ZR22:315/30ZR22
■車両本体価格(税込)=28,510,000円
■問い合わせ先=ポルシェジャパン ☎0120-846-911

情緒派のディフェンダー

イギリス車は、キャラとして情緒派といえるモデルが多い。その象徴がディフェンダーだ。試乗車の110SEは、2Lの直列4気筒ターボエンジンを搭載。最高出力は300psと、2420kgに達する車重を前提にすると頼りなさそうに思われかねない。

ところが、日常的な場面では力強さの不足を感じない。最大トルクの400Nmを1500rpmから発生し、アクセル操作に対する応答の遅れを感じないためだ。エンジンは軽やかに吹け上がるので、必要に応じてアクセルを踏み込む気持ちにもなる。刺激こそ得られないものの、伸びやかな加速が味わえればそれで十分なのだ。

インテリアは情緒派といってもラグジュアリーな印象とは無縁。スパルタンというわけでもなく本格的オフロード4WDらしい仕上げとなる。2列目シートはスライド機能を備え広い足元スペースを確保。荷物スペースには3列目シートが内蔵されるが+2的な機能に限定される。エンジンは実用性能を重視。




サスペンションは、柔らかめの設定となる。それでいてボディに縦揺れが残るようなフワつきを覚えることがなく、むしろオフロードで路面に対して優れた追従性を示しそうな予感に結びつく。

ステアリングの切れ味は、マッタリと軽めだ。直進時には、ステアリングからハッキリした中立感が伝わってくるわけではない。それでも、リムに手を添えておくだけで進路の維持が可能だ。

そもそも、タイヤはオフロードでの走破性を重視したオールテレイン仕様だ。そのトレッドパターンを見るたびに、大自然に深く分け入り休日を過ごす機会は稀かもしれないが思いを馳せたくなる。やはり、ディフェンダーは人の気持ちを動かす情緒派だ。

【Specification】ランドローバー・ディフェンダー110SE
■全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
■ホイールベース=3020mm
■車両重量=2240kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1995cc
■最高出力=300ps(221kW)/5500rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/60R20:255/60R20
■車両本体価格(税込)=7,850,000円
■問い合わせ先=ジャガー・ランドローバー・ジャパン ☎0120-18-5568

終始スマートな印象のボルボXC60

スウェーデン車のボルボも、北欧デザインの真価が実感できるまさに情緒派だ。また、近年では電動化を積極的に展開し環境性能に配慮した理論派でもある。

試乗車となったXC60リチャージ(正式名称は別)は、フル充電ならWLTCモードで81km走るので日常はエンジンの出番がない。リアに積むモーターは309Nmものトルクを発揮するが高性能ぶりをひけらかさず、アクセル操作に対する力強さの立ち上がりはスムーズそのものだ。

その一方で、アクセルを深く踏めば2Lの直列4気筒ターボエンジンが始動。同時にモーターがブースターとして機能し、刺激的な加速が楽しめる。だが、荒々しさとは無縁であり武闘派とは距離を置くあたりがボルボらしい。

北欧デザインらしくインテリアの仕立てはシンプルでいてエレガント。室内のスペースはDセグメントのSUVとしてはかなり広い。荷物スペースも広大であり手前側の両端に窪みが設けられゴルフバッグなどの長尺物が積みやすい。フロントにもスターターとしての機能も兼ねるモーターを組み合わせる。




モーター走行時は、優れた静粛性を実現する。タイヤのロードノイズやパターンノイズは、高剛性ボディと吸遮音材に最適配置により抑え込むからだ。

サスペンションは、適度に引き締まった設定となる。ステアリング操作に対するハンドリングの正確さが確かめられ、コーナリング中のロールは最小限に抑えられている。スポーティではあってもステアリングの切れ味がスッキリと軽やかなので、身構えるような走りには誘わないことも魅力だ。

【Specification】ボルボXC60リチャージ・プラグインハイブリッドT6 AWDインスクリプション
■全長×全幅×全高=4710×1900×1660mm
■ホイールベース=2865mm
■車両重量=2180kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ+モーター/1968cc
■最高出力=253ps(186kW)/5500rpm
■最大トルク=350Nm(35.7kg-m)/2500-5000rpm
■モーター最高出力(F:R)=70ps(52kW)/3000-4500rpm:145ps(107kW)/3280-15900rpm
■モーター最大トルク=165Nm(16.8 kg-m)/0-3000:309Nm(31.5kg-m)/0-3280rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/45R20:255/45R20
■車両本体価格(税込)=9,340,000円
■問い合わせ先=ボルボ・カー・ジャパン ☎0120-922-662

武闘派のジープに加わった新キャラ

ジープはアメリカ車の代表的ブランドとして、基本的には武闘派キャラを守っている。乗用車的なグランドチェロキーも、本質にいつわりはなかった。だが、新型グランドチェロキーLは違う。香り立つようなラグジャリーぶりを得た、情緒派に生まれ変わった。

さらに、日本市場にはロングホイールベース仕様のLがまず導入されている。ボディ全長は5200mmに達し、6名3列分あるどのシートに大柄なリポーターが座ってもスペースの余裕が確かめられる。電動可倒式の3列目シートを収納すれば、広大な荷物スペースが確保されSUVのユーティリティが最大限に拡張される。

ちなみに、いまやジープは巨大企業グループとなったステランティスの一員だ。そのため、グランドチェロキーはアルファ・ロメオのステルヴィオから派生したプラットフォームを採用。だが、走りまでステルヴィオのようになったわけではない。むしろ、正反対だ。

本木目のトリムやキルティング風の加工が施された上質なレザーで装われるインテリアはラグジャリーだ。試乗車の2列目シートは左右独立式で大柄なレポーターがスペースの余裕を残しつつ3列目シートで着座ができる。



直進時には、ステアリングが中立でビタッと落ち着きしたスタビリティの高さが実感できる。大らかな気分で一直線に伸びる道を走り続けたくなる、アメリカンSUVにふさわしい設定となる。それでいて、ステアリングを切り込む場面では素直な応答性を示す。

3.6LのV型6気筒エンジンも、回転数の上昇に合わせて素直に力強さが立ち上がるだけにアクセル操作に余計な気遣いは無用だ。パワフルな加速を望むなら、アクセルと深くというよりの長く踏み続ければそれでいい。

自然吸気式エンジンはスムーズに吹け上がりエアサスも標準装備となる。

ドイツ車は、SUVでも間違いなくベンチマークだ。カイエンはその典型であり、日本市場導入モデルだけで340psから680psまで6仕様ものパワーユニットを備え、キャラ的にも理論派から武闘派まで成立させている。それが可能となったのは、圧倒的な優れた基本性能を獲得しているからだ。

各国のSUVは、ベンチマークとしてのカイエンを意識しつつも追いつけ追い越せを目指しているわけではない。それぞれにキャラを立てながら、魅力あるSUVとしての進化を続けているのだ。

【Specification】ジープ・グランドチェロキーL SUMMIT RESERVE
■全長×全幅×全高=5200×1980×1795mm
■ホイールベース=3090mm
■車両重量=2250kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V/3604cc
■最高出力=286ps(220kW)/6400rpm
■最大トルク=344Nm(35.1kg-m)/4000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=マルチリンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=275/45R21:275/45R21
■車両本体価格(税込)=10,310,000円
■問い合わせ先=ステランティスジャパン ☎0120-712-812

ポルシェ公式サイト
ランドローバー公式サイト
ボルボ公式サイト
ジープ公式サイト

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