レッドブルのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコが角田裕毅(アルファタウリ)の激しい気性に苦言を呈したことが話題になるなか、レース中に感情的になることは仕方ないというF1ドライバーたちから角田へアドバイスが寄せられた。
2022年F1第10戦イギリスGPの決勝、角田はチームメイトのピエール・ガスリーと接触。マルコはこの同士討ちを受け、オーストリアの『Servus TV』において角田を「問題児」と表現。さらに「彼はいつも不平ばかり言っていて、それがレースのパフォーマンスに影響している」として、角田のために新たなスポーツ心理療法士を雇ったことを明かした。
これまでたびたびレース中の無線で気持ちを昂ぶらせる場面が見られた角田だが、感情をコントロールすることは、彼が抱える課題のひとつになっている。しかし、ドライバーたちから聞こえてくるのは、極度の緊張状態にあるドライビング中に平静を保ち続けることの難しさだ。
第11戦オーストリアGP前の定例会見において、自らの無線での振る舞いについて問われたケビン・マグヌッセン(ハース)は、「怒ることもあるし、もちろん興奮することもある」とコメント。同席したエステバン・オコン(アルピーヌ)も「ヒートアップした状況で冷静であり続けるのは簡単じゃない」と感情を抑えることの難しさを明かした。
さらにマグヌッセンが続けて語るのは、行き過ぎた言動は禁物としても、感情的になることは決してマイナス面しかないわけではないということだ。彼は「マシンをドライブしているときは普段よりも感情的になってしまうけど、それがいい方向に働くことも多い」と語っている。
単に感情を押し殺すのではなく、ある程度はそれを発露させるべきだと語るのはカルロス・サインツ(フェラーリ)も同じ。角田と同様にレッドブル育成出身のサインツは、アルファタウリの前身であるトロロッソからデビューした当時をこう振り返る。
「F1での最初の2~3年は、無線で冷静になりすぎて自分の主張を通せなかったり、興奮しすぎて何を言っているのかわからなくなって、チームが正しい判断を下すのに役に立たなかったりしたことを覚えている」
サインツはこの苦い経験を踏まえ、ドライバーには感情的になってでも自らの意見を押し通すリーダーシップも必要だとして、あくまでも肝心なのは「バランス」だと角田にアドバイスを送った。
「時々ラジオで少し興奮して、自分の主張を続けるのは決して悪いことじゃない」
「でも、その一方でチームに冷静であると示し、信頼を与えることも必要だ」
「F1で学んだことは、興奮するときと冷静になるときのバランスを見つけることだ」
角田の感情的な側面は、彼の持ち味であるアグレッシブさの現れとも言える。サインツの言う「バランス」をものにした角田がどんな活躍を見せてくるかに期待がかかる。