晋三元首相が今月8日、参議院議員選挙の応援演説中、銃撃されて死去した。日本における首相経験者の暗殺は7件めで、1936年の二・二六事件以来。
しかも今回の犠牲者は、憲政史上最長の在任期間を誇り、その後も永田町に隠然たる影響力を有した、唯一無二の存在だった。すでにして、歴史の年表に載ることまちがいなしの重大事件である。
筆者は氏支持者ではなかったが、このような最期には同情を禁じえない。心よりご冥福をお祈りする。
実行犯の動機などはまだ詳[つまび]らかではない。極初期は政治的テロリズムが疑われたが、現在では宗教がらみのトラブルが背景にあるとされている。氏をその広告塔とみなし、凶行に及んだというのである。
もっとも、これほどの事件の全容がすぐに判明するわけがない。警察からリークされた容疑者の供述を丸呑[まるの]みしていいのかも疑問だ。
なにより、発生より約1週間しかたっていない。インターネットですぐに情報が行き交う今日、われわれはすぐに答えを求めがちだが、いい加減な臆測は慎まなければならない。
そもそも暗殺はいかなる理由であれ擁護できないことも、ここに強く明言しておきたい。
それでも、万人がうべなうであろうことがある。日本の政治に与える波紋が極めて大きいということだ。
氏はこの10年ほど、日本の国論を二分する存在だった。氏を支持すれば保守派、否定すればリベラル派というぐあいに。筆者はかつてこれをイデオロギーのリトマス試験紙と呼んだ(『超空気支配社会』)。
そこで思い出すのが、「ドラゴンクエスト」の作曲者として知られ、氏の熱心な支持者でもあった、すぎやまこういち氏の発言だ。
かれは民主党政権の時代、日本を「日本軍と反日軍の内戦状態」と表現した。
いわく、当時の政府は反日軍で占められており、震災のどさくさに紛れて日本を解体しようとしている。
これに対抗するためには、氏を筆頭とする真の国益のため行動する政治家をもり立てるしかない-。やがてその思いはかない、第2次政権が成立することになる。
単純すぎると思うかもしれないが、じつはいまの保守派主流の世界観をよくあらわしている。
その中心的な雑誌も、動画メディアも、かならずしも自民党支持ではない。かれらは氏支持なのであり、評論家の西尾幹二氏がいう「さん大好き人間」にすぎない。
もちろん、事情はリベラル派も変わらない。かれらも「反アベ」以外の旗幟[きし]は見いだしにくいのだから。
そこで今後懸念されるのは、右派ポピュリズムの台頭である(左派は影響力が乏しいので割愛する)。
世界的にみれば、アメリカのトランプ現象、フランスの国民連合、ドイツのための選択肢など、右派ポピュリズムの躍進が著しい。それにくらべ、日本は影響が限定的だった。
なぜか。考えられる理由のひとつは、氏が「右傾化の象徴」だったために、かれの領導する自民党がネット右翼などの票をうまく取り込んでいたのではないか、ということだ。
つまり氏は、既存の保守派と新興のネット右翼を橋渡しする稀有[けう]な存在だったのである。しかもその葬儀に献花が殺到したように、大衆の支持も幅広く取り付けてもいた。
タカ派の印象が薄い岸田首相に、同じような役割は求めづらい。もし同内閣が今後、経済政策などで失策を重ねれば、次の国政選挙で新興政党が急進する恐れもなしとしない。
すでに今回の参院選でその兆候がみられた。NHK党や参政党の台頭は、選挙制度のハッキングによる一時的な異常というより、SNS社会の深化にともなって、
今後ますます拡大する現象とみたほうがよい。そしてこれら勢力は、少なくともリベラル寄りではない。保守派のメディアや言論人がここになびくとしてもけっしてふしぎではないのである。
いずれにせよ、われわれは2010年代の政治的象徴を失った。20年代はなにがそこに取って代わるのか。いまはただ、それが暴力ではないことを願うほかない。
https://kumanichi.com/articles/733299
引用元: ・安倍元首相死去で懸念される右派ポピュリズムの台頭 [ボラえもん★]
左翼は何と戦っているのか?
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