もっと詳しく

 商用トレーラの種類を大きく分けると、国内で普及しているセミトレーラ型、より大量輸送を可能にするフルトレーラ型の2種類があります。

 こうしたトレーラは近年、保安基準や車両制限令等の緩和が行なわれ、従来よりも長大化された新規格セミトレーラ・フルトレーラも続々誕生しています。さらに、あまり聞き慣れない「ダブル連結トラック」という車両も登場しています。

 そんなちょっと煩雑になってきているトレーラ事情ですが、あらためてトレーラの基礎知識としてお届けしたいと思います。

文・写真/フルロード編集部


■セミトレーラの基礎知識

 トレーラ連結車は、被けん引車のトレーラと、けん引車のトラクタが脱着できるのが最大の特徴です。

 こうした特徴により荷物の積み降ろしの時間を省くドロップ&フック輸送や、運行途中で運転手を交代することで労働時間短縮ができる「中継輸送」などの高効率な輸送形態が可能になり、また全長12mまでの大型トラックよりも大量輸送化が可能なため、省人化に貢献できます。

 ではセミトレーラとフルトレーラの違いはどんなところにあるのでしょうか。

 セミトレーラのけん引は、荷台を持たないセミトラクタで行なわれます。連結は、セミトラクタのキャブ後方、後車軸の上あたりに備わっている「第五輪」(単にカプラと呼ばれることもある)と呼ばれる連結装置と、トレーラ側の連結器の「キングピン」をはめ込みます。

セミトラクタのキャブ後方に備わった第五輪。トレーラ側のキングピンをはめ込みけん引を行なう

 連結時はトレーラの重量の一部がトラクタの後軸(駆動軸)に分散されるため、セミトラクタには「第五輪荷重」という連結装置が負担する最大積載量に相当する数値が定められています。

 また、セミトレーラは後輪しか持たないため、そのままでは自立することができません。非連結時には「ランディングギア」という補助脚伸ばして自立させます。

■フルトレーラの基礎知識

 いっぽうフルトレーラは、荷台が備わったフルトラクタ(連結装置を架装した大型トラック)でけん引を行なう車両です。フルトラクタ側のけん引装置(ベルマウス、ピントルフック、トーイングヒッチなどと呼ばれている)に、フルトレーラ側の連結器である「ドローバー」(連結棒)を接続してけん引します。

 さらにフルトレーラは、車軸の配置の違いで「センターアクスル式」と「ドリー式」に分かれています。

 センターアクスル式はその名のとおり、トレーラ中央に車軸がある形態で、フルトラクタ側の連結器を起点に1カ所が可動するという特徴があります。可動部が1カ所なので、バック時でもセミトレーラと似た感覚で操縦操作できるといわれています。

センターアクスル式のフルトレーラ。トレーラ中央に車軸があるので判別はしやすい
こちらはドリー式の連結部。写真右がトラクタ、左がトレーラ

 ドリー式は、トレーラの前後2カ所に車軸がある形態で、フルトラクタ側の前軸は旋回可能なターンテーブル(回転式)付の台車(ドリー)になっています。

 トレーラのタイヤが前後にあるため、荷重が均等に分散される特徴があり、重量物の運搬に優れています。可動部が2カ所あるためバック時など運転がさらに難しくなる車両でもあります。

 このドリー式にはさらに、ドリーがトレーラと一体となっているものと、ドリーに第五輪を装備して分離できるものがあります。

 後者の分離型は、セミトレーラをフルトレーラとして用いることも可能な方式で、日本での例は少ないですが、欧州で普及しています。

■長大化が進む新規格トレーラ

 トレーラは、深刻化するドライバー不足を背景として近年、連結全長や第五輪荷重などを緩和する保安基準や車両制限令の見直しが行なわれ、徐々に新規格トレーラが普及し始めています。

 まず、2013年にフルトレーラの連結全長が19mから21mへと緩和されました。

 2年後の2015年には、セミトラクタ4×2エアサス車(2軸車)の駆動軸重が10tから11.5tに緩和されました。

 それと併せて、「特例8車種」と呼ばれるセミトレーラ(バン型、タンク型、幌枠型、コンテナ用、自動車運搬用、あおり型、スタンション型、船底型)の車両総重量を最大36tに、キングピン全長(キングピンから車両後端までの長さ)を12mから最大13mに緩和し、あわせて車両制限令の連結全長も、リヤオーバーハングの長さ条件付きでこれまでの17mから最大18mに引き上げられました。

 これらの基準緩和により、物流カーゴ系のセミトレーラでは、全長を増やして荷台の容積が拡大でき、タンク型などでは従来の全長のまま、より重い積荷が運べるようになりました。

■さらに大きいダブル連結トラック

 2019年初めには、特殊車両通行許可基準(特車通行許可)を特定された道路区間においてのみ緩和し、フルトレーラ連結車の連結全長を21mから25mへと緩和し、「大型トラック2台分(の輸送量)」という意味が込められた「ダブル連結トラック」の営業運行が条件付きで可能となりました。

 21m超の緩和条件は、ETC2.0・ABS・車線逸脱警報などの保安装置を備えた車両、危険物・動物は積載禁止、追越し・隊列走行の禁止、運転できるドライバーにも条件を課するなど、さまざまな要件があります。

ヤマト運輸の連結全長25mのドリー式ダブル連結トラック「スーパーフルトレーラSF25」

 余談ですが、オーストラリアや南アフリカ共和国など海外では、さらにトレーラのバリエーションが豊富で、セミトラクタが2台以上のトレーラを牽くようなコンビネーショントレーラも走っています。

 ちなみに、欧州でも現在、ダブル連結トラックと同じドライバー不足対策の一つとして、トレーラの長大化が試みられており、セミトレーラ2台分の連結全長30m超車の実証試験が行なわれており、これはもう「ダブル連結トレーラ」とでも言えるでしょう。さらに北欧では、それを上回る連結全長34.5mが認可されるに至っています。

投稿 ダブル連結トラックに新規格トレーラ! 最近注目を集めるトレーラの基礎知識をまとめてみました自動車情報誌「ベストカー」 に最初に表示されました。