アルファードの勢いが止まらない。乗用車ブランド通称名順位では、2020年に5位、2021年には4位になった。直近2022年5月の販売実績は6699台と、なんと1月にフルモデルチェンジしたばかりのノア(5697台)より多い。
下取り価格が高く安定し、残価設定ローンを使うと、思ったよりもローン支払い額が少ないアルファードだが、それだけでここまで売れるものなのか。アルファードが好調に売れ続ける理由を考える。
文/佐々木 亘
写真/TOYOTA、ベストカー編集部
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■残価設定ローンの使いやすさが若年層の入り口を広げた
元々、アルファードを支えていた年齢層は、トヨペット店のメイン年齢層である30代後半から50代前半だった。車両本体価格は決して安くない高級ミニバン(現行型は359万7000円~759万9000円)なだけに、20代前半の新卒入社1年目で簡単に購入できるクルマではないのが、かつてのイメージだ。
しかし、販売店で話を聞くと、アルファードを購入していく層はココと絞り切れないほど広がっているという。
これまでルーミーやシエンタを検討するような若年層のファミリーから、すでに子育てを終えて夫婦二人になった60代後半まで幅がある。これまでと同様に30代から50代のユーザーからの支持も高く、アルファード支持層は、ほぼ全年齢層に広がった。
若年層の支持を広げた理由のひとつは残価設定ローンの影響だろう。リセールバリューが高いアルファードでは、残価率を高く設定でき、月々のローン支払い負担を大きく下げることができるのだ。そのため、比較的収入や資産の少ない若年層でも、買いやすくなっている。
■人気のボリュームゾーンは、かつてミニバンブームを経験した世代
60代以上のユーザーへ話を聞くと、よく出てくるのは「運転のしやすさ」と「乗り心地の良さ」という2つのワードだ。車体は大きいが、高い着座位置が生み出すアイポイントの高さと、運転席から車両前端までの見切りの良さが、ドライバーからは好評である。
さらに、箱型で開口部が多く、重心位置も高くなりやすいミニバンであるが、高級セダン並みの安定感があり、同乗者の評価も高い。高いヘッドクリアランスも相まって、室内環境は超快適だ。
ここまで爆発的に売れている人気を支えているのは、買いやすさを利用して契約していく若年層の影響が大きいようにも見えるが、実際には、現在の自動車ユーザーの大部分を占める、50代以上の影響が強い。
特にこの世代は、現役子育て中にミニバンブームを経験している。広い室内や使い勝手の良さを一度経験してしまうと、ミニバンからは離れられなくなるという。
そこへ、自分たちの年齢が上がっていき「高級感」や「質感の高さ」を合わせて求めるようになった。こうしたニーズにズバッとハマるのがアルファードなのだろう。
■アルファードへの評価を支える他社ユーザーと法人需要
乗り換えの動きを見ていると、他社と自社では動きが大きく違う。他社モノ(つまりトヨタ以外のメーカー)を下取りに入れるユーザーの多くは、アルファードを指名買いするという。狙いはアルファードただひとつ、ほかのトヨタラインナップには見向きもしない。
逆に、自社もの(トヨタ車)が下取りに入る買い替えのケースでは、「最終的にはアルファードに決まりました」という受け皿としての役目が多いという。
初めは新型車(ノア/ヴォクシーやランクル、カローラクロスなど)で、買い替えの商談がスタートするが、値段、性能、使い勝手などのニーズを深掘りしていくと、当初想定していた車種は争点から外れ、アルファードの話になっていることが多いと、営業マンは口を揃える。
実際のところ、自社内の買い替えニーズに対して、困った時にはアルファードを薦める営業マンが多いという。とりあえず柔軟にニーズを受け止め、ココに乗っておけば間違いないというクルマがアルファードだというのだ。
こうしたトヨタ販売店内でのおススメも、アルファードの好調な販売台数を支えていることだろう。
ここに、安定して買い替えサイクルが回ってくる法人や官公庁の需要が上積みされる。販売台数全体における、大きな割合は個人需要であるが、法人需要が一定数あるクルマは、販売台数が安定するのだ。
法人ではリース契約や減価償却がほぼ終わるタイミングで、買い替えが発生する。3年なら3年、5年なら5年という決まったサイクルで売れていくため、販売台数に波が出にくくなるのだ。安定して売れているということが、販売ランキングなどで個人ユーザーに伝わる。こうした情報も人気を支える一端となるだろう。
モデルライフは長く、設計の古さを感じる部分もあるが、各所で平均点以上の能力を発揮し、選ばれる存在であるアルファード。
これは一過性のバブルではなく、販売戦略も含めた実力と言わざるを得ない。かつてのカローラ、プリウスのように、アルファードが国民車と呼ばれるようになる日は、すぐそこまで来ているだろう。
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