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<p>「海上輸送の電動化」による環境改善が現実的になってきているという研究結果</p><p>「海上輸送の電動化」による環境改善が現実的になってきているという研究結果</p><p>二酸化炭素(CO&#x2082;)や二酸化硫黄(SO&#x2082;)、窒素酸化物(NO&#x2093;)の主要な排出源の1つが、重油を燃料とする海運です。各種ガスの排出量は船を電化すれば削減可能ですが、これまで船の電化ついては活発に議論されていませんでした。カリフォルニア大学バークレー校のジェシカ・カーシー氏らは、船の電化に関する議論が進んでいない理由について「過去の研究がバッテリーのコスト、エネルギー密度、利用できる船内スペースについて時代遅れの仮定をしていたためだ」と指摘し、新たな条件での試算を行って世界の海上輸送の40%以上は十分にバッテリー推進に置き換え可能であることを示しています。</p><p>世界の貿易量の90%、実に年間110億トンは海運業界が支えています。海運業界がこれだけの輸送を行えるのは安価でエネルギー密度の高い重油のおかげで、その代わりに、年間350万バレルの低品位重油が消費され、温室効果ガスの2.5%を排出しています。2050年には温室効果ガス排出量の17%が海運業界由来になると考えられています。 もちろん海運業界も無策なわけではなく、重油に代わる、環境に影響を与えないゼロ・エミッションのエネルギー源を模索しています。その1つが電気燃料、つまりバッテリー推進です。すでに複数の国や地域でバッテリー推進の船、およびバッテリー推進を取り入れたハイブリッド船の試験運航や開発が進められています。しかし、あまり大規模に検討が進められていないことについて、カーシー氏らは直近のバッテリーコスト低下やバッテリーのエネルギー密度の改善などが考慮されていないためだとして、最新の試算を行いました。 バッテリーと重油でそれぞれ船が1km進むときの推進力を比較するとき、単純なベースラインシナリオだと航行距離が1000km未満のときに8000 (1TEUが20フィートコンテナ1個分相当)超の船舶でのみ、バッテリーの効率が重油を上回りましたが、環境に与える影響のコストや人件費なども加算すると、すべての規模のコンテナ船で、航行距離5000kmまでならバッテリーの効率の方がよくなることがわかりました。 また、ベースラインシナリオでも、今後のエネルギー密度改善でバッテリーコストが下がった場合、費用対効果は2倍になり、すべての規模のコンテナ船で航行距離3000km程度の範囲なら重油よりバッテリーの効率がよくなるという数字が示されました。 カーシー氏らによると、バッテリーコストが下がったシナリオで環境コストを考慮すると、小型船なら航行距離6500km、大型船なら航行距離1万2000kmまでバッテリー優位になるとのこと。 ただし、バッテリー推進船に切り替える場合、運用コストは下がるものの、バッテリーを船に搭載しなければいけないため初期投資は高くつくとのこと。また、船舶の充電をサポートするために、数百MW単位の容量を持つ充電ステーションの構築も必要となってくるため、商業展開するにあたってはクリアするべき課題が残っていることが指摘されています。 この記事のタイトルとURLをコピーする</p>