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 乗用車の場合、一般的に中型車の排気量は2000~3000ccで気頭数も4気筒から6気筒くらいのものだろう。しかしバスの場合は、多人数を運ぶためにより大きなエンジンを搭載している。とは言っても近年は燃費などの環境性能を重視して、排気量は小さくなってきている。しかしかつては走行性能や快適性を重視した代引き量で多気筒のエンジンを搭載していた時代がある。今回はそんなモンスターバスを紹介しよう!

文:古川智規(バスマガジン編集部)


昔だから大排気量?

 乗用車の世界でもそうだが、パワーが欲しければ排気量を上げる。1気筒あたりの容量を増やしてもいいし、多気筒にすることも可能で、その選択は目的と用途による。ところが排ガス規制や技術の進歩による車体の軽量化、ハイブリッド化等の理由により必ずしも大排気量が必要ではなくなった。

 バスも同様で、最新の車両は1万㏄(10リッター)を下回るのが当たり前になった。よって大排気量のバスは意外にも昔のバスということになる。これらのうち大排気量を誇ったバスを細かい仕様により異なるが代表例として3種紹介する。果たして何㏄なのか?

いすゞキュービック

 昭和59年から平成12年まで製造された、いすゞ自動車のキュービックは、まだ地方では見ることができる車両だ。特徴のある前面ガラスはキュービックの代名詞だが、これはボディを製造した川崎車体の場合で同じシャシーを使用した富士重工の車両や西日本車体の車両もある。今回はエンジン排気量の話なのでいずれのボディでも基本的には同じだ。

キュービックのエンジン

 当初は水平直列6気筒で登場したキュービックは、都営バス向けの試作車で平成3年にV型8気筒エンジンを積んでくる。以降は排ガス規制に適合させながらV8が標準になった。このV8エンジンの排気量はズバリ15リッター。つまり15000ccだ。市街地向けには240馬力、山岳地域や郊外向けでは285馬力のエンジンが用意された。

日野セレガRスーパーハイデッカー

 現在の高速バスや観光バスの主流は、路線バスよりも背が高く見晴らしが良い「ハイデッカー車」だ。長距離路線や事業者を代表するフラッグ路線にはさらに背の高いスーパーハイデッカー車や2階建てのダブルデッカー車が採用される例もある。

 21世紀初頭は見た目はダブルデッカーなのに2階建てではない「2階だけバス」が存在した。スーパーハイデッカーの一種だが、日野自動車のセレガRスーパーハイデッカーもその一つだ。

セレガRのエンジン

 車体はダブルデッカー並みなのに1階席がない不思議なバスだ。路線バスではノンステップバスが当たり前になった現在では、なんと6ステップもある床の位置が高いバスだった。これは乗りこんでから座席に座るまで1m7cmも昇ることになる位置だ。

 このバスに積まれたパワーユニットはV8ディーゼルターボ17リッター(17000㏄)でガソリンとディーゼルの違いはあるが、ざっと軽自動車25台分の排気量だ。出力は450馬力で「凄みのある」パワーだったそうだ。

三菱ふそう・エアロキング

 大御所はみんな大好きダブルデッカーの「三菱ふそう・エアロキング」だ。この車両はもう説明の必要はないだろうが、製造を終了しているので現役で走る姿は徐々にみられなくなっている。

 特に長距離高速バスでは活躍の場を失ってきており、今後は改造車や貸切車や保存車としてごく短距離を走るのみになるのかもしれない。

エアロキングのエンジン

 ダブルデッカーで車重が重いため、3軸(後輪が2軸)という特徴のエアロキングだが、登場時のエンジンはV8ノンターボで430馬力。排気量は驚異の21.2リッター(21200㏄)だ。

 平成8年の最終型では9リッター直6インタークーラーターボになったが、自然吸気21.2リッターは、しつこいようだが軽自動車の32台分の排気量。

排気量だけがすべてではないが…

 今後はこのような大排気量バスはもう出てこないと思われる。大排気量はトルクも太く、高速道路での加速もストレスなく運転士にとっては長距離運転をするのに楽なのだろう。しかし燃費向上や厳しい排ガス規制、技術の向上により大排気量でなくても数値上のパワーは確保できるようになった。

 もし今となっては旧車となってしまったこれらのバスに乗る機会があれば、ぜひエンジンサウンドやバスが「持っていかれる」パワーを堪能していただきたい。

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