<p>「シャネルは生涯を通してマニフェストを貫き通した女性」──『ガブリエル・シャネル展』が描く世界を、パリのガリエラ美術館館長が語る。</p><p>「シャネルは生涯を通してマニフェストを貫き通した女性」──『ガブリエル・シャネル展』が描く世界を、パリのガリエラ宮美術館館長が語る。</p><p>女性のスタイルと生き方に多大なる変化をもたらしたガブリエル・シャネルのクリエイションに焦点をあてた回顧展、『ガブリエル・シャネル展 Manifeste de Mode』が東京・三菱一号館美術館にて開催中だ。2020年にガリエラ宮パリ市立モード美術館で初公開された展示を日本向けに再構成したこの国際巡回展は総勢138点の作品が並ぶ。展覧会の見どころやガブリエル・シャネルの魅力を、同美術館館長のミレン・アルサリュスが語ってくれた。</p><p>──2020年のパリ市立モード美術館のリニューアルオープンに合わせて開催された本展ですが、なぜ「ガブリエル・シャネル」というテーマを選ばれたのか。企画の経緯を教えてください。 驚くべきことにこれまで一度も、パリでガブリエル・シャネルにフィーチャーした展覧会が開催されたことがなかったというのが最大の理由です。歴史的観点からも偉大なデザイナーの一人であり、今日の においても、彼女の作品やヴィジョンは非常に大きな影響力を持っている。それなのになぜ、パリでガブリエル・シャネル展が一度も開催されることがなかったのか? 通常私たちが回顧展を行う場合は、誰かを追悼したり作品を思い出したり、その人の重要性を再発見するために行うことが多いのです。ところがガブリエル・シャネルは私たちの記憶の一部にとどまり続け、ファッション界でも未だ存在感を放ち続けている。彼女と彼女の作品は時代を超越し、私たちの中で生きている。そのため、わざわざ誰かが彼女や彼女の作品を思い出させる必要がなかったのではないか。それがこの問いに対する、我々が考えるうる限りの結論です。それだけに、2年の改装工事を経たリュニーアルオープニングには、これ位のインパクトのある企画でないといけないと思い、このテーマに決めたのです。 Copyright CHANEL シャネルの現代性、永遠性、ヴィジョンがすべて真実だということを改めて認識しました。伝説と呼ばれる人たちの話をする際、しばしば誇張された表現が使われたりしますが、ガブリエル・シャネルを語る言葉には一切の嘘がないのです。膨大な資料を読み、さまざまなものに目を通しましたが、彼女は1920年代から30年代にかけてすでに、ファッションの発展や女性の歴史において非常に大きな影響力を持ち、重要な役割を担っていたのです。そして、彼女のブレることのないヴィジョンは、メゾン創設時からはっきりと示されていたことも新たな発見でした。 ──そのブレることのないヴィジョンとは具体的にどんなことでしょう? 創業時から今に至るまでずっと貫かれている、彼女の無駄をそぎ落としたミニマルなスタイルからもわかるかと思いますが、衣服による女性の体の解放、そして女性は装飾的な存在でなく、一人の人間であることをファッションを通して提示すること。そして自由であることです。 「シャネルのスーツ」=女性たちの自由の価値を示すもの。 Copyright CHANEL ──本展のキュレーションのポイントを教えてください。 まず「シャネル」というメゾンではなく、「ガブリエル・シャネル」という女性にフォーカスをすることが大前提でした。メゾンの歴史も魅力的ですが、すべては彼女から始まっていて、彼女を通してこそ「シャネル」というメゾンの歴史を理解することができるからです。ですから、展覧会名にも「ガブリエル・シャネル」を入れたかった。 通常私たちは展示内容が決まり、すべてが整った後に展覧会の名前を決めています。そして今回は「マニフェスト」という言葉を使っていますが、当初この言葉は20世紀初頭のファッション界に真新しい提案を打ち出したガブリエル・シャネルの初期作品にふさわしいと考えていました。女性をコルセットや極めて装飾的なファッションから解放したわけですから。ところが第二次大戦後の1950年代はクリスチャン・</p>