国内製油所の停止が相次いでいる。ガソリンをはじめ石油製品の内需縮小は、少子高齢化による人口減、自動車のEV(電気自動車)化、さらに気候変動という潮流をうけ加速する方向にあるためだ。一方で川下に当たる石油化学でも、三菱ケミカルホールディングスグループ(HDG)が来春に石化事業を分社化する方針など、再編の機運が高まっている。しかし現状、石油業界、石化業界、それぞれ独自に生き抜こうとしているように映る。気候変動対応をはじめ、コンビナートを新たに生まれ変わらせるには、業界の垣根を越え、大胆な連携策を探るべきではないのか。
出光興産は先ごろ、グループ会社である西部石油の山口製油所の石油精製機能を2024年3月をめどに停止すると発表した。会見をした丹生谷晋副社長は「30年には当社グループだけで30万バーレルが余剰になる」と話した。出光グループの原油処理能力は日量94万5000バーレルあり、山口製油所(12万バーレル)を停止しても単純計算で18万バーレルの削減が必要になる。石油精製の能力削減について丹生谷副社長は「これで終わりではない」と強調した。
日本には現在、21の製油所があり、原油処理能力合計は約346万バーレルに達する。それでも、この20年間で能力は35%削減されてきたが、燃料油の販売量は38%減と、それを上回るスピードだ。今後、EV化、気候変動などを考えれば、内需縮小のスピードはこれまで以上に速まるのは確実。このため出光に限らず、石油元売り最大手のENEOSホールディングスが和歌山製油所を停止する予定など、石油業界では能力削減と同時に、気候変動に対応した新たなエネルギー会社へ衣替えすることが最重要課題となっている。
一方、川下では三菱ケミカルHDGが石化・炭素事業をカーブアウトする方針を打ち出している。ジョンマーク・ギルソン社長は「業界のリーダーとして再編をけん引する」と宣言し、石化業界の将来図を描こうとパートナーを募っている段階だ。石化誘導品でも、住友化学がカプロラクタム事業の撤退を表明し、三井化学は高純度テレフタル酸の国内生産停止を決めるなど、汎用石化の縮小が相次いでいる。
カーボンニュートラル(CN)を目指す石油業界、石化業界の改革は緒についたばかり。複雑に絡み合うコンビナートをCNに適合させるには難解な方程式を解くのと同様、時間を要する。しかし、CNや内需縮小はそれを待ってくれない。業界の垣根を越え、大胆な連携を探るべき時ではないだろうか。
The post 【社説】求められる石油・石化の大胆な連携 first appeared on 化学工業日報.