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参議院議員選挙は22日公示される。ただし、岸田政権の支持率は依然として高く野党が濫立した状態にあるため、選挙結果から同政権が揺らぐ事態は想定されていない。すると、参院選後の3年間は、国政は衆院選もない無風状態となるだろう。

良い意味で岸田政権にサプライズが無い限り、有権者にとって国政は非常に退屈なものとなる。そして、国民負担率や規制が緩やかに増加する既存の路線が継続されることになる見通しだ。

このようなことを述べると「今日から参議院議員選挙なのに水を差すような話をするな」というお叱りも受けそうであるが、上記のように今回の選挙を白けた感じで見ている人が多いことも事実だろう。したがって、本稿では、参院選以後に、筆者が考える論点について幾つか挙げていこうと思う。

いよいよ公示日(今月11日、編集部撮影)

①  次代の政治的スターは地方から

岸田政権は手堅い運営を継続し、野党は野党間の政争・再編に明け暮れるであろうから、国政レベルの政局は非常に退屈でつまらないものになるだろう。

そこで、注目を浴びる可能性が出てくるのが地方政治だ。なぜなら、安定政権化した岸田政権が実際に政策を実行するためには、その手足として連動する地方政治の現場を必要とするからだ。国政レベルでは様々な利害が錯綜しており物事を動かすことは至難だ。そのため、岸田政権は政治実験が許される地方の場でレガシーを残そうとするだろう。

たとえば、安倍・菅政権時代の「大阪」がそのような具体的な政治実験の場であった。同政権時代にIRを含めた各種の目玉政策は大阪を舞台として議論が進んだように、岸田政権も地方側の政策実践のパートナーとして新たな地方政治の場とプレイヤーを求めることになる。

来年は統一地方選挙であり、地方から様々な臥龍が世に出てくる時期でもある。それらの人々がこのような変化を見過ごすことはあり得ない。したがって、今後の政治的なスタープレイヤーは国政の場ではなく地方の場から生まれてくることになる。

岸田政権の安定期3年間は地方から新たな時代を担う人材が輩出されていく準備期間のようなものとして考えるべきであろう。

② 米中間選挙が与える世界へのインパクト

では、今度は地方のミクロな視点からマクロな国際政治に視座を移してみよう。

2022年11月にはアメリカで連邦議会中間選挙が予定されている。バイデン政権の支持率は下落しており、上院は接戦、下院では共和党優勢の状況となっている。つまり、バイデン政権はレイムダック化する可能性が高い。そして、来るべき2024年大統領選挙における共和党勝利が視界に入ってくる。

歓迎式典で談笑する岸田首相とバイデン大統領(写真:ロイター/アフロ)

2024年大統領選挙は岸田政権の安定政権3年間の後半で予定されている最大級の国際イベントだ。そこで、大きな国際情勢の変化が生じることを前提として、日本側は様々な外交安全保障体制を整えておくことが必要となる。

本年11月の連邦議会中間選挙敗北後、バイデン政権は現状以上に混乱することが想定されるため、首尾一貫したグローバルな外交安全保障上の視座に基づく政策が実行される可能性は低下する。

また、現在の民主党・共和党の二大政党間だけでなく、その所属政党内でも政治的分断が極まっている。そのため、仮に2024年大統領選挙がどのような結果になったとしても、バイデン政権が示した外交安全保障政策の枠組みやアプローチが維持されるかは疑問だ。

そのため、日本にとっては米国と連携しつつ日本独自のポジショニングをどのように構築していくのかは極めて重要な課題となる。岸田政権は想定される難局を乗り切るために、どのようなアプローチを実践していくかは注目に値する。

③ 選挙制度改革で「民主主義」をやり直せ

①と②で示した通り、参議院議員選挙がほぼ無意味である一方、地方政治や国際政治の変化は日本の国政選挙に間接的に影響を与えることになる。

しかし、そもそも国政選挙において有権者の大半が「支持政党なし」と回答しており、与党も野党も十分に国民からの支持を得ているとは言い難い姿は健全なものではない。

ただし、国民が国政選挙に何も希望を見出さないのは当然だ。

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与党議員は絶対に落選しない世襲議員らが当選回数を重ねて出世するだけの場となり、野党側は制度的に支給される政党助成金に胡坐をかいて政権を取る意思が全く見えないのだから。

このような状況に陥っている理由を現在の個々の政党や政治家の責任とすることは簡単だ。

しかし、我々は現状の政治の制度について抜本的な改革を断行すべき時がきていると思う。

それは選挙制度改革政党助成金廃止である。衆議院の小選挙区比例代表制、参議院比例の非拘束名簿方式及び都道府県選挙を根本的に見直すことで、有権者にまともな投票先の選択肢を取り戻すことが大事だ。

予備選挙すらない現状の選挙制度は、政党幹部の都合で候補者を決定し、有権者に候補者が提示された段階で選挙自体がほぼ終わっている。このシステムで支持政党や支持候補者を決めろという現状を民主主義と呼ぶにはあまりに欺瞞に過ぎる。

また、政党助成金は何も成果を上げていない小党の幹部に多額の税金の差配権を与えるだけの制度に堕している。この制度を廃止して政党や政治家が有権者の声に耳を傾けて政治献金を集める文化をもう一度作ることが必要だ。自らの活動原資を税金に依存する政党や政治家は役人と同じことしか言えないのだから、そこから有権者のニーズに応えた政治的選択肢が生まれるはずがない。

今の政治に漠然として不満があり、しかし選択肢は存在していない。この状況を打開するため、今回の参議院議員選挙で問われていることは、真の意味で民主主義をやり直すことだと言えるだろう。