<p>令和4年7月22日 日本経済団体連合会夏季フォーラム 岸田内閣総理大臣講演 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ</p><p>【総理の動き】 7月22日岸田総理は、長野県で行われた日本経済団体連合会夏季フォーラムに出席し、講演を行いました。 #新型コロナ #経済対策 #新しい資本主義 #成長戦略 #分配戦略 #外交・安全保障 ▼講演の全文はこちら</p><p>総理の演説や記者会見などを、ノーカットの動画やテキストでご覧になれます。</p><p>本日は、経団連夏季フォーラム2022にお招きいただき、こうして日本を代表する経済界の皆様方の前で講演させていただく機会を頂きましたこと、心から厚く御礼を申し上げます。 新型コロナ、ウクライナ情勢、また、国際的なエネルギー市場のひっ迫、世界的な物価高騰など。昨年10月4日に、私は、第100代の内閣総理大臣に就任させていただきましたが、それ以降、正に歴史を画するような数十年に一度起こるかどうかと言われるような様々な課題に直面してきました。その中で、この国の最終の意思決定責任者であるということを肝に銘じて、決断と実行に自分なりに最善を尽くす日々でありました。 しかし、更に遡って考えますときに、正に毎日毎日が決断の連続、綱渡り、一か八かの大勝負、こういったものの連続だったような気がしています。昨年の9月に自民党の総裁選挙、勝たせていただきまして第27代目の自民党総裁になったわけですが、それを遡ること1年前の総裁選挙にも挑戦させていただき、結果として敗北し、そして、「岸田はもう終わったんだ」といった厳しい声もいただきながら1年を過ごし、結果として、昨年、自民党総裁に就任させていただきました。 そして、先ほど申し上げたように、昨年の10月4日、内閣総理大臣に就任させていただきましたが、その総理大臣就任当日の記者会見で、私は、衆議院の解散を表明させていただいたということでありました。就任して10日目にして、衆議院を解散し、これも大変大きな政治家としての勝負所でありましたが、衆議院を解散した当時、多くのマスコミは「今回は自民党は惨敗するぞ」という厳しい予想を示していました。そういった中でしたので、就任して10日で解散総選挙に打って出た、あの時、選挙に負けていたらですね、おそらく私は、日本の政治史上最短の総理大臣として名を遺すことになったのではなかったかなと思っておりますが、本当にありがたいことに、経済界を始め、多くの皆様方のお力添えを頂き、こうしたマスコミの予想に反して、自民党単独で絶対安定多数の261議席を頂く、こうした選挙の結果を頂き、そして今日に至っている、こうしたことでありました。また、先日の参議院選挙においても、参議院選挙の最中にG7サミット、あるいはNATO(北大西洋条約機構)サミットへ出席し、日本の国益のためだということで会議に貢献するといったことも行ってきました。絶えず、攻めの姿勢というのを大事にしながら過ごしてきた10か月であったと思っています。 また、その間、総理大臣として多くの責任を担わなければならないということを実感してきましたが、この責務の最たるものは、日本の危機管理ということであります。即時にあらゆる事態に対応しなければいけない。地震、風水害、北朝鮮のミサイル発射など、あらゆる事態に即時に対応しなければいけない。こうしたことから、私も、しばらく主がなかった総理大臣公邸に居を構えさせていただき、率先垂範、即時対応を心掛けさせていただいているところであります。また、地方出張の場合も、常に自衛隊機により最短で帰京する準備をしながら地方に足を運ばせていただいている、こうしたことでありました。お陰様で、自衛隊のC130輸送機ですとか、様々なヘリコプターにも乗る機会があり、耳栓がないと、あるいは耳に何か被せ物をしていないと乗っていられないほどの劣悪な状況の中で飛行機に乗らせていただく、ヘリコプターに乗らせていただく、こうした経験も随分させてもらいました。 こうした慌ただしい10か月でありましたが、与党は、昨年の総選挙、また今回の参議院選挙を経て、国民から政治的な安定を与えていただきました。経済界を始め、国民の皆様の御支援に心から感謝を申し上げるところですが、政治的な安定を最大限に活かして、歴史的な難局に正面から取り組んでいくことが、総理大臣としての私の責務であり使命であると肝に銘じ、これからも努力を続けていきたい、こうした思いを新たにしております。 そしてその中で、先日、参院選挙直後の記者会見におきまして、「総理大臣として、何をしたいのか、何を残したいのか」、こういった質問をマスコミから受けました。その際に挙げた2つ。1つは、持続可能性の高い日本経済・日本社会を創っていくということ。もう1つは、ウクライナ侵略等で終わりを告げたポスト冷戦の次の時代の国際秩序作りに、日本ならではの歴史的な貢献をしていくこと。この経済と外交、2つの課題を、何をしたいかという質問について答えさせていただきましたが、今日は、この2つについてお話をさせていただきたいと思います。そして、その2つの大きな目標、課題について申し上げる前に、今、多くの皆さんが最も関心を持っておられる点について3つだけ触れさせていただいた上で2つのテーマについてお話をさせていただきたいと思います。 まず、1点目は、安倍元総理の今回の御逝去について、我々も大変大きな衝撃を受けたわけですが、御承知のとおり、9月27日に武道館で国葬儀、いわゆる国葬を執り行うことといたしました。 8年8か月という憲政史上最長期間、内閣総理大臣の重責を担われたこと、また、在任期間中に、内外に赫赫(かくかく)たる業績を残されたこと、国内のみならず、海外から極めて高い評価が寄せられていること、そして、その安倍元総理に対し、国の内外から、幅広く弔意が寄せられていること。これにつきましては、例えば、アメリカの上院においては、追悼の決議を全会一致で採択していただいた。また、インドにおきましても、政府として弔意を決定する、こうしたことを行ってくれていること。さらには、オーストラリアにおいては、オペラハウスを始めとする国内のランドマークを白と赤でライトアップする形で弔意を示すなど、世界各国が様々な弔意を示してくれている。こういったことについても、功績あるいは評価、また弔意の現れとして、強く印象深く思うところでございます。さらには、今回、民主主義の根幹たる選挙の最中に、卑劣な暴力により命が奪われたことも、重く受け止めなければなりません。 こうした状況を踏まえて、国葬儀を執り行うことといたしました。これについては、様々な意見があることも承知しておりますが、引き続き丁寧に説明し、できるだけ多くの国民の皆さんに納得していただき、国葬を行っていきたいと思っているところでございます。 そして2点目に申し上げたいことは、最近急増しておりますコロナについてです。 感染者数が増える中で、重症者の数、死亡者の数はまだ低水準でありますが、病床使用率は総じて上昇傾向にあり、多くの地域で3割を超える水準を示しています。 私たちの国は、これまで6回の感染の波を乗り越えてきました。全体として対応力は強化されています。政府としては、現時点で、新たな行動制限を考えてはおりませんが、医療体制を維持・強化し、メリハリの利いた感染対策を行いながら、社会経済活動の回復に向けた取組を段階的に進めていく方針です。 そして、医療体制については、病床、ベッドの数を7月の頭で約3万確保しておりましたが、昨年来、確保してきた最大のキャパシティとしては5万まで用意することができます。近いうちにこの5万をフル稼働させる体制を用意いたします。そして、検査拠点を拡大するとともに、特にワクチンについては、高齢者を守ることを重点に置いて、高齢者、また医療関係者、高齢者施設従事者へ4回目の接種を進めてまいります。また、3回目のワクチン接種については、若い方々を中心に引き続き接種を呼び掛けていかなければならないと思いますが、その環境整備として、大手町の自衛隊大規模接種会場等を延長するなど、様々な環境整備を進めていきたいと思っています。 その中で、経済界、またさらには医療介護の現場から寄せられている声として、「療養者あるいは自宅待機となる濃厚接触者が増える結果として、経済活動を維持することができるのか」、こうした課題が提示されています。その観点から、科学的知見に基づいて、濃厚接触者の待機期間を短縮することといたしました。今、濃厚接触者の待機期間、原則7日、2回の検査を組み合わせて5日目解除という方針で臨んでおりますが、これを原則5日、2回の検査を組み合わせることによって最短3日で解除できる体制を行っていきたいと思っております。各企業においても、感染防止等の徹底、あるいはBCP、事業継続計画の確認をお願いできればと思っております。 そして3点目に申し上げることは、ロシア侵略に端を発した冬のエネルギー供給の問題です。 しかし、この冬に向けて、再度需給ひっ迫が懸念されます。こうした事態に備え、先日、私から経済産業大臣に対し、できる限り多くの原発、この冬で言えば最大9基の稼働と、ピーク時に余裕を持って安定供給を実現できる水準を目指して、火力発電の供給能力を追加的に確保する、こうしたことを指示いたしました。 ロシアに大きくエネルギー供給を依存しているヨーロッパも同様の課題に直面しており、各国は、それぞれ、国のエネルギー事情を踏まえて対応しています。例えば、イギリス、ドイツ、さらにはフランス。こうした国々においては、脱炭素の観点から削減対象としていた石炭火力の一時的活用を試みている。また、ベルギーでは、閉鎖予定だった原発の運転延長を決定するなど原子力の活用を進める国も多いというのが現状です。 我が国においても、火力発電のフル活用はもちろんのこと、電力の安定供給と脱炭素化を考えますと、原子力の活用は極めて重要であると思っています。足下のみならず、中長期的に、次世代軽水炉、小型原子炉、核融合といった次世代技術の研究開発や原子力分野における人材育成にしっかり取り組んでいきたいと思っています。もちろん、同時に、再生可能エネルギーの最大限の導入も推進してまいります。新たな制度を作り、財政資金を投入することで、送電網整備や蓄電池への投資を進めてまいります。 政府の責任において、あらゆる方策を講じ、この冬のみならず、将来にわたって電力の安定供給が確保されるよう全力を尽くしてまいりたいと思います。 以上、国葬について、コロナについて、そしてエネルギーについて、3点、関心の高い課題として触れさせていただいた上で、先ほど申し上げましたように、経済・外交について、それぞれ申し上げさせていただきたいと思います。 まず、経済。持続可能性の高い日本経済、そして日本社会の創出ということについてですが、その鍵を握るのは、私が掲げております新しい資本主義であると思っており、この取組を本格化させていきたいと考えています。 新しい資本主義は、人への投資、科学技術・イノベーション、そして脱炭素、デジタルなど、社会課題を成長のエンジンへと転換し、力強い成長を実現することで、持続可能で包摂的な経済・社会を創り上げていくための挑戦であると考えています。 本年6月に、新しい資本主義のグランドデザインと実行計画を示させていただきました。是非、経団連の皆様方の御協力も頂きながら実現していきたいと思っています。 そして、この観点から、5点申し上げさせていただきたいと思います。 まず第1に、人への投資ということです。 持続可能な経済を作るためには、成長と分配の好循環を実現させていくことが重要です。「成長か、分配か」ではなく、「成長も分配も」と申し上げております。成長と分配の好循環を実現するための鍵は、持続的な賃上げです。力強い成長を実現させ、その果実を賃上げという形で分配し、消費を喚起していくことで、次の成長につなげていく。経済界の皆様方には、賃上げは次の成長への投資である、あるいは企業の社会的責任である、こうしたことを改めて御認識いただければと思っています。 今年の春闘においては、賃上げは2.07パーセントと一定の成果が上がっています。しかしながら、物価の高騰が続く中において、今後も今年以上の持続的な賃上げが求められる状況になっています。コロナ前の業績を回復した企業においては、3パーセント以上の賃上げを実現していただきたいと思っています。賃上げ税制、開示ルールの整備など、賃上げしやすい雰囲気を醸成するため、政府としても総合的な取組を進めてまいります。是非、もう一段の賃上げへの御協力をお願いしたいと思っています。 そして、成長と分配はセットだと申し上げています。経済成長があって初めて賃上げは可能である。これから申し上げるように、私たちは、様々な成長戦略も実行してまいります。政府も全力で、この成長にも取り組む。是非、経団連の皆様方にも引き続き御協力をお願いするところであります。 加えて、賃上げによる個人の所得引上げと併せ、所得を更に増やしていくためには、貯蓄から投資へのシフトも含め、次の成長につなげる努力を行っていきたいと思っております。 また、賃上げの大前提として、生産性の向上にも取り組んでまいります。従業員への人的投資は、企業の責任において、より充実いただきたいと思いますが、政府においては、3年で4,000億円の予算を活用し、民間の多くの皆様方から意見を伺い、政府の教育訓練投資を抜本的に拡充・強化していきたいと思います。 例えば、企業が実施するオンライン研修への支援、あるいは大学院などに通うための特別休暇を取得するための従業員の賃金支援など、様々な取組を進め、生産性の向上と持続的な賃上げの好循環を実現していきたいと思います。 経済界の皆様方におかれましても、是非、もう一段、人的投資の拡充・強化に踏み込んでいただきたいと思います。 2点目として、科学技術・イノベーションです。 AI(人工知能)、量子など、我が国の勝ち筋となる先端科学技術について、社会実装まで見据えた国家戦略を定め、将来の成長への期待を経済界とも共有し、官民が大胆な投資を行っていきたいと思います。 政府としましても、従来より踏み込んだリスクを分担いたしますので、産業界の皆様には、是非、リスクを取って、イノベーションに向けた大胆な投資を行っていただきたいと考えています。 加えて、探究的な学び、STEAM教育、文理分断からの脱却に、初等中等教育からリカレント教育まで一貫して取り組んでいきたいと思っています。経済界の皆様方の関与もお願いいたすところです。 そして第3に、スタートアップです。 新しい資本主義の下で、力強い成長、そして、様々な社会課題の解決の担い手として、スタートアップに大いに期待したいと思っています。 今、日本経済を牽引(けんいん)するような多くの大企業も、かつてはスタートアップとして、その歴史をスタートされました。皆様方の後に続き、日本の経済を牽引するような企業が次々と生まれる。こうした日本にしたいと思っています。 こうしたことから、年末までに、スタートアップ5年10倍増を視野に、5か年計画を策定してまいります。</p>